関東薬科大次世代研究所に勤務する吉野朔子(竹内結子)は、実験中に頭部を背後から殴打され、意識を失わされてしまう。気がつくと、「まるで棺おけのような」狭い箱の中に閉じ込められていた。
パニックになる中、iPhoneが1台置かれているのを発見し、110番通報を行う。現在の場所が分からず、逆探知を依頼するが、警察官は今かけている電話の場所を特定できないという。「SIMカードを抜いて、情報を調べてください」と言う警察官の指示に従い、調べた上でキャリア情報を吉野は伝える。
しばらくすると、「箱」が動いているのを感じる。再びパニックになった吉野は、警察に電話を行う。「携帯の半径50 km圏内を捜索中です」という警察官は、携帯の充電を心配し、一度切るように言う。
連絡を待っていた吉野は、パイプオルガンの音が大音量で聞こえてきた。そのことを警察に伝えると、GPS情報が示す付近に教会があり、すぐに捜査員が向かう。「助けが来る」と安堵する吉野だったが、教会にはパイプオルガンがなかったという。
奇妙に思う吉野は、警察官に「一緒に聞いたじゃないですか、あの音!」と言うが、録音していた吉野の通話内容には、パイプオルガンの音は聞こえなかった。「手がかりがありません。また何か分かったら教えてください」という警察官の言葉に、「捜索を打ち切るってことですか?!」と吉野は、捜索を続けて欲しいと言うが、警察官は電話を切る。
吉野は、iPhoneのロック番号を総当りで解除する。恋人のダイちゃんに電話をかけるが、留守番電話サービスにつながり、電話に出なかった。「もう携帯の電池がないの。私、ここで死んじゃうのかな…色々ありがとう。最期にダイちゃんの声を聴きたかったなぁ」と言うと、携帯の電池は終わってしまった。
諦めようとする中、「箱」が開く。そこには、同僚たちがおり、「これは君が望んだ、閉鎖空間で脳内物質がどうなるかという実験だよ」と言う。だが、それは夢であり、相変わらず箱の中に吉野はいた。
吉野は、実は脳幹出血を起こして意識不明状態になっていた。人工呼吸器に繋がれ、いわゆる閉じ込め症候群(ロックドイン症候群)という、意識ははっきりとしているのだが、何も周囲に伝えることができず、まばたき以外の運動が障害された状態になっていたのだった。
箱が動いていたのは、ストレッチャーに乗って移動していた状態、パイプオルガンの音は、頭部MRI撮影時の音だったのだ。ベッドで横たわる吉野の近くには、恋人や親が悲壮な表情で立ち尽くしていた。
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