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朝井リョウ「何者」あらすじ・ネタバレ

      2017/08/19

簡単なあらすじ

1) 大学生の二宮拓人は、ルームメイトの神谷光太郎、光太郎の元カノで拓人の想い人である田名部瑞月、瑞月の友人である小早川理香、理香と同棲する宮本隆良らとともにエントリーシートを書いたり、飲み会を開いたりして就職活動に挑んでいた。

2) 内定に向けて順調な光太郎と瑞月とは対照的に、拓人や理香は苦戦していた。そんな中、4月を過ぎた頃には、光太郎と瑞月に内定が出る。拓人や理香は、彼らを祝福するのだが、内心は複雑な心境であった。

3) 拓人は、何度挑戦しても、内定がもらえない絶望感を味わう中、理香にスマホの検索画面を見られてしまう。拓人は、友人・光太郎の内定先が、2ちゃんねる上でどのような評判か見ようとしていた。一方、理香も、瑞月の内定先について、ブラック企業かどうかパソコンで調べていた。

4) お互いに「一番見られたくないもの」を見られた中、理香は拓人に「拓人くんはさ、自分のこと、観察者だと思ってるんだよ。そうしてればいつか、今の自分じゃない何かになれるって思ってんでしょ?」と指摘する。そして理香は、拓人がツイッターの裏アカウントを持ち、本当は周囲の人間をあざ笑うかのようなツイートをしていることを知っている、と告げるのだった。

5) 「自分は、自分以外の何者になんかなれない。カッコ悪くても、その姿であがくしかない」という理香の言葉により、拓人は観察者であることをやめる。企業の採用試験一次面接に臨み、そこで受け答えが上手くできず、「落ちたな」と思うのだが、カッコ悪い自分を認め、その自分であがき続けるしかないと思えた今、「落ちても、多分、大丈夫だ」と思えるのだった。

起:就職活動

大学生の二宮拓人は、ルームメイトの学生・神谷光太郎のバンドが演奏するライブを見に行く。そこには、光太郎の元カノ・田名部瑞月も来ることをツイッターで知っており、彼女に好意を寄せる拓人は、そのライブを観に行く。

瑞月はライブに就職活動のために購入したスーツを着てやってきた。光太郎も引退ライブ後には金髪を黒髪にし、就職活動を意識しているようだった。

拓人は、ライブのときに飲み物をこぼしてしまい、瑞月にハンカチを借りていた。そのハンカチを洗濯して返そうと思っていたところ、瑞月が突然やってきて驚く。彼女の友人・小早川理香は、拓人たちの住む部屋の上の階に住んでおり、瑞月は理香を訪ねてきていたのだった。

理香は、就職活動を開始する学生が増えていく12月前から既に、大学のキャリアセンターに通ったり、エントリーシート対策を行っていた。就職活動にイヤでも向かい合わねばならない彼らは、自然と集まり、理香の恋人で同棲相手である宮本隆良も含め、飲み会を開くようになる。

承:烏丸ギンジと隆良

拓人は、劇団プラネットの脚本家を担当していた。就職活動を機に、拓人は劇団から離れた。だが、かつての劇団仲間だった烏丸ギンジは、大学を辞めて自らの劇団を立ち上げ、月に一度、公演を行っていた。

ブログやツイッターなどで、1人で気勢を上げるギンジのことを拓人は、「痛い」と思っていたが、意識せざるを得なかった。ネット掲示板に書かれる。ギンジの舞台に対する「質の低いものを量産」「いつまでたっても学生劇団っぽい」などといった評価を見て、拓人は溜飲を下げていた。

理香の恋人・隆良についても、「ギンジと似ている感じがする」と思い、苦手意識を感じるようになる。隆良は、「就職活動はしない」と言い、就職についての話になると、社会問題などにすり替えてしまう。エントリーシートに取り組む拓人たちのことを、斜に構えて見ているようだった。

光太郎は、順調に就職活動を進めていく。5人の中では、最初に面接まで辿り着いたのも光太郎だった。彼は、さして読書家でもないにも関わらず、出版業界の会社を希望しており、拓人は不思議に思っていた。一方、瑞月は、「就職活動はしない」と言っていた隆良が広告業界の会社を受けていたことを拓人に話す。

瑞月は、母親と暮らしていた。母親は父親の浮気を疑い、「近所の人が私を笑っている」と思うようになった。今まで暮らした家では暮らせないと考え、瑞月の家に同居していた。瑞月は、自立することを意識するようになり、「ちゃんと就職しなくちゃダメなんだ」と思うようになったという。

理香は、学生の内から名刺を作り、OBたちと交換しているのだと明かす。そこで、「メールアドレスが分かれば、それでアカウント検索することができる」ということを明かす。そこで、拓人は自分が作っていた裏アカウントのこともあり、心中
穏やかではいられなかった。

転:裏アカウント

3月半ば、光太郎の成績証明書を見つけ、拓人と理香は、光太郎が最終面接を終えていることに気づく。順調な光太郎と比較し、拓人たちは就職試験に落ち続けていた。

理香の「メールアドレスが分かれば、それでアカウント検索することができる」という言葉で、拓人は隆良の裏アカウントを見つける。「備忘録」というアカウント名で、就職活動についての進捗などが書かれていた。

拓人は、劇団時代から親しいサワ先輩にそのことを言い、「隆良とギンジは似てる。何者かになりたがってたり、その過程をアピールしてる様子が似てるんです」と言う。だが、サワ先輩は「全然違うよ、あのふたり。いくら使ってる言葉が同じでも、いくらお前が気に食わないって思うところが重なってたとしても、ふたりは全く別の人間なんだ」と言う。

さらに、「ほんの少しの言葉の向こうにいる人間そのものを、想像してあげろよ。俺、お前はもっと想像力があるやつだと思ってた」と言われてしまう。そこから、サワ先輩に言われた言葉を打ち消すかのように、拓人はギンジ、ギンジの舞台に対する酷評、隆良の裏アカウントを読み続ける。

5人の内、瑞月が最初に「大日通信」という企業の内定を勝ち取る。その晩、祝賀会が開かれる。そこで、隆良がギンジとコラボする企画がなくなったという話を聞いた瑞月は隆良に対し、問題から目をそらして自分を守っているかのような態度に批判を行う。

瑞月は、「会社勤めしている人々より、自分の方が感覚が鋭くて、感受性豊かで、こんな現代では生きづらいなんて思ってるんでしょ?そんな言い方一つで自分を守ったって、そんなあなたを、あなたと同じように見てる人なんてもういない」などと言う。さらに、何事も過程ばかりで結果を出すことができないことについて、「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかない」と指摘するのだった。

瑞月は出て行き、そんな彼女を拓人は追いかけようとする。去り際、拓人は「頭の中にあるうちは、いつだって、何だって傑作なんだよな。お前は、ずっと、その中から出られないんだよ」と言う。それは、ギンジにぶつけた言葉と同じだった。

追いかけた先で、瑞月は、「光太郎に告白して振られた」と明かす。以前、別れたときにも光太郎から「好きな人が忘れられない」と言われ、振られていたのだった。光太郎が想い続けている女性というのは、高校時代の同級生だった。現在、翻訳家をしているという彼女にいつか会えると信じ、光太郎は出版会社を志望していたのだった。

結:何者

光太郎は、第一志望には落ちたものの、中堅出版会社「総文書院」に内定が決まる。その帰り道、拓人は受験票をプリントアウトしていないことを思い出し、理香にプリンターを借りに行く。

理香は、携帯電話をどこに置いたか分からなくなっていた。そのため、「電話を鳴らして欲しい」と言うのだが、拓人は理香の電話番号を知らなかった。そこで、拓人は理香にパスコードを教えて携帯電話を貸す。

一方、拓人は理香のパソコンを借り、就活生用のマイページにログインする。そこで、面接を受ける会社の名前を入力しようとすると、そこに「大日通信 エリア職 ブラック」と予測変換で現れた。その会社は、瑞月の内定が決まった会社であった。

パソコン画面を見ていた拓人に、理香は「ねぇ、拓人君」と声をかけ、携帯電話の画面を見せる。そこには、拓人が検索をしようとしてそのままスリープボタンを押してしまった画面が表示されており、検索キーワードは「総文書院 2ちゃん 評判」と表示されていた。総文書院は、光太郎の内定が決まった会社だった。

「びっくりしたんだけど。友達でしょ?光太郎くん」と言う理香に、「理香さんだって、瑞月さんの友達だろ」と言う。そして理香は、拓人に「私、拓人くんに内定出ない理由、わかるよ」と言う。

理香は、「拓人くんはさ、自分のこと、観察者だと思ってるんだよ。そうしてればいつか、今の自分じゃない何かになれるって思ってんでしょ?」と指摘する。そして、「そんなんだから就活二年目になっても内定ゼロなんだよ」と言う。拓人は昨年、就活をするも内定が一つももらえなかったのだった。

さらに理香は、拓人がギンジのことを酷評している掲示板を見ている履歴も探り出す。「拓人くんは、みんな、自分より不幸であって欲しいって思ってる」と言う理香に対し、拓人は、「理香さんだって同じだろ。瑞月さんの内定先が、ブラック企業かどうか調べてる。俺と同じだ」と言う。

だが、理香はその点は否定する。「だってあんた、ほんとは私のこと笑ってんでしょ?そこが違う。私は拓人くんのことを笑ってはいない。かわいそうだとは思ってるけどね」と言うのだった。

さらに理香は、拓人のツイッター裏アカウントを読んでいることを明かす。アカウント名「何者」で、拓人は光太郎や理香、隆良たちのことを「観察・分析」ツイートを行っていたのだった。

「あんた、ずっと私のこと笑ってたんでしょ?・・・初めて会ったときから思ってた。こいつは自分の人間観察サイコーって思ってるタイプだって。絶対裏アカ持ってるタイプだって」と言う。

理香はさらに、「あんたは、誰かを観察して分析することで、自分じゃない何者かになったつもりになってるんだよ。そんなの何の意味もないのに。・・・いい加減、気づこうよい。私たちは、何者かになんてなれない。自分は自分にしかなれない。痛くてカッコ悪い今の自分を、理想の自分に近づけることしかできない。みんなそれをわかってるから、痛くてカッコ悪くたってがんばるんだよ」と、いつか何者かになれると信じる拓人の儚い夢を打ち砕く。そして、それこそが就職活動に失敗し続ける理由であり、格好悪い自分と向き合い、あがき続ける必要があるのだと言うのだった。

そして、「不恰好な姿であがき続けるより他はない」ということを思い知るのが怖いため、ギンジの定期公演も観にいけないんだと指摘する。

「観察者に徹し、ギンジを笑い、理香を笑う。そうすることでしかまっすぐ立っていられない」と理香は拓人のことを言うが、自分についても「・・・でも、私だって同じようなものなのかもね。私だって、ツイッターで自分の努力を実況中継していないと、立っていられない。もう、立っていられないんだよね」と言う。

拓人は、その一件の後、再び一次面接に臨む。そこで、「とても久しぶりに観にいく舞台がありまして。とても中の良かった友人が関わっているものでして」とギンジの舞台を観にいくことになっていると話す。

質問に対し、しどろもどろとなり、まとまりのない答えを行う。そんな拓人は「落ちたな」と思うのだが、カッコ悪い自分を認め、その自分であがき続けるしかないと思えた自分は「だけど、落ちても多分大丈夫だ」と思えるのだった。

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