ある男(武田真治)が、プールのような水の中から浮かび上がる。彼は、気付くと病院のベッドにいた。腕には包帯が巻かれ、目の前の医師は「お目覚めですね、大友さん。ここは病院ですよ」と声をかける。
医師は、「あなたは末期癌で入院しています。ですが、完治しますよ」と説明し、大友は驚く。さらにそこには、マネージャーの関口学という人物が現れ、「20年前、治療不能な末期癌に侵され、治療法が確立するであろう未来に期待し、人工冬眠で眠りについた」と説明する。
さらには、大友は「世界的なミュージシャンである大友和彦」と説明されるのだが、記憶はなく覚えていなかった。また、右腕に巻かれた包帯を見て気になるのだが、医師は「これは軽い凍傷です。触らない方がいい」と言う。
何も思い出せないことを大友は気にするが、医師は「人工冬眠の影響です。1週間もすれば記憶が戻る」と言うのだった。
その晩、大友が目を覚ますと、自分そっくりの男が枕元に立っていて驚く。その男は、「CL1-7」とだけつぶやいて立ち去る。そのことを医師に言うのだが、「夢でしょう」と取り合おうとしない。大友は医師やマネージャーに不信感をつのらせていく。
医師は「現在も末期癌の治療法はまだ見つかっていません。ですが、あなたに100%適合する臓器移植をすることで、癌に侵された臓器を取り替えることはできます。そのドナーがみつかったため、あなたを起こしました」と言う。
夜、大友は病室を抜け出して、病室とは異なる研究室のような部屋に忍び込む。そこで大友は、自分そっくりの人間が培養液の中で眠っているのを見つける。その人間は、右腕に「CL1-5」「CL1-6」と印字されていた。だが、「CL1-7」の水槽はガラスが破られ、人が入っていなかった。
そこに医師が現れ、「クローン人間を作り出し、その臓器を使って癌を治すんです」と説明する。そして、病室に現れたもう一人の自分は、「逃げ出したクローン、CL1-7です」と明かす。
「クローンの中には、培養ボックス内で自我を形成してしまうクローンもいるんです…CL1-7のように。でも、もう捕獲してありますから、心配ありません」と医師は言う。「さぁ、大友さん。手術を始めましょう。悪くなった器官を新品と取り替えるんです…それが完全治療法です」と言うのだが、大友は右腕の包帯をとり、そこに「CL1-7」と印字されているのを見てしまう。そして、自分自身がクローン人間、CL1-7だと気づいてしまう。
CL1-7は暴れ、抵抗しようとするが取り押さえられる。CL1-7の前へ車椅子に乗った大友本人が現れ、一瞥すると手術室へと運ばれていくのだった。
原作:渡辺浩弐「また会いましたね」(『2000年のゲーム・キッズ』所収)
脚本:鈴木勝秀
演出:小椋久雄