平和島のボートレース場で、ボートレーサーである真山慎司が、コンクリートの防波堤に激突して死亡する。脳挫傷で即死し、警察は事故と判断。事件性はないとされた。
だが、真山には既往症として気管支炎があり、「既往症のある人物が死亡したら、報告せよ」と言われている古手川刑事は、光崎藤次郎教授に報告する。そこで、光崎教授は行政解剖を担当した東京監察医務院に所属する監察医・剣持達見の死体検案調書を一目見て、その書類の杜撰さを見抜く。
光崎教授は、古手川刑事、そして法医学教室准教授であるキャシー・ペンドルトン、法医学教室で研修する栂野真琴に、真山の遺体の状況が、本当に死体検案調書どおりなのかを確認に行かせる。
真山の妻・公美は、自殺を否定し、さらには夫があんな事故を起こす可能性も低いのではないか、と話す。「何者かが、薬を飲ましたなど、夫は殺害された可能性もあるのではないでしょうか」と公美は言う。
キャシーや真琴が、遺体を確認すると、胸部・腹部に縫合の痕がなかった。それはつまり、剣持が解剖を行っていないことを意味した。古手川たちは、解剖する必要があると考え、公美に話をすると、彼女は解剖に同意する。
古手川刑事は、浦和医大に遺体を運ぶが、そこに大森署刑事課・堀内が現れ、管轄外の古手川が関与していることを問題にする。さらに、その場に剣持監察医もおり、判断に疑いを挟むことに文句を言う。その場に光崎教授はおらず、3人は剣持に監察医務院への侮辱であると責められる。
だが、真琴たちは、堀内に「解剖されていない」ことを明かすと、堀内は慌てだす。さらに、そこに外出していた光崎教授が現れ、すぐに解剖は実施される。
解剖が行われ、死因は脳挫傷であることは変わらなかった。だが、網膜の半分以上が壊死し、網膜動脈閉塞症を起こしていたことが明らかとなる。死亡時、真山は日常生活を送るのすら困難になるほど、視力を失っていたのだと判明する。
真山は、3年に1度のボートレーサーとしての登録更新を控えていた。条件としては、両目とも裸眼で0.8以上であることが必要だった。真山は、資格を喪失することが明らかであった。
そのため、事故死に見せかけて自ら死を選び、5千万円の保険金を家族に残したのだった。光崎教授は、「自殺であると断定はできない」と言い、警察は事故死との判断を変えようとはしなかった。
光崎教授が不在であった理由は、「監察医務院の院長は、大学の同期だ。それで、不届き者の監察医について話をしていたんだ」と明かす。剣持へはなんらかの沙汰が下されるようだった。
臨床研修長・津久場公人教授は、真琴に「光崎は敵が多い。半ば無理やりに 費用度外視で解剖実績を増やし 学会での地位維持しているのではと言う者たちもいる。・・・私は、あの男が心配でならない」と言う。