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殊能将之「ハサミ男」あらすじ・ネタバレ

      2017/07/29

簡単なあらすじ

1) 女子高生がビニール紐で絞殺された上、頚部にハサミが突き立てられて発見されるという事件が2件発生する。マスコミは、犯人を「ハサミ男」と呼び、有名な事件となるが、犯人はなかなか逮捕されなかった。そんな中、「ハサミ男」は第三のターゲットとして樽宮由紀子という女子高生を選ぶ。

2) ハサミ男は、由紀子を待ち伏せし、ハサミを持参して殺害しようとしていた。ところが、由紀子は公園で何者かによって既に殺害されていた。しかも、ハサミ男の手口を真似た模倣犯によってだった。ハサミ男は由紀子の遺体を呆然と見ていたところ、他の発見者に声をかけられてしまう。仕方なくハサミ男は、「人が死んでいる。警察に連絡して!」と言い、発見者を装うしかなかった。

3) 由紀子の遺体発見者は、日高光一、安永知夏の2名である。「ハサミ男」自身の一人称視点で語られる箇所は、あたかも男性の語り口調のようであり、読者は日高光一こそがハサミ男であると叙述トリックによりミスリードされる。ところが、安永知夏こそがハサミ男なのだと終盤で明かされる。

4) さらに、ハサミ男の模倣犯は、探偵役である警視庁科学捜査研究所の犯罪心理分析官・堀之内靖治であった。堀之内は由紀子と関係を持っていたが、冷たい態度をとられるようになり、殺意を抱くようになったのだった。

5) 知夏は、ハサミ男の正体が彼女であると気づいた日高を殺害する。そこに、堀之内が現れる。知夏は、堀之内にハサミ男として逮捕されそうになるが、堀之内こそが由紀子を殺害したと気づいた磯部龍彦刑事は、堀之内を逮捕しようとする。知夏は、堀之内の拳銃に飛びつき、自らの腹部を堀之内の指ごと引き金を引いて、自殺を図ろうとする。磯部に「彼女も殺そうとしたのか」と言われ、逃げ道を失った堀之内は、拳銃自殺するのだった。知夏は生き残り、警察は日高こそがハサミ男と考え、事件は幕切れとなる。

ここがポイント

「ハサミ男」の正体が、実は安永知夏であるという叙述トリックが上手く効いている。さらには、探偵役である警視庁科学捜査研究所の犯罪心理分析官・堀之内靖治が模倣犯であるという、ミステリーファンが喜ぶ要素が多く詰め込まれた作品。

堀之内が死ぬ一方で、自殺を繰り返す知夏が逮捕されることなく生き残り、新たな被害者を物色するという結末。

「ハサミ男」が遺体発見者になるまで

女子高生がビニール紐で絞殺された上、頚部にハサミが突き立てられて発見されるという事件が連続して起きる。第一の被害者は、埼玉県に住む小西美菜という高校1年生であり、第二の被害者は、東京都江戸川区に住む松原雅世という高校2年生であった。

「被害者を殺害後、頚部にハサミを突き立てる」という特徴から、この事件の犯人は「ハサミ男」と呼ばれていた。被害者には乱暴された跡はなく、衣服に乱れもなかった。

ハサミ男は、氷室川出版でアルバイトとして働いていた。そこには添削式通信教育の成績結果が置かれており、ハサミ男はその中から「成績優秀な女生徒」を選び、被害者情報を調べ、ターゲットとしていたのだった。

第三の被害者として、ハサミ男は樽宮由紀子という私立葉桜学園高等学校に通う高校2年生を選ぶ。家族と住んでいるマンションを調べ、由紀子が帰宅するのを待って顔を覚える。彼女は美しい少女だった。

それから何度となく由紀子を尾行し、行動パターンを調べる。その中で、由紀子は40歳前後の男性と待ち合わせしているのを見かける。ハサミ男は、彼女が父親と待ち合わせしていたのではないか、と考える。

ハサミ男は、バイト先でハサミを手に入れると、被害者に突き立てるため、棒やすりで研ぎ始める。11月11日を向かえ、ついにハサミ男は由紀子を殺害しようと考える。待ち伏せしていたのだが、午後8時になっても由紀子は現れず、ハサミ男はあきらめて帰ろうとした。

帰り道、公園でハサミ男は由紀子の遺体を発見する。首にはビニール紐が食い込み、首にはハサミが突き立てられていた。あたかも「ハサミ男」の犯行のような状態で由紀子は殺害されていたのだった。

ハサミ男は呆然と彼女を見ていたが、すぐに立ち去るべきであると考える。だがそこに、公園の入り口から人が近づいてきて、「どうしたんですか・・・」と声をかけられてしまう。そこでハサミ男は、「人が死んでいる。警察を呼んでください」と叫ぶのだった。

ハサミ男は、自身の模倣犯によって殺害された被害者の発見者になってしまったのだった。警察に万が一持ち物検査をされたことを考え、ハサミ男は持っていたハサミを取り出し、茂みの中に放り投げるのだった。

ハサミ男の正体

由紀子の遺体発見者は、日高光一、安永知夏の2名であった。
読者は、あたかも「ハサミ男=日高光一」と錯覚させられる。「ハサミ男」とマスコミが命名し、そう呼ばれていることや、女子高生をつけねらって殺害していることなどからも、日高光一こそがハサミ男であると、叙述トリックによってミスリードさせられるのだった。

だが、ハサミ男の正体は、安永知夏である。
ハサミ男は自らのことを「でぶ」と考えており、日高はでっぷりと太っている。そのことからも、日高がハサミ男であるはずと読者は考えさせられるのだった。「痩せ型ではなく、健康的な肉付き」であることから、「でぶ」と思っていたのだった。

さらに、知夏の普段の喋り方も男口調であり、ハサミ男の正体が女性であるとは考えにくくさせている。彼女には、年齢60歳ほどの別人格「医師」がおり、実際にはそちらの人格の方が主体であるという。そのこともあり、知夏の口調は男性らしいのであった。

模倣犯の正体

ハサミ男の手口を真似て、由紀子を殺害したのは、警視庁科学捜査研究所の犯罪心理分析官・堀之内靖治である。本来は探偵役である堀之内が、模倣犯だったのだ。

由紀子は、母親の連れ子であり、その母親は再婚した。義理の父や弟と暮らすようになり、表面上
は仲良く暮らしていたが、由紀子は決して心を開こうとしなかった。そんな由紀子は、次々に男性と関係を持っていた。相手の年齢は関係なく、翻弄することを楽しんでいるかのようだった。

そんな彼女は、堀之内とも関係を持っていた。堀之内は、由紀子と真剣に交際していた。そして由紀子が「妊娠した」と言ってきたため、「妻と別れ、職を辞してでも彼女と結婚しようと思った」のだという。

ところが、由紀子はそんな気はなく、妊娠しているというのもウソだった。由紀子は「いくらお金を引き出せるのか知りたかっただけ」と言い、堀之内のもとから去る。そのことがきっかけで、堀之内は由紀子に殺意を抱くようになったのだった。

堀之内は、ハサミ男の手口を真似て、由紀子殺害をハサミ男の犯行と見せ掛けようとした。そして、自ら由紀子の事件を担当し、犯罪心理分析官の立場を利用し、刑事たちをミスリードしようとしていたのだった。

結末

日高は、知夏が公園で何かを草むらに捨てたのを目撃していた。後に、知夏が記者に「二つ目のハサミが草むらに捨てられていた」とリークし(警察が隠していた、もう一つのハサミの存在を公にすることで、ハサミ男を特定する決め手にさせない目的と、その情報と引き換えに、記者から由紀子の自宅住所を聞き出し、なぜ知夏が住所を知っているのか理由付けするため)、記事になったため、「知夏が捨てたのはハサミ」であると日高は気づき、知夏こそが「ハサミ男」であると確信したのだった。

ハサミ男である知夏に興味を持った日高は、彼女のことをもっと知りたいと思い、警察に通報せずに知夏を自宅に連れて行く。そこで知夏は、日高を殺害するのだった。

堀之内は、日高こそがハサミ男であると考えていた。もう一つのハサミの存在から、「偶然、本物のハサミ男が由紀子の遺体発見者」であると気づかされた(発見者である自分の所持品の中から先端を尖らせたハサミが見つかると困るため、ハサミ男がハサミを捨てたと考えた)のだった。こうしたことから、堀之内は日高がハサミ男だと確信し、尾行していたのだった。

一方、「医師」は、マスコミですら知りえないハサミ男の犯行の特徴を模倣犯はよく知っており、警察関係者に犯人がいると推理していた。そして、模倣犯を炙り出すため、知夏に事件の調査をさせ、「おとり」に使ったのだった。

知夏が日高を殺害後、堀之内は日高の家にやってくる。日高が知夏を連れ込んだのを目撃しており、知夏に危害を加えている(もしくは殺害後の)現場を取り押さえ、ハサミ男を逮捕しようとしていたのだった。

ところが、知夏が出てきたため、堀之内は知夏こそがハサミ男だと気づく。知夏は、由紀子を殺害したと独白する堀之内に、「そんなことで人を殺すなんて、あなたは頭がおかしいんじゃないか」と言う。その言葉に激昂した堀之内は、拳銃で脅しつつ、知夏を殴りつける。

堀之内が知夏を暴行する中、その現場に堀之内の部下・磯部龍彦 刑事がやってくる。磯部は、先輩刑事たちである下川宗夫、村木晴彦らとともに、模倣犯が堀之内であると疑っていたのだった。

堀之内は、「プロファイリングは占いではない」と言っており、無闇に断定することなどは避けていた。にも関わらず、由紀子の事件については調書を読むだけで「この事件が、ハサミ男の犯行による可能性は75%」などと断定していたのだった。

さらに、現場を訪れたり、証人に会ったりせず、机上で犯人を見つけ出そうとしていることにも、上井田警部たちの疑惑を抱かせたのだった。堀之内は由紀子と交際していたこともあり、由紀子の周辺を嗅ぎまわれば、自分に疑いを持たれる可能性があったのだった。また、由紀子が「弓道部」であることも、調書には書いてなかったにも関わらず知っており、「由紀子と知り合いだったのでは」と感づかれたのだった。

他の刑事たちが水面下で堀之内のことを調べている中で、堀之内の目撃情報を得る。堀之内が怪しいという事情を知らない磯辺刑事は勘違いし、堀之内に報告しに行ってしまったのだった。困った下川刑事は、「ハンバーガー屋で日高が目撃された」との情報をでっちあげた。

その結果、堀之内は自分と由紀子が会っているところを日高に見られたかもしれない、と堀之内は考え、日高を殺害しに行ったのだった。ところが、堀之内が拳銃を持ち出して行方をくらませたことから、他の刑事たちは堀之内が日高を殺害しに行ったと考え、磯部は日高の家へ向かったのだった。

磯部刑事は、堀之内に拳銃を向ける。磯部は、堀之内が日高を殺害し、知夏も殺害しようとしていたと思っていたのだった。

は、全てを堀之内が明かす前に、堀之内の拳銃に向かって飛びつき、自ら腹部に銃口を当てて堀之内の指もろとも引き金を引く。自殺を図ったのだが、死に切れなかった。磯部は、知夏が拳銃を奪おうとして堀之内が知夏を撃ったと思っているようだった。

堀之内は逃げ道を失ったと考え、「僕が由紀子を殺したんだ。そして、口封じのため、日高やこの女も殺そうとしたんだ」と言い、銃口を咥えて撃ち、自殺する。

知夏は磯辺に救命措置をとられ、救急搬送されて命を取り留める。知夏に好意を持つ磯辺は、知夏の病室を訪れ、どのようにして堀之内に疑いを持つようになったのかを明かすのだった。

知夏は、病院で同室の老婆を見舞いにやってきた少女に声をかけられる。老婆はクッキーを食べられる状態ではなかったにも関わらず、見舞い客が持ってきてしまったのだという。そのため、少女は知夏にクッキーを渡そうとしていたのだった。

かわいらしく、「とても頭のよさそうな」少女に向かって、知夏は「きみ、名前はなんていうの?」訊ねるのだった。

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