簡単なあらすじ
1) 富田美里(広末涼子)は、認知症の母・安江(倍賞美津子)、そして夫・娘と島で暮らしていた。そこに、有名作家で姉の桂木笙子(水野美紀)が20年ぶりに帰ってきた。島が、対岸の市に吸収合併されることになり、閉市会にゲストとして招かれたのだった。
2) 美里は、島を捨てた姉・笙子に反発する。20年前、笙子は奥寺健一(田中圭)と東京に駆け落ちしたのだった。健一は、東京からやってきた若い男であり、女所帯の富田家にしばらく住み込みでみかん畑の手入れを手伝っていたのだった。美里は、東京へのあこがれを持っており、健一に東京案内してもらうことを心待ちにしていた。
3) 笙子は、「健一とは、3ヶ月で別れた。女作って、健一は出てったの。…美里、東京に幻を見るのはやめなよ。美里は、この島で旦那と子供といる生活を選んだの」と言い、フェリー乗り場へと向かう。
4) 母・安江は、健一を殺害したことを美里に明かす。健一は、富田家の預金通帳を盗み出そうとしており、安江がそれを目撃。詰め寄る健一と揉み合いになり、安江は包丁で刺してしまったのだった。笙子は、健一の遺体を埋め、健一と駆け落ちしたことにした。
5) 姉が、好きだった島を離れざるを得なかったのだと知り、美里はフェリー乗り場へと急ぐ。すでにフェリーに乗っていた姉に、美里は声を張り上げて「お姉ちゃん!」と叫ぶ。そんな妹に、笙子は手を振るのだった。
詳細なあらすじ
富田美里(広末涼子)は、認知症の母・安江(倍賞美津子)の面倒を見ていた。美里は、3ヶ月ぶりの外出で、夫・宮田達也(中村靖日)に任せ、市民会館に向かう。
白綱島市は、対岸の市に吸収合併されることになった。閉市会が開かれ、姉で小説家の桂木笙子(水野美紀)がやってきた。笙子は、島を出て20年帰ってこなかった。その笙子が、壇上に上がり、「我が故郷よ…」などと、望郷の思いを込めた文章を読み上げる。
美里は、冷ややかに「だったら、もっと帰ってきなよ」とつぶやく。そして、「だったら、島に税金収めなよ!」と大声を上げ、会場を騒然とさせる。美里は帰ろうとして、笙子に呼び止められる。一緒に食事をしようと誘われるが、美里は「お母さんが心配だから帰る」と言う。
すると笙子は「私も帰る」と言う。笙子は、実家がみかん畑も手放したことを残念がるが、美里は「私とお母さんで、手が回るわけないでしょ」と言う。
20年前、役場の職員であった父を事故で亡くし、美里たちは家族三人で暮らしていた。父は不倫していた女性と事故死した。そのことがきっかけで、宮田家は村で孤立した。美里もイジメを受け、無言電話もかかってきた。
美里は、東京の大学への進学を希望していた。だが、笙子は「東京なんてごみごみしてるし、住むところじゃない。危ないし」と否定的なことを言っていた。そんな中、見慣れぬ若い男がみかんを勝手に食べていたのと見かける。
笙子は、「ドロボー!」と言うと、男は逃げ出した。逃げられないと観念した男は、自転車で旅しており、パンクして困ってしまい、のどが渇いてみかんを食べてしまったのだという。
男は、奥寺健一(田中圭)と名乗る。女所帯で暮らしていた家に、奥寺はしばらく住んでいた。そんな健一に、美里は恋心を抱いていた。
健一は、美里に「バンドをしていたけど、仲間とケンカしてしまって…旅して感じたことをいつか歌にしたいと思ってるんだ」と語る。美里は、「私は東京に行ってみたい。ここ以外の別のところを見てみたい。汚いところでもいいから」と言う。
そんな美里に、健一は「東京に連れてってあげようか?バイト終わったら、戻るから。案内してあげるよ」と言うのだった。美里は、勉強を頑張ることを約束し、健一と指切りを行う。
2人は、花火大会に出かけ、デートしていた。そんな中、健一は笙子が付き合っていた宮下邦和(水橋研二)と楽しそうに話しているのを見かける。
美里は、健一との約束通り勉強を頑張り、好成績をとった。通知表を見て微笑むが、帰ると母が呆然としていた。笙子は、「健一さんと東京に行きます」と書き置きして出て行ったのだった。
美里が少し離れたところで、笙子は宮下と声を潜めて話し合っていた。「基礎は掘り返さない。上モノを取り替えるだけだ…それが心配で帰ってきたんだろ?」と、宮下は美里に囁く。
娘の美香子(田辺桃子)は、東京への憧れを口にする。そんな美香子に、笙子は「東京に行って可能性が広がるかもしれないよ。私がそうだったように」と言う。だが、美里は「お姉ちゃんが出て行った後、私とお母さんはずっと待ってたんだよ」と言う。
美里はさらに、「健一さんとはどうなったの?」と訊く。笙子は、「3ヶ月も経たずに別れた。健一が女作って出てった」と言う。島に戻らなかった理由は、「別に島、好きだったわけじゃないし。健一は島を出たきっかけに過ぎない」と言う。
そんな笙子に、美里は「どんな思いでお姉ちゃんのこと待ってたか、分かる?」と泣きながら言う。そんな妹に、笙子は「美里…健一は、あんたが思ってるような男じゃないよ」とつぶやき、一緒に外に出るように言う。
みかん畑を市に売った金は、800万円だった。健一は、そのカネが目当てだった。預金通帳を勝手に見ていた健一は、「一緒に東京に行こう。俺が自由にしてやる」と言ったのだった。
笙子は、「このままでは、私の自由が奪われると思って、包丁で刺したの」と言うが、美里は信じない。笙子は「なんてね…私の小説だったら、そうするかな。でも、本当は騙されたふりして一緒に出てったの。通帳は奪い返したけどね」と言う。そして、通帳を取り出し、「返しておくね。大して使わなかったし」と言って、通帳を返す。
笙子は、「いつまでも東京の幻に騙されてちゃだめ。旦那もいて、子供もいる。その暮らしを、あなたが選んだのよ」と言う。そして、笙子は東京に戻るのだった。
美里が家に戻ると、母は迎え火を焚いていた。「お父さんもお母さんも、帰ってきた気がしないね」と言う。そして、「お姉ちゃんは帰ってこないんだよ…帰ってこれないんだよ」と言う。
「お姉ちゃんは、お母さんの罪を背負って出ていったんだから」と告白し、母は泣き出す。美里は、「お母さんの罪って何なの?」と訊ねる。
健一が勝手に預金通帳を見ていたのを発見したのは、母だった。母は健一に詰め寄られ、包丁を思わず手にした。揉み合いとなり、母は健一の腹部に包丁を突き立ててしまったのだった。帰ってきた笙子は、その現場を目撃する。笙子は、宮下とともに健一の死体を埋めたのだった。
事実を知った美里は、笙子がいるフェリー乗り場へと向かう。だが、そこには既に笙子の姿はなかった。フェリーに乗った笙子は、美里に手を振る。島に残りたくても残れなかった姉。島を去った理由を知った美里は、泣いて「お姉ちゃん!」と叫ぶことしかできなかった。