望月幸平(伊藤英明)は、自分と妻・真理亜(木村佳乃)の結婚式のVTRを見ていた。その部屋の梁にはロープが吊るされており、幸平は首を掛ける。そして、意を決して足台を蹴飛ばした。
その65時間前、幸平はいつもと変わらぬ朝を迎えていた。真理亜の用意した服を着て、彼女の用意した朝食を食べる。何事にも几帳面で世話焼きな彼女に、幸平は息苦しさを感じていた。
真理亜の両親の遺産を元手にカフェをオープンしたということもあり、幸平は彼女に頭が上がらない。愛情は冷め切っていたが、仲の良い夫婦を装う必要があった。そんな幸平は、ビジネスパートナーで愛人の北里杏南(相武紗季)と不倫関係にあった。
幸平が帰ろうとクルマに乗り込むと、杏南が乗っていた。妻とのキスで蕁麻疹が出るなど、「完全に受け付けないんだ」と、幸平は杏南に愚痴をこぼす。その後、幸平は杏南と情事に及ぶ。行為の後、杏南は幸平が真理亜に店への融資を断られたことを知り、「アドキシン」という毒物を渡す。
病理解剖されても、微量であるため検出されないということを杏南は説明する。さらに彼女は、「これを使って、奥さんを殺したら?店を守るためよ」と言う。幸平は、手渡された注射器で購入した赤ワインに注入し、真理亜に飲ませようと考える。
家に戻ると、鍵は開いていた。リビングに真理亜の姿はなく、床にまだ新しい血痕がそこには残されていた。幸平は、慌てて家の中を探すが、真理亜はどこにもいない。代わりに、「2億円を用意しろ。警察に言えば殺す N31」という脅迫状のようなものが置かれていた。
幸平は警察に通報する。刑事の相馬誠一郎(佐藤隆太)と、矢吹豊(浅香航大)らが水道工事の業者を装ってやってくる。血痕があるにも関わらず、家の中に争った形跡はなく、相馬刑事は不審に思う。
相馬刑事は「2億円は用意できますか?」と質問し、幸平は妻名義の通帳を手渡す。流し台にはココアを飲んだ後と思われたカップが2つ置かれていた。相馬刑事は、幸平のアリバイを質問する。閉店後はどうしていたかと訊かれ、幸平は「経理業務と焙煎作業をしていました」とウソをつく。
相馬刑事は、矢吹刑事に「アリバイを聞いて、カマをかけたんだ。普通、アリバイをきかれたら腹を立てるだろ?それが、あの旦那はどうだ?まるで他人事だ」と、幸平に疑いを持ったことを告げる。
幸平は、つかの間の自由を謳歌し、「警察にもきっちり通報した。このまま、身代金を払わずにアイツが死んでくれたら…」と密かに願っていた。翌日、酒を飲んでなかなか起きてこない幸平のことを、相馬刑事はさらに疑いの目で見ていた。
血痕は、真理亜のものと判明したと相馬刑事は伝える。ちょうどその時、向かいに住む噂好きの鯨井有希(キムラ緑子)・和樹(高橋一生)夫婦がやってきていた。鯨井家のポストに、誤って郵便物が届けられてきたのだと、届けにやってきたのだった。
「N31」と差出人名が書かれていたため、犯人からのメッセージだと思い、慌てて幸平は相馬刑事に手渡す。開けると、そこには「警察に通報しましたね。お望み通り、奥さんは死にましたよ」と書かれており、真理亜の爪が入っていた。
マスコミに事件をリークする情報が流され、警察は公開捜査に切り替える。そんなラジオのニュースを、バーのマスター・小暮久雄(佐々木蔵之介)は聞いていた。
「本当に真理亜は死んだのか?…それなら、なんてラッキーなんだ。俺は自分の手を汚さずに済んだ」と、幸平は一人ほくそ笑む。幸平は出勤しようとするが、自宅前には報道陣が詰めかけていた。
相馬刑事は、幸平が出かけた後、彼のクルマを調べるように指示する。矢吹刑事は、相馬刑事に「望月幸平はカネに困っていたようです。家を建て、店の開店資金のために妻・真理亜に借金を依頼しています。さらに店の経営状態は悪く、資金繰りに困っていた。妻の遺産は5億から2億に目減りしています」と報告する。さらに、幸平のクルマのトランクに、血痕が見つかる。
相馬刑事は幸平を警察署に呼び出す。そこで、幸平のジョギングシューズがなくなっていることを指摘。さらに、そのジョギングシューズの靴跡が血痕近くで発見されたことを告げる。暗に犯人と疑っていると仄めかし、幸平は当惑する。幸平は、「誰かが俺を犯人に仕立てようとしている…」と考え始める。
幸平は、杏南にすぐテレビ番組を観るように言われる。鯨井有希は、「奥さん、旦那さんが浮気しているかもしれない、と悩んでいるようでした」とニュース番組で証言する。疑いの目を向けられ、追い詰められた幸平は、元・義兄で興信所を経営する横路正道(宮迫博之)に相談する。
「遺体が発見されていないが、死んだとマスコミにリークしたのは、奥さんの死を知らしめたいから。そうすることで得するのは、遺産がもらえる君くらいだ」と横路は言う。だが、幸平は不倫を認めることで「信じてください」と協力を求める。
横路は、不審な男・緒方彰吾(眞島秀和)が見張っていると指摘する。緒方は、事件当夜にも自宅周囲にいた。幸平は、慌てて緒方のもとへ向かい、「ちょっと話を聞きたいんだけど」と問い詰める。
緒方は画家と名乗り、美大時代の同級生であると明かす。さらに、「私は、あなたの浮気について相談を受けていただけです。浮気相手は、杏南さんだと気づいていましたよ」と言う。
さらに、「あなたのことを、心配していました。あなたに近づいたのは、『遺産目当てじゃないといいけど』と言っていましたよ」と言う。そして、「あんたのことを尾行してたのは、真理亜さんのことを純粋に心配して、自分で勝手にやったことだ。…あんたが殺したんだ」と捨て台詞を残して立ち去る。
姪の楓に「真理亜ちゃんから預かったものがあるの」と言われ、幸平は実家に立ち寄る。そこで、姉から「浮気ってどういうこと?」と責められる。真理亜はなにかと幸平の実家のことを気遣い、義母や楓の世話を焼いてくれていたのだと知らされる。
楓は、「もし真理亜ちゃんが先に死んじゃったら、これを幸平くんに渡して欲しいって言われたの」と鍵を渡される。自宅に戻り、何を開けるための鍵なのか探しはじめる。すると、鍵のかかった引き出しがあり、鍵を差し込むと開いた。そこには、「望月家のレシピ」と書かれたレシピ集が置かれており、幸平のことをいかに思いながら料理を作っていたのかが痛いほど伝わってきた。
幸せだった結婚生活を思い出し、幸平は泣き出してしまう。そんな中、相馬刑事が訪れてくる。「重要参考人として、署までご同行いただく」と言う。「何かの間違いだ!」と幸平は叫ぶが、相馬刑事は「あなたのクルマのトランクから、真理亜さんの血痕が発見されました」と言う。
自宅前で抵抗する幸平は、速達で届けられた封筒を受け取る。差出人名は、「N31」だった。中には、1枚のDVDが入れられていた。再生すると、真理亜が監禁されている様子が映し出されていた。苦しそうに呻く彼女の横に映しだされたテレビには、幸平がカメラの前に立ったニュース番組が映しだされていた。そして、「2億円をバラで用意しろ。ワンパク広場へ幸平1人で運び込め」と表示された。
「真理亜はまだ生きている!」と幸平は言い、マスコミの前に飛び出す。「犯人から、バラで2億円を集めろと指定がありました。2億円を連番で用意しますから、皆さんの紙幣と交換してください!」と訴える。
その様子を見た視聴者が、翌日、次々にあらわれてバラで2億円が用意できた。その現金を持ち、幸平は指定された場所へと向かう。だが、相馬刑事はピンマイクやGPS付き腕時計を幸平に付け、「ずっと見張ってますから」と言う。
刑事たちが見守る中、指定時刻に向かうと、ゴミ箱の中からアラームが鳴る。幸平が調べると、その時計の裏に、別の指定場所へと向かうように指示が書かれていた。「30分後に稲城市営球場のスタンドへとむかえ」とあり、幸平は急ぐ。
幸平が着くと、再びアラームが鳴る。今度はベンチの裏に時計が仕掛けられており、再び指示が書かれていた。「30分後、多摩川湖キャンプ場に持ってこい」と書かれており、幸平は向かう。
必死になって指定場所へと向かうと、上空からドローンが飛んできた。そのドローンには「ネットに金を入れろ」と書かれていた。相馬刑事の指示で、幸平は発信機とともに金を入れる。
ドローンは飛び去り、相馬刑事はドローンを追跡する。ドローンは着地し、そこから動きはない。犯人が現れるのを捜査員たちは待ち構えていた。そこに、散歩に現れた老人が近づき、相馬刑事は確保を命じる。袋の中身を確認すると、その中には現金ではなく新聞紙の束が入っていた。
相馬刑事は、「望月さん、中身をすり替えましたね?」と質問し、幸平は「はい」と認める。「なぜ、教えてくれなかったんですか?」と問う相馬刑事に、幸平は「妻の命を救いたかったんです」と言う。
幸平が球場を訪れた際、警察に知られぬよう、すり替えるように指示があり、「拒否すれば妻は殺す」と指示があったのだった。ゴミ箱の中身とすり替えるよう指示され、金は球場からなくなっていた。
幸平は自宅に戻る。一方、警察本部に「望月幸平がスーパーの駐車場で、何か怪しげなものを注入していた」との通報がある。その通報をもとに、相馬刑事は家宅捜索を行い、ワインボトルを押収する。
相馬刑事は、杏南がアドキシンを抽出できるウルシ豆を購入していることを調べあげていた。様々な事実を突きつけられ、幸平は追いつめられる。だが、「もし毒殺しようとしているなら、誘拐する必要はないじゃないですか」と反論する。
相馬刑事は、「身代金を受け取ったなら、人質をとらえ続けることにメリットはない。…0時までお前の芝居に付き合ってやるよ」と言う。だが、その0時を迎えても、真理亜は解放されなかった
幸平は、「着替えだけさせてください」と言い、自室へと戻る。真理亜との結婚式の映像を見ながら、幸平は吊るしたロープに首を掛け、足台を蹴る。直後、相馬刑事は応答がなかった部屋に飛び込み、心肺蘇生を図る。
意識を取り戻した幸平に、相馬刑事は「見つかったんだよ、真理亜さんは」と言う。幸平が向かったキャンプ場の3 km先に真理亜はおり、衰弱していながらも命に別条はなかった。
その知らせを聞き、幸平はむせび泣く。一方、バーのマスター・小暮久雄(佐々木蔵之介)は2億もの金が入ったボックスを目の前にしていた。その中には、「しばらく預かっていてください 望月真理亜」と書かれていた。