簡単なあらすじ
1) 白網島出身の浜崎洋平(伊藤淳史)は、小学校6年生のときに父・秀夫が失踪していた。母・佳子(若村麻由美)は、夫が帰るのを探し続け、働き詰めで家計を支えた。だが、帰ってはこなかったのだった。
2) 佳子は、情報提供を求める張り紙をした。そこに書かれた自宅電話番号に、「浜崎秀夫はもう死んでいる」と告げる電話がかかってくるが、佳子は信じようとしなかった。そんな中、魚やお菓子を差し入れてくれる真野幸作(椎名桔平)が現れる。
3) 失踪から3年経ち、幸作は「もうあんたの旦那は亡くなったと思い、前を向いてはどうか」と言う。だが、そんな説得に対しても、佳子は頑なに夫の死を受け入れようとしなかった。
4) 洋平は、幸作の娘から真実を知らされる。幸作は、漁師であり、漁に出ているとき、網に秀夫の遺体が引っかかった。だが、警察に届け出はせず、そのまま海に戻した。以前、警察に届け出て、丸一日拘束された。その際、妻の死に目にあえなかった過去があったのだった。そのことを告げようと浜崎家に通ったが、なかなか言うことはできなかったのだった。
5) 洋平は真実を知り、島に戻る。そこで幸作に再会した洋平は、「父さんが死んだ理由も分からない…でも、あの頃、オッサンがウチに来るようになって、俺と母さんが笑顔になれたのは本当だから。オッサン、これだけは言わせてくれ。ありがとう。海の星を見せてくれて」と感謝する。
詳細なあらすじ
白網島出身の浜崎洋平(伊藤淳史)は、小学校6年生のときに父が失踪していた。洋平は、妻・友美(紺野まひる)の作ったアクアパッツァを見て、故郷のことを思い出していた。小魚で作られたアクアパッツァは、息子の太一(五十嵐陽向)が釣ったものだった。
太一は、釣りに行って楽しかったと話す。「釣り竿が欲しい」と言うが、洋平は「年に1回行くかどうかだろ」と言うのだった。
洋平宛てに、高校時代の同級生・真野美咲(平山あや)からハガキが届く。そこには、「仕事で上京するので、お父さんのことで、どうしても会ってお話したいのです」という。
20年前、洋平の父・秀夫(橋本じゅん)は、「タバコを買ってくる」と言い残し、家を出た。母・佳子(若村麻由美)は、「思い当たることがないか?」と洋平の大叔父(モト冬樹)たちに訊かれ、それから母子は島中を探し回った。そして、情報提供を求める張り紙を行う。
そんな中、「浜崎秀夫はもう死んでいる」という電話がかかってくる。何度もその電話はかかってくる上、同じ文面の手紙も届けられていた。
父が姿を消した後、佳子は病院で働き始めるようになる。洋平は、母を少しでも助けようと、父の釣竿で釣りを行うようになる。
洋平の大叔父は、「あんた、良いところのお嬢さんだろ。洋平を連れて、実家に戻るのはどうだ?…アイツは、自分で海に飛び込んだのかもしれない」と言うが、その言葉に佳子は反発する。
それからも、母子は秀夫を探す。だが、中学生になった頃、「オッサン」が原因で探さなくなったのだという。
洋平が釣りをしていると、クーラーボックスを肩からかけた「オッサン」が声をかける。「そんな小さな魚じゃあ、腹にたまらねぇだろ」と言う。「オッサン」は、真野幸作(椎名桔平)であり、たびたび声をかけ、立派な魚を与えてくれるようになった。
幸作は、「アオリイカをさばくから、台所を貸してくれ」と言い、浜崎家を訪れる。それから2週間おきにやってくるようになり、差し入れをたびたび持ってきてくれるようになる。洋平も一緒に釣りをするなど、仲良くなっていった。
そんな中、近所の人から「新しいお父さんできてよかったね」と言われ、複雑な心境となる。だが、洋平は「俺の父さんは、行方不明になってるだけで、別れたわけでも、死んだわけでもない。だから、ずっと母さんは父さんの帰りをずっと待ってるんだ」と幸作に言う。
失踪から3年が経ち、幸作は白いユリを持って浜崎家にやってきた。「佳子さん、あんた、ずっとご主人を待ち続けた。立派なことだ。だが、それももう、今日で終わりにしねぇか?ご主人は死んだと、区切りをつけて。もっと楽に生きれる方法、考えてみねぇか?洋平だって、その方が幸せ…」と言うが、佳子は「主人は生きてます!ここに戻ってきます。私は待ち続けます…もう、来ないでください。こんなこと言われるなら、受け取るべきでなかった。金輪際、もうお会いしません」と言う。
幸作は、「申し訳ねぇ。堪忍してくれ」と頭を下げて帰っていった。佳子は、「しばらく1人にしてくれる?」と洋平に言う。佳子は声を上げて泣き出すのだった。
洋平は、釣りに出かける。そこで、幸作に「もしお前の親父が失踪でなく、死んでたと分かってたら、お前の母ちゃんたちはどうしてた?」と訊ねる。すると洋平は、「実家に戻って、今よりは楽な生活してたんじゃないかな」と答える。
幸作は、「死んだと分かっていたら、今より幸せだったんだろうなぁ…」と言う。「父さんは死んでない!」と言う洋平に、幸作は「本当にすまないことをしたな」と言って立ち去る。
海面に反射する光を「海の星だ」と楽しんでいる親子の姿を見て、幸作は「なんだよ、あんなもん偽物じゃねぇか」という。「本物を見たことあるのか?」と訊ねる洋平に、幸作は海に海水を撒き、光らせるのだった。
16年前、洋平は真野美咲(平祐奈)と同じ中学校に通っていた。美咲は、幸作の娘だった。美咲は、「旦那さんが亡くなった家に、ボランティアでお魚やお菓子を持って行ってたの」と言う。その言葉で頭にきた洋平は、「お前の父親、母さん目当てできてたくせに」と言う。だが、美咲は「父さんが、母さんと違う人を好きになるわけがない!」と言う。
洋平は、東京で美咲に会う。幸作は、肝臓癌で手術を受けたのだという。その手術の直前、幸作は「墓場に持っていくつもりだったのだが…」と、洋平の秀夫のことを話したのだという。
秀夫は、20年前に亡くなっていたのだという。漁師の網に、遺体がかかることがある。警察に届けず、漁師はそのまま海に戻すこともあるのだという。
幸作は以前、警察に通報して丸1日拘束された。そのせいで、妻の死に目にあえなかった。そのこともあり、幸作は漁に出て網にかかった秀夫の遺体を海に戻し、警察に届けることもしなかった。
それから何度も「事実を伝えよう」と秀夫は考え、浜崎家を訪れた。だが、伝えることができなかったのだった。
洋平は、久しぶりに島に戻った。母は生前、「私の遺骨は海に流して。一人ぼっちのお墓なんかいらないから」と言っていた。洋平は、散骨した海に献花をするのだった。そこで、洋平は幸作に再会する。
洋平は、「ヒデェよな。この年になると、さすがに父さんも生きちゃいねだろうなって思うけど…でも、時々、バカなこと考えてた。どっかで、記憶なくした父さんが、新しい孫たちに囲まれて、今も幸せに暮らしてるって」と言う。そして、「母さん、最期に言ってた。海に散骨して欲しいって。もしかしたら、父さんが海で死んだこと、知ってたのかもしれない。父さんと同じ場所で眠りたいって、そう思ったのかも」と語る。
洋平は、「父さんが死んだ理由も分からない…でも、あの頃、オッサンがウチに来るようになって、俺と母さんが笑顔になれたのは本当だから。オッサン、これだけは言わせてくれ。ありがとう。海の星を見せてくれて」と感謝する。幸作は、泣いて以前のように洋平の頭を乱暴に撫でるのだった。海面には、海の星が瞬いていた。