入山瀬平太は、妻・千代乃と浮気相手を殺害して欲しい、と折壁嵩男に依頼する。千代乃と浮気相手は逃避行を続けており、各地を転々としていた。その場所はすでに特定されており、入山瀬はその2人を殺害して欲しいと言う。
折壁は、その場所へと出向き、そこで愕然とする。千代乃の浮気相手というのは、大学時代の恩師で脳外科医の名和潤造であった。彼は、思わず自分がどのような目的でここへきたのかということを説明してしまう。ところが、名和は逃げるでもなく「君の仕事をしなさい」と言うのだった。
名和は、腕利きの脳外科医であり教授であったが、入山瀬の主治医となった後、千代乃と不倫をしてしまう。その後、その不倫を指摘されて大学を追われようとしていた中、手術でミスを犯して千代乃との逃避行を行っていたのだった。
入山瀬は、千代乃たちの居場所を知った後、彼女を取り戻しにきていた。ところが、彼女は「一緒に戻るくらいであったら死ぬ」と言い切ったのだという。そして、千代乃が難病の結節性多発動脈炎を患っていると知り、2人を引き離さず、千代乃と名和に毎月5万円を送り始めたのだという。
千代乃は、これ以上病気が進行する前に、「慈悲死(マーシーキリング)」を望んでいた。折壁は千代乃、そして名和のたっての希望で、彼女を塩酸ケタミン、筋弛緩剤、塩化カリウムで死に至らしめるのだった。
その後、名和は折壁を落ち着かせるために、とお茶を飲ませる。だが、そこには睡眠薬が入れられていた。気づくと、そこは小石川パナケイア・クリニックだった。名和は、「一卵性双生児の弟のため、死んだら腎臓を移植に回して欲しい」と言う。そして、拳銃で自分を殺害するよう依頼するのだった。
戸惑う折壁に、拳銃の扱いの心得があるという元恋人の梶睦子が手を添え、名和めがけて銃弾が発射される。その瞬間、折壁は気を失ってしまうのだった。