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貫井徳郎「愚行録」(映画原作)あらすじ・ネタバレ

      2017/02/04

簡単なあらすじ

1) 会社員・田向浩樹と妻・友季恵、そして幼い長男・長女の一家四人が惨殺される事件が起こる。その事件の1年後、ルポライターと称する男が、浩樹、友季恵の関係者に取材を行う。

2) 取材インタビューの中で、裕福で非の打ち所のないように思える夫婦である浩樹、そして友季恵たちにも、人間性を疑うような過去があることが判明する。そして、ルポライターの男は取材を行った人々に、「犯人は誰だと思いますか?」と質問する。友季恵の大学時代の友人・宮村は、同じく同級生の田中光子という女性が犯人ではないか、と取材中に話す。

3) 宮村は通り魔と思しき犯人に殺害されている。だが、その犯人は、ルポライターと称して取材を行った男だった。彼は、光子の兄である。そして、一家四人を惨殺したのは、彼の妹である光子だった。光子を疑っている関係者がいないか、彼はルポライターとして偽って接触・取材を行っていたのだった。

4) 光子は、普通に結婚をし、幸せな家庭を築くことを望んでいた。だが、その夢は叶わず、偶然見かけた友季恵が幸せそうに子供といたため、「キレ」てしまったのだった。その晩、光子は田向宅に侵入し、一家四人を惨殺したのだった。

5) 光子は、愛する兄との間に子供を作ったが、両親に虐待されて育った彼女は、子供の愛し方を知らなかった。結果、光子は子供を衰弱死させてしまう。保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された光子は、面会に来た兄に「人生って、どうしてこんなにうまくいかないんだろうね。人間は馬鹿だから、男も女もみんな馬鹿だから、愚かなことばっかりして生きていくものなのかな。あたしも愚かだったってこと?精一杯生きてきたけど、それも全部愚かなことなのかな。ねえお兄ちゃん、どう思う?答えてよ。ねえ、お兄ちゃん」と問いかける。

ここがポイント

田向一家四人殺人事件の犯人は、被害者・田向友季恵の大学時代の同級生である、田中光子だった。光子は幼い頃、父親に性的虐待を受けており、幸せな家庭を築きたいと考えていた。

だが、それが叶わない中、友季恵が幸せそうに子供たちといるところを見て、嫉妬と憎悪に突き動かされ、光子は一家を惨殺する。接点が少ないため、光子は逮捕されることはなかった。だが、兄は妹を疑う者がいないか、と心配になって関係者にルポライターと称してインタビューを行う、というストーリー。

光子のことを疑う、同じく大学時代の友人・宮村が、”通り魔”に殺害される。もちろん、殺害したのは光子の兄。

光子は、幸せになりたいと思いつつ叶わないため、嫉妬して一家を惨殺。兄は、光子のためと、宮村を殺害する。光子は兄との子供を産むも、その子供は亡くなってしまい、保護責任者遺棄致死で逮捕されてしまう。また、取材の中で、友季恵や夫の見方を変えれば悪行となる行為も浮き彫りとなる…「愚行」を繰り返す人々の様子が描かれている。

田向一家惨殺事件

氷川台駅近くの一戸建てで、大手不動産会社に勤務する会社員・田向浩樹の一家四人が惨殺される事件が起こる。犯人は、開いていた風呂場の窓から侵入しており、犯人は持っていた包丁で浩樹を刺殺した。その後、近くで眠っていた長男は灰皿で撲殺される。

犯人は、切れなくなった包丁ではなく、キッチンにあった包丁を二本持ち、二階にいた妻・友季恵(旧姓・夏原)を刺殺した。友季恵は、長女を守ろうとして背部をめった刺しにされ、その後、犯人は母親の下から長女を引きずり出し、刺殺している。

犯人は、血液を風呂場で流した後、家にあった服を着て立ち去っている。浩樹および友季恵の衣服が一着ずつなくなっており、犯人が男性か女性かも不明であった。

インタビュー

ルポライターを名乗る男性が、取材のために浩樹および友季恵をよく知る人物たちにインタビューを行う。ルポライターは、浩樹および友季恵たちの人となり、そして犯人の目星、動機として考えられることなどを取材していく。

インタビューを行ったのは、

・近隣住民

・長男の同級生の保護者(久保塚):友季恵にやっかみのような感情を抱くようなママ友もいた。犯人は強盗ではないかと推測。

・浩樹の同期である会社員:浩樹が、好きだった女性を同僚・柏原に奪われたため、柏原が左遷させられるように仕向けたというエピソードを話す。マンション販売を行っていた浩樹に、客が逆恨みした可能性を指摘。

・友季恵の大学時代の友人 宮村:慶応大学在学中、友季恵に彼氏である尾形を奪われて取っ組み合いのケンカに発展した。友季恵と同じくらい美しい田中という同級生がいたことを話す。友季恵が、田中を「家柄の良い慶応生となら、誰とでも寝る女」というレッテルを貼った張本人であると指摘する。そのことを恨んだ田中が一家惨殺事件の犯人ではないか、と指摘する。

・浩樹と大学時代に交際した稲村恵美:元恋人でストーカーと化した谷口という男を、「谷口は痴漢常習犯」という中傷ビラで撃退した浩樹に惚れて交際した。ところが、二股をかけられたことや、就職活動のコネ作りに利用されたことで決別している。犯人は谷口ではないか、と推測。

・友季恵と1ヶ月だけ”交際”した尾形:宮村と交際していたが、その後、友季恵に乗り換えて交際した。ところが、宮村と別れた1ヶ月後にあっさりと捨てられていたエピソードを話す。尾形にインタビューを行っている時点で、宮村は通り魔と思しき犯人に殺害されている。

兄と妹の会話

3歳の女児が衰弱死し、母親である田中光子が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕される。光子に面会をする兄との会話(小説上は、光子の独白)が行われる。この会話の内容が、インタビューとインタビューの間に挟まる形でストーリーは展開する。

光子は、自らの生い立ちについて語る。父母はできちゃった結婚をして、長男が生まれた。その後、母親は浮気を繰り返すようになり、裕福な男性の愛人となった。その後、光子が生まれるも、母親は子供に愛情を持つこともなく、特に光子を虐待していた。

父親は仕事を辞め、母親が愛人から貢がれた金で暮らすようになる。光子は、小学三年生になると、父親に性的虐待を受けるようになっていた。兄は、そんな光子を助けようとしたのだが、父親に腕力では敵わなかった。

兄は次第に体を鍛え、ついには父親を力で屈服させるようになる。兄に怯え、家でも居場所を失った父親は、家を出ることとなった。そこで、資産家の祖父が兄妹を引き取り、暮らすようになる。

光子は、慶応大学に進学し、家柄の良い同級生をつかまえて結婚をしようと試みたが上手くいかなかった。そこで、友季恵と出会ってた。インタビューで友季恵の大学時代の同級生・宮村が語っていた「田中」とは、光子のことだった。

光子は、幸せな家庭を築くことができず、鬱屈とした思いを抱えていた。そんな中、偶然、友季恵が子供を連れて幸せそうにしているのを見かけ、一気に「キレ」てしまった。友季恵の後をつけて住所を知った光子はその晩、家に侵入して一家を惨殺したのだった。

光子は、兄との間に子供を作った。だが、子供をどう愛したらいいのか分からない光子は、衰弱死させてしまうのだった。

ルポライターの正体

ルポライターの正体は、光子の兄である。兄は、光子を犯人であると疑っている関係者がいないか、それを知るため、ルポライターと称して、話を聞いて回っていたのだった。

インタビューの中で、光子のことを犯人と疑っていると判明した宮村を、通り魔の犯行に見せかけて殺害したのだった。

光子の独白「愚行」

光子は、面会に来た兄に「人生って、どうしてこんなにうまくいかないんだろうね。人間は馬鹿だから、男も女もみんな馬鹿だから、愚かなことばっかりして生きていくものなのかな。あたしも愚かだったってこと?精一杯生きてきたけど、それも全部愚かなことなのかな。ねえお兄ちゃん、どう思う?答えてよ。ねえ、お兄ちゃん」と問いかける。

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