内科・津久場教授は、正式な検案要請もないにも関わらず、法医学教室の光崎藤次郎教授が解剖を行っていることについて、「一体、あの男は何を考えているんだ?」と疑問に思っていた。
そして、光崎の傍若無人ぶり、解剖費用が大学の予算を圧迫している点も問題視していた。津久場は、浦和医大の研修医・栂野真琴に「アイツの暴走をとめてくれ」と頼む。
一方、真琴は、内科で研修中に担当した10歳の少女・倉本紗雪に会い似行く。彼女は、虫垂炎に併発する腹膜炎で入院しており、治療後に軽快して退院したが、その後、再び体調が悪化して再入院していた。
紗雪は、深夜に急変して開腹手術を受ける。すると、膿性腹水、虫垂周囲の潰瘍などがみられており、やはり細菌感染によるエンドトキシンショックで死亡したと判断された。
真琴は、霊安室に安置された遺体を見に行く。その後、術前の血液検査データをチェックしようとするが、データが消去されていた。不審に思った真琴は、遺体から血液を採取し、検査する。すると、血栓溶解薬・rt-PAが外部から注入された可能性があった。
真琴は、両親に病理解剖を断られたため、「感染予防を行うため、消毒のために御遺体を預からせてください」と言い、運び出す。そのことを知った、紗雪の主治医でもある津久場教授は、「正式な手順を踏んでおらず、病理解剖の承諾書にサインをもらってもいない」と指摘し、解剖をやめさせようとする。
津久場は、県警捜査一課長・栗栖を呼んで、「死体解剖保存法に違反する解剖が行われようとしている」と止めさせようとする。だが、古手川刑事は「もし光崎教授を逮捕すれば、警察に都合の悪いことも話し、マスコミにもぶちまけられてしまう」と栗栖を説得し、解剖を実施させようとする。
解剖が行われ、腹腔内に大量の浸出液、虫垂下部に潰瘍がみられる。さらに、肝類洞の拡張およびうっ血がみられ、バッド・キアリ症候群であると考えられた。下大静脈の肝臓を通る部分や、肝静脈が狭窄し、肝機能障害を起こす疾患であり、静脈瘤内部に血栓がみられていた。また、右腕にはベテラン看護師らしからぬ注射痕が発見された。
こっそりと血栓溶解剤を投与していたのは、主治医である津久場教授だった。紗雪の体内に血栓ができていることに気づいていたのだった。紗雪は、腹膜炎を発症し、抗生剤セフトリアキソンで治療されていた。この抗生剤は、カルシウムの含まれた輸液で点滴を行われると、結晶ができて血栓を生じやすいのだった。
光崎もまた、津久場教授の患者が、血栓症を発症している可能性に気づいていた。古手川刑事に、「既往症のある死亡者が出たら報告せよ」と告げていたのは、その可能性を津久場にひそかに次げようとしていたためだった。
峰岸透、栗田益美、真山選手、柏木裕子、倉本紗雪らは、皆、津久場教授の患者であり、なおかつ感染症を患っており、セフトリアキソンを投与されていた。彼らは皆、腎梗塞、脳梗塞、網膜動脈閉塞症、肺塞栓症など、血栓症を発症していたのだった。
津久場教授は、大学病院の体面を守るため、医療過誤を隠蔽しようとしていたのだと認める。結果、津久場教授や病院は、警察の捜査を受け、マスコミに追求されることとなった。
真琴は、津久場教授に光崎の動向を探るよう指示されていたことを、光崎に告げ、謝罪する。だが、「ヒポクラテスの誓いを胸に刻めるような医師になりたいんです」と言い、法医学教室での研修を継続させてもらえるよう、頼み込む。
光崎は、「勝手にしたまえ」と言い、キャシーは「ウエルカム、真琴。法医学教室にようこそ」と言うのだった。