「チョコレートの箱のセリフは聞いたことがある。ベンチに座って語る男の姿も、何となく覚えている。でも、本編はちゃんと観たことがない」
『フォレスト・ガンプ/一期一会』は、そんな人がとても多い作品かもしれません。アメリカでの公開は1994年(日本では翌年)。もう30年以上前の映画です。それでも今観る価値があると、私は思っています。ネタバレなしで、その理由を5つ紹介します。
どんな映画?(ネタバレなし)
主人公は、アラバマ州の小さな町で育った青年、フォレスト・ガンプ。周囲からは「少し頭の回転が遅い」と見られていますが、まっすぐで嘘をつかない人柄の持ち主です。
彼はひょんなことから、アメリカの大きな出来事の数々に立ち会うことになります。そして、幼なじみの女性ジェニーへの想いだけは、何があっても変わりません。監督はロバート・ゼメキス。主演はトム・ハンクス。上映時間は約2時間22分です。
理由1:時代ごとの名曲が、物語を彩る
本作の音楽は、フォレストが生きた時代ごとの名曲で彩られています。曲が流れた瞬間に、画面の中の年代が切り替わる。映画を観ながら、その時代の空気を耳でも体験できる作りです。
洋楽に詳しくなくても大丈夫です。「あっ、この曲、どこかで聞いたことがある」という発見も、本作を今さら観る楽しみのひとつです。洋楽を耳にするのは好きな方にもおすすめできます。
理由2:映像の「仕掛け」に、今でも驚く
本作には、実在の歴代大統領など、歴史上の人物とフォレストが同じ画面に映る場面があります。公開当時の技術で、過去の記録映像に主人公を自然に溶け込ませたこの手法は、大きな話題になりました。作品は視覚効果賞も受賞しています。
CGが当たり前になった今だからこそ、「どうやって撮ったのだろう」と考えながら観ると、別の面白さが生まれます。
理由3:『ベンジャミン・バトン』を観た人にこそ観てほしい
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008年)を観たことがある人は、本作を観ると「どこかで見たような構成だ」と感じるかもしれません。
それもそのはず、両作の脚本を書いたのは同じエリック・ロスです。公開当時から、二つの作品の類似はたびたび比較されてきました。共通点は、たとえば次の通りです。
• 同じ脚本家(エリック・ロス)が書いている
• 主人公の人生をたどりながら、20世紀の時代の流れが見えてくる
• 語りの場面から始まり、語りを軸に物語が進んでいく
一人の男の人生そのものに重心があるのがバトン、彼が通り抜けた時代に重心があるのがガンプ、と評されることもあります。同じ脚本家が描いた二つの人生を見比べると、違いもまた面白いはずです。
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理由4:アメリカ現代史を、物語の中で味わえる
作中には、ベトナム戦争、公民権運動、ウォーターゲート事件など、20世紀後半のアメリカの出来事が次々と登場します。「なんとなく聞いたことはあるけど…」というような遠く感じる出来事も、一人の人物の人生に重なると、ぐっと身近になります。
なお、この映画の描き方や込められたメッセージについては、公開当時から評価が分かれてきました。観終えたあとに、他の人の感想や批評を読み比べてみるのも面白いと思います。
理由5:笑って、そして静かに泣ける
序盤は、思わず笑ってしまう場面が続きます。フォレストの素直な言動が、周囲を巻き込んでいくからです。
しかし、物語が進むにつれて、笑いの裏にあった切なさが少しずつ見えてきます。大げさに泣かせにくるのではなく、気づいたら胸がいっぱいになっているタイプの映画です。
感情を激しく揺さぶられるのは、今夜はちょっとしんどい。でも、映画で心は動かしたい。そんな日にもちょうどいい一本です。つらい出来事も描かれますが、フォレストの穏やかな語り口が全体を包んでいるので、感情を振り回されすぎることがありません。
観終わったあとに、自分の人生や、これまでに出会った人たちのことを、ふと思い返したくなります。
こんな人におすすめ
• 「人生はチョコレートの箱」のセリフだけ知っていて、本編は観ていない人
• トム・ハンクスといえば『プライベート・ライアン』や『キャスト・アウェイ』のイメージが強く、この役を観たことがない人
• アメリカ現代史に興味はあるが、教科書だと頭に入りにくい人
時代ごとの名曲、驚きの映像表現、時代の空気、今も続く影響力、そして笑いと涙。『フォレスト・ガンプ/一期一会』には、30年以上経った今観ても色あせない魅力があります。
