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池井戸潤「陸王」あらすじ・ネタバレ

   

簡単なあらすじ

1) 埼玉県行田市にある足袋製造業者・こはぜ屋は、創業100年の歴史を誇っていた。だが、百貨店に卸す足袋の数は年々減少傾向にあり、社長の宮沢紘一は、危機感を覚えていた。宮沢はスポーツ用品店売り場を訪れ、そこで、5本指のスニーカーに出会い、地下足袋との共通点を見出した宮沢は、「地下足袋の技術を活かしたスニーカーを製造・販売できないか」と考え始める。

2) 新規事業には多額の資金がかかり、なおかつ足袋製造業者であるこはぜ屋が、ランニングシューズの業界に参入して、成功できるとも限らなかった。宮沢は迷いながらも、「怪我や故障をしにくい、ミッドフット着地を実現するシューズ」というコンセプトで陸王の試作品を作り上げる。

3) ソールには、新素材である繭を使った「シルクレイ」を使おうと考え、その特許を持つ飯山晴之を口説き落とす。飯山は、倒産経験があり、「こはぜ屋」で熟練の社員たちが生き生きと働く様子を見たうえで、「自分も陸王のプロジェクトに参加させて欲しい」と言う。そして、選手たちからの人望の厚いシューフィッター・村野尊彦も仲間に加わり、陸王は改良により着実に進化していく。

4) マラソンランナー・茂木裕人は、怪我に苦しみながらも復活を目指していた。そんな中、村野に紹介され、こはぜ屋のシューズ「陸王」に出会う。大手シューズメーカー・アトランティスの担当者に揺さぶりをかけられ、茂木は、迷いながらも陸王を履き、京浜国際マラソン大会で見事トップでゴールするのだった。

5) 「陸王」は、アトランティスによる妨害工作、資金繰りの問題やシルクレイ製造のマシントラブルを乗り越え、大手アパレルメーカー「フェリックス」の融資を受け、陸王の製造・安定供給に漕ぎつけることができたのだった。

起:「陸王」計画始動

埼玉県行田市にある足袋製造業者・こはぜ屋は、創業100年の歴史を誇っていた。だが、足袋のニーズは年々減っており、卸していたデパートなどへの販売数も減少していった。会社の運転資金にも困り、熟練工である社員たちを抱えていくことも、今後は困難になっていくのが目に見えていた。

社長の宮沢紘一は、危機感を覚えていた。そんな中、娘にスニーカーを購入することを依頼されていた宮沢は、池袋の百貨店のスポーツ用品店売り場を訪れる。そこで、5本指のスニーカーに出会い、地下足袋との共通点を見出した宮沢は、「地下足袋の技術を活かしたスニーカーを製造・販売できないか」と考え始める。

埼玉中央銀行の担当者・坂本太郎と相談を行い、宮沢は次第にスニーカー作りを本格的に考え始める。まずは、坂本の紹介で、スポーツ用品のショップを営む有村融に会う。そこで、ランナーの故障を防ぐ、「ミッドフット着地」ができるようなランニングシューズを製作してはどうか、と提案される。

経理を担当する富島玄三は、参考にと先代が作ろうとしていたマラソン足袋「陸王」を見せる。そこから、宮沢は製作しようとしているスニーカーを「陸王」と名づけ、本格的に計画を始動していく。「怪我や故障をしにくい、ミッドフット着地を実現するシューズ」というコンセプトで陸王を作ることにし、社員たちからプロジェクトチームを選抜する。

承:シルクールとの出会い

陸王の試作品を作り、そこで「ソールで勝負すべきだ」と社員の安田利充は提案する。ゴムではない、特殊な布などでソール部分を作成することを宮沢は検討しはじめる。だが、その新素材はなかなか見つからず、現行商品の改良を重ね、小中学校などに卸すことはできないか、と宮沢は動きだした。

ソールの素材を探していたところ、埼玉中央銀行の坂本から「前橋に、倒産したインテリア製造販売会社シルクールの特許技術が使えるかもしれません」と伝えられる。生ゴムと比較すると段違いに軽い「繭」を使ったその素材を、宮沢は「陸王」に使えないかと考え始める。

だが、シルクールの社長・飯山晴之に連絡をとると、飯山は自己破産後に金融業者からの報復を恐れ、隠れるように暮らしていた。妻のパート代で細々と暮らす生活から這い上がろうと、飯山は宮沢に「年間、5千万円を特許料として払え」と言う。

法外な条件であるため、宮沢は契約をあきらめようとするが、社員の西井冨久子は「一度、ウチの会社を見てもらうのはどうですか?」と提案する。飯山は当初、その申し出を断るが、宮沢は繰り返し連絡して、飯山はその提案を受け入れる。

飯山は、こはぜ屋を訪れ、足袋作りや新規事業にどれほどの熱意を傾けているか気づかされる。そこで飯山は、「特許を使わせてやるには、条件がある。俺を、お宅のプロジェクトに加えて欲しい」と言うのだった。実は、シルクを用いた新素材・シルクレイを製造する機械を、飯山は養蚕農家である義弟の家に保管していたのだった。それにより、こはぜ屋は設備投資の費用を捻出する必要がなく、リース料だけで製造を行うことができるようになったのだった。

シルクレイを製作する上で、宮沢は息子の大地を飯山の部下としてつける。大地は、就職活動が難航しており、こはぜ屋で働いていたのだった。だが、腰掛程度に考えていた大地の仕事ぶりは杜撰であった。当初は、大地に関わらせることを反対していた宮沢だったが、安田の進言もあり、大地を参加させることにしたのだった。

転:シューフィッター村野

飯山は、試行錯誤を繰り返すが、なかなか狙った硬度にはできなかった。そんな中、宮沢は有村に紹介され、大手シューズメーカー・アトランティスのシューフィッターである村野尊彦と出会う。村野は、上司である営業部長・小原賢治と対立し、アトランティスを退職していたのだった。村野にシルクレイを見せたところ、村野はその新素材に興味を持つ。そして、村野もアドバイザーとして「陸王」の計画に乗ることにしたのだった。

飯山は、設定温度や攪拌のタイミングなどを微調整し、「煮繭(しゃけん)の温度」がキーとなるという結論に至る。結果、狙った硬度を出すことに成功し、ついにシルクレイでのソールを作ることが可能となる。大地もシルクレイでのソール作りに没頭し、いつになく真剣に仕事へと情熱を注ぐことができたのだった。

村野は、宮沢にダイワ食品の陸上部に所属する茂木裕人を紹介する。茂木は、怪我でしばらく復帰することができなかった。そのため、その復帰戦に向けて「陸王」を履いてもらおうと村野は考えていたのだった。

村野は、茂木の足型データを宮沢に渡し、茂木モデルの「陸王」を作っていたのだった。試作品を見て、茂木は陸王の軽さに驚く。茂木は、部内のトライアルに陸王を履いて参加するが、途中でふくらはぎに痛みを覚え、途中退場せざるを得なかった。そのこともあり、サポートを行っていたアトランティスは、茂木と契約を解除する。

富島は、新規事業に否定的な意見を口にする。「いつまで、この事業にカネをつぎ込む気なんですか?」と言われる。だが、それには先代社長の苦い失敗があったからだった。先代もまた、マラソン足袋に夢を託したのだが、結果、本業がおろそかになってしまい、大損害をこうむったのだった。

富島の指摘をもとに、宮沢は「生ゴムではなく、シルクレイをソールにした地下足袋」を作ることを提案する。そうして完成した「足軽大将」はプロショップで売れ、宮沢は増産を決定する。「足軽大将」は、ヒット商品となったのだった。

結:アトランティスとの戦い

茂木は、陸王について、ソールではなくアッパー素材の問題を指摘する。アッパーを提供してもらえる企業を探し始める。一方、足軽大将の増産が行われる中、飯山は金融会社からの報復を受け、全身打撲・骨折により入院を余儀なくされる。そこで、大地が飯山の仕事を引き継ぎ、シルクレイの製造を行うこととなった。ところが、機械にトラブルが起き、飯山は病院を抜け出してまでシルクレイの製造を手伝うのだった。

アッパーの素材を提供してくれる会社を探していた宮沢は、埼玉中央銀行の大橋に、繊維メーカーであるタチバナラッセルを紹介してもらう。ベンチャー企業で無名な会社であったが、特許を申請した経網技術を持っていた。そのアッパー素材を利用し、陸王は改良モデルとなって、茂木のもとへと届けられたのだった。

茂木は、陸王を履いて記録会に望む。そこで、1万メートルで27分という堂々たる記録を出し、結果を残した。それは、陸王の公式戦デビューでもあった。だが、その後、アトランティスの村野の後任である佐山は、こはぜ屋の経営状態が思わしくないことを茂木に吹き込む。「シューズの供給がなくなるかもしれない」と佐山は言い、茂木に揺さぶりをかける。

茂木は、陸王ではなく、アトランティスのRIIを履くようになり、宮沢は驚く。そんな中、ニューイヤー駅伝の区間走者として茂木が選出される。さらに、ライバルであるアジア工業の毛塚直之も選出され、同じ区間にぶつけてこられたのだった。

宮沢は、社員たちの激励メッセージが書かれた色紙を用意し、茂木に手渡す。そして宮沢は、「君が他社のシューズを選んだとしても、うちの社員たちが君を応援し続けることは変わらない」と言うのだった。

駅伝の当日、バスから降り立った茂木はRIIを履いて登場してきた。アトランティスの佐山は、勝ち誇った表情をするのだったが、走る直前になり、RIIから陸王に履き替えるのだった。佐山が茂木に抗議をする中、村野は「選手の邪魔をするな」と制する。

こはぜ屋の社員一同が見守る中、茂木は毛塚とデッドヒートを繰り広げる。向かい風を利用して、体力を温存しながら、ラストスパートで一気に抜く。茂木は見事、区間賞を受賞するのだった。それに伴い、陸王が話題となった。

宮沢たちが、陸王への注文が殺到するという夢を膨らませる中、アトランティスの佐山は、それを阻止しようと動き始める。佐山は、アッパー素材を提供していたタチバナラッセルに近づき、専属契約を結び、こはぜ屋への素材提供をやめるよう働きかける。タチバナラッセルは、アトランティスを選び、宮沢は再びアッパー素材を探さざるを得なかった。

さらには、シルクレイを製造していた機械から出火し、再稼動は困難であった。新たに機械を作り直すには、1億円の設備投資が必要だった。問題が重なり、さらには資金集めが困難となった今、宮沢は陸王の生産を諦めようともする。

そんな中、ベンチャーキャピタルの会社に転職した坂本は、「会社を売りませんか?」と提案する。アパレルメーカー「フェリックス」がシルクレイという素材に目をつけ、こはぜ屋を買収しようとしていたのだった。フェリックスの子会社となり、資金を得てシルクレイの製品を製造してはどうか、というのが坂本の提案だった。

フェリックスの創業者・御園丈治と会い、その経営者の手腕・人柄について信用できると考える。だが、会社の売却についてはどうすべきか、迷っていた。そんな中、大地がタテヤマ織物にアッパー素材の供給をしてもらえそうであると知らせる。

宮沢は、会社売却の方針で考え始める。だが、そこで坂本に「御園社長は、飯山顧問に先に話を持ちかけた」と明かす。だが、飯山は「シルクレイの特許を売れば、こはぜ屋に迷惑がかかる」と断ったのだった。

宮沢は、飯山に礼を言うとともに、会社売却について打ち明ける。だが、そこで飯山は「そんな簡単に、100年ののれんを売るのか。その程度の経営者なのか」と売却に反対する。さらに、「俺は、シルクレイの製造許可をこはぜ屋だけに与えた。御園の狙いは、その権利だ。だったら、他にやりようがあるだろうが」と、アドバイスを行う。

宮沢は、御園に「設備投資のため、融資して欲しい」と提案する。御園は当初、その考えを拒否し、交渉決裂する。だが、御園は後日、「3億円の融資、融資の期間は5年、3年間の発注保障」を行うと提案する。つまりは、5年以内に3億円を完済する必要があり、できない場合は子会社として買収すると御園は条件をつけたのだった。

宮沢は、社員を集めて説得にあたる。陸王を製造・販売することに夢を託した社員たちは、宮沢の説得に応じるのだった。

品川で開催される京浜国際マラソン大会に、茂木は出場した。そこには、ライバルの毛塚も参加していた。茂木は、アトランティスのRIIではなく、こはぜ屋の陸王を履く。それを見たアトランティスの佐山は、再び茂木に声を荒げる。だが、茂木は「今のこはぜ屋さんは、2年前の俺と同じなんです。ピンチで困り果て、必死で這い上がろうとしている」と言い、今、陸王を見限ったら、自分を捨てていった人々と同じになる、と思ったのだと言う。

先頭集団がオーバーペースで走る中、茂木は冷静に自分のレースプランでの走りを続ける。先頭集団がペースを乱す中、茂木は毛塚を押さえ、1位でゴールする。宮沢や村野たちが喜びを爆発させ、陸王は一躍有名なシューズとなったのだった。

大地は、メトロ電業の内定を勝ち取った。だが、大地は「こはぜ屋で続けて働きたい」と宮沢に申し出る。そこで宮沢は、「いや、お前はメトロ電業に行け」と言う。「メトロ電業のような優良企業で働き、ウチでは得られない経験と知識を蓄積してくれ。世界を見て来い」と、宮沢は息子を送り出すのだった。

アトランティスは、選手からのサポート打ち切りの申し出に焦っていた。佐山や小原部長らは、陸上競技界で村野、そしてフェリックスが支援するこはぜ屋の存在感が増していくことに焦りを隠すことができなかった。シルクレイという新素材、さらには村野がフィッティングするシューズは、トップアスリートたちが注目するまでに至った。

埼玉中央銀行の家長たちは、巨大な機械がフロアを埋め尽くすこはぜ屋の新工場に目を丸くする。そして、埼玉中央銀行ではなく、東京中央銀行本店がメインバンクであると宮沢は明かす。融資を渋った結果、宮沢が顧客ではなくなってしまったことを、家長はくやしがるのだった。

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