中山七里「ヒポクラテスの誓い 母と娘」あらすじ・ネタバレ

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浦和医大の研修医・栂野真琴は、内科での研修中、外来で高校時代の同級生であった柏木裕子と出会った。裕子は、マイコプラズマ感染症と診断され、治療されていたが、なかなか良くならなかった。そこで、真琴は自宅療養中の裕子をたびたび見舞っていた。

そんな中、裕子はトイレから出てきた途端に倒れた。呼吸困難を訴え、裕子は救急搬送される。低血圧と低酸素血症をきたし、心肺停止状態に陥る。人工呼吸を使用するも、呼吸状態は改善せず、彼女は外来で死亡してしまう。

真琴に、法医学教室の光崎藤次郎教授は、解剖を実施すべきだ、と主張する。だが、裕子は亡くなったのが親友ということもあり、さらには悲しみの内にある母親に許可をもらいに行くことはできない、と言う。

学問よりも感情を優先する真琴に、光崎はそれ以上言葉をかけることはなかった。そこで、キャシー・ペンドルトン准教授は、自分の母親が10代の頃に射殺され、司法解剖により犯人特定に繋がったことを話す。キャシーは、亡くなったのが、近親者や友人であるとしても、真実の追究の方が優先させるべきことではないか、真琴の行っているのは「公私混同」ではないか、と指摘する。

真琴は、その晩に母親と話す。親友が亡くなった悲しみを泣きながら打ち明けた後、「お母さんが亡くなったとして、解剖をしてもいい?」と訊ねる。すると母親は、「あなたは、分からないことがあると追求せざるを得ない性格でしょ。あなたがしたいと思うのなら、解剖しなさい」と言う。

真琴は、母親の言葉により、翌朝、キャシーとともに裕子の母・寿美礼を説得しに行く。解剖は断られるものの、キャシーは柏木家で、裕子が内服していた抗生物質・ガレノキサシンが多く残っていることに疑問を抱く。医師の指定した用量を守っておらず、少なく内服していたようだった。

キャシーは、裕子の母・寿美礼が、「代理ミュンヒハウゼン症候群」であった可能性を考える。「代理ミュンヒハウゼン症候群」とは、懸命に看護する姿を他人に見せることで周囲の同情を引き、自己満足を得るという精神疾患だった。

真琴は、寿美礼の説得を続けるが、解剖を承諾しようとはしなかった。ついには葬儀が執り行われ、火葬されてしまうタイムリミットが近づいていた。そこで古手川刑事が現れ、鑑定処分許可証を提示し、裕子は司法解剖されることになった。

司法解剖により、裕子の肺動脈には血栓があり、肺動脈血栓症が直接的な死因であることが判明した。だが、寿美礼が裕子の外出を禁止したりしていたため、下肢の筋力が弱まり、廃用症候群を呈していた。

寿美礼は、意図的に外出させず、薬の量も減らしていたと自供する。「娘の看病をしているとき、充実していた」のだという。さらに、夫が浮気していた際、注目を集めるために自傷行為を行っており、ミュンヒハウゼン症候群と考えられていたことも判明する。

真琴は、寿美礼のことに気づけず、自分を責める。だが、古手川刑事は「外見だけで判断できるような精神疾患少ないって話だ。真琴先生が気に病むことじゃない」と励ますのだった。

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