簡単なあらすじ
1) 「バイブス」の編集長・和田靖樹(松重豊)は、漫画家・牛露田獏(康すおん)に、過去のヒット作『タイムマシンにお願い』の電子書籍化を交渉していたが、牛露田は頑なに拒する。
2) 和田は、母親が入院したことから、郷里の岐阜に戻る。そこで、同級生が営む書店を訪れ、そこに牛露田が妻(赤江珠緒)とともにやってきていたことを知る。牛露田のサイン会がいつの間にか始まってしまい、妻は微笑んでその様子を見ていたのだという。
3) 和田は、牛露田の家を訪れる。そこで、娘・アユが父に向かって「アンタがお母さんを不幸にしたんだ」と言うのを見て、「それは違う。お母さんは、2人で一緒の夢を追いかけていたんだ」と言う。その言葉で、アユは母が父の漫画のキャラクターをよく描いていたことを思い出す。
4) 牛露田は、電子書籍化に同意する。そんな彼を、アユは出迎える。そこで彼女は、「お父さんの『タイムマシンにお願い』を読み終わったよ。…面白かった」と言い、2人の間にわだかまりは消えつつあった。
起:漫画家・牛露田獏のかつての栄光
「バイブス」の編集長・和田靖樹(松重豊)は、漫画家・牛露田獏(康すおん)に、過去のヒット作『タイムマシンにお願い』の電子書籍化を交渉していたが、牛露田は頑なに拒する。さらに、和田に会おうとせず、居留守を使っていた。だが、和田は牛露田の家を何度となく訪れる。
和田は編集長として、役員たちに売り上げのことばかり追求されることに嫌気が差していた。雑誌が黙っていても売れる時代とは異なり、厳しい売り上げ競争に勝つことを求められることに、和田は「どうしてこんな時代に編集長になってしまったのか…」と愚痴る。
中田伯(永山絢斗)のネームに対し、和田は「読ませるが、魅力に欠ける」と指摘する。黒沢心(黒木華)は、五百旗頭敬(オダギリジョー)のアドバイスにより、中田は他人に共感できる能力に欠けており、登場人物が画一的で似たようなキャラしかないことが欠点であると気づく。
心は、中田にアドバイスを行う。中田は、大人しく聞いていたが、どことなく上の空だった。中田は、沼田渡(ムロツヨシ)が三蔵山龍(小日向文世)のアシスタントを辞めてから、スランプに陥っており、ネームが描けなくなってしまっていた。
承:一冊の出会い
和田は、母親が尿管結石で入院となり、岐阜に戻っていた。そこで、高校時代の友人が経営している書店を訪れる。ネットショップやコンビニでの雑誌販売などが主流となってしまった現在、個人経営の書店は厳しい状況が続いていた。
和田は、そこで牛露田がその店を訪れていたことを知り、驚く。牛露田は、忙しい連載の合間を縫って、妻とともに新婚旅行に訪れていたのだった。そこで、牛露田は大人気であり、サインを一度行うと、瞬く間に噂が広がり、ついにはサイン会になってしまった。その様子を見て、妻は嬉しそうに微笑んでいたのだという。
一方、心は牛露田の娘・アユが同級生にイジメられている現場に遭遇する。心はアユを助けるが、アユは「泣いても仕方がないから、泣かない」と言い、全てを諦めてしまっているかのようだった。そこで心は、書店員・河舞子(濱田マリ)のオススメする、山縣留羽の漫画をアユに渡す。その本は、舞子が「14歳の時に共感し、救われた」という本であり、アユにも伝わるかもしれないと考えていたのだった。
転:母の夢
アユは、その本を読み、山縣留羽のファンとなり、自らも彼女の本を買うようになった。そんなアユは自宅に戻り、そこで和田が居留守を使う牛露田に対し「大人だったら、子供の前で格好つけなければいけませんでしょう」と語りかけているのを見かける。
アユは、自宅に入り、父に対して母親の写真を見せる。「見ろよ。これがアンタが不幸にした女だよ」と言うアユに対し、和田は「いや、そうじゃない。お母さんは不幸ではなかった」と言う。
和田は、高校時代の同級生が営む書店で、サインを行う牛露田を妻が嬉しそうに見ていたことを明かす。2人は、同じ夢に向かって歩んでいたのだ、と和田は言う。その言葉で、アユは母親がいつも『タイムマシンにお願い』のキャラ・踏まれたネコを描いていたことを思い出す。
結:父娘
牛露田は、『タイムマシンにお願い』の電子書籍化を許諾する。アルコール依存症で震える手で、なんとかサインした牛露田を、娘が待っていた。彼女は、『タイムマシンにお願い』を読み、「面白かったよ」と感想を言うのだった。
和田は一つの仕事を終え、バイブス編集部で、檄を飛ばしていた。そんな心に、電話がかかってくる。締め切りが近いにも関わらず、高畑一寸(滝藤賢一)の恋人・梨音(最上もが)がいなくなったのだという。梨音は、締め切りに追われているのも知りながら、わざと家出をして、迎えにくるのを待っていた。そんな梨音を見つけ、心は連れ帰ろうとする。
一方、その様子を伝えていた週刊エンペラーの副編集長は、高畑に電話をかけ、引き抜こうとしていた。
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