簡単なあらすじ
1) 三城紗江子(森カンナ)は、何者かに追われ、ネウストリア公国の大使館の屋敷から飛び出したところ、自動車に撥ねられて死亡する。この事故を担当した久利生公平(木村拓哉)は、彼女が裸足であったことに疑問を抱き、捜査を開始する。
2) 雨宮舞子(松たか子)は、広域暴力団・二崎会の恐喝事件を担当していた。その証人が三城だった。そのこともあり、三城は二崎会によって消されてしまったのではないか、と雨宮は考える。
3) 三城がネウストリア公国の大使館から出てきて飛び出したということ、そして三城が亡くなる2時間前に出席していたパーティーの写真に、ネウストリア公国大使館の職員エリック・コールマン(エリック・ヘルマン)が写っていたことから、ニ崎会はコールマンに三城を消すよう依頼していたのではないか、と久利生は考える。そして、ネウストリア公国のクレマンス・ヴェルネ(グレッグ・デール)公使は、ニ崎会から仕入れた違法薬物を本国へ密輸していた。
4) ニ崎会とヴェルネ公使、コールマンとの繋がりが明らかとなり、久利生は外務省欧州局長・松葉圭介(佐藤浩市)に城西支部のメンバーとともに直談判し、ジャック・ローラン(ジェームズ・C・バーンズ)大使と直接話せることとなる。ローラン大使は、ヴェルネ公使とコールマンの悪事を知り、ヴェルネ公使を本国へ送り返し、そしてコールマンは久利生たちへ引き渡し、裁きを受けさせると約束するのだった。
起:交通事故
三城紗江子(森カンナ)は、何者かに追われていた。彼女はネウストリア公国の大使館の屋敷から外に出て、庭で転倒する。靴が脱げてしまうも、彼女は走り続けた。道路に飛び出した直後、彼女は横からやってきたクルマに撥ねられて死亡する。
大阪地検難波支部では、雨宮舞子(松たか子)が検事として勤務していた。雨宮は、三城が交通事故で死亡したことを知らされ、驚く。三城は、雨宮が担当する広域暴力団・二崎会の恐喝事件の証人となっていたのだった。
城西支部に事実確認をしに行くことになるが、三城の事故を担当するのは久利生公平(木村拓哉)であり、雨宮は動揺する。
三城を撥ねたのは、徳本健也(新井浩文)という男性であった。久利生は、徳本に聴取を行う。その中で、三城が靴を履いていなかったことに、久利生は疑問を抱く。
承:大使館の壁
久利生と雨宮は、久しぶりの再会で気まずさを感じる。雨宮は、「久利生検事の担当する交通事故は、単なる事故ではない可能性があります」と指摘し、久利生は「口封じに殺害されたか」と考える。
久利生は、現場を訪れて確認を行う。徳本の証言と矛盾点はなさそうに思われた。だが、三城が現場で何をしていたのか、久利生と雨宮は疑問に思う。三城は死亡する2時間前、青山でパーティーに参加していた。
久利生は、現場の屋敷がネウストリア公国の大使館であると判明する。さらに、三城が写った青山のパーティーでの写真には、ネウストリア公国の職員であるという男性が写っていた。
大使館の中では、クレマンス・ヴェルネ(グレッグ・デール)公使と外務省欧州局長・松葉圭介(佐藤浩市)が交渉を行っていた。一方、久利生は大使館のインターホンを何度も押したため、東京地検本庁次席検事・牛丸豊(角野卓造)は叱責し、「大使館のことは忘れろ」と言う。久利生は、外交特権の壁に捜査権が阻まれ、大使館を睨みながら「これが国境ってわけか」とつぶやく。
城西支部メンバー行きつけのバーSt.George’s Tavernで、雨宮を囲んでの飲み会が行われる。そこで、雨宮と久利生の関係に触れられるが、雨宮は今、弁護士をしている婚約者がいると明かす。だが、実際はお見合い相手であり、矢口繁之(児嶋一哉)という男性とデートを重ねているだけであった。
久利生は、「国境を越えるもの」を探していた。麻木千佳(北川景子)は、「愛は国境を越える」などと言う。さらに、「食べ物は国境を越える」との発言に、久利生は「ネウストリア料理の専門店ってあるのかな?」と考える。
マスター(田中要次)に教えられ、久利生は都内に一軒しかないというネウストリア料理の専門店を訪れる。そこで、麻木は大使館職員が写った写真を見せるが、店主は「知らない」と言う。
久利生は、出された巨大なソーセージに驚く。別のテーブルで食事を行う、ネウストリア人の客は、「ネウストリア人は、1日7本ソーセージを食べる」などと言う。さらに、彼は「ペタンク」というスポーツが好きだと教える。
雨宮は、「これ以上、捜査の進展が望めない」と言い、大阪に帰る。帰る間際、雨宮は久利生に「大使館は無理なんです」と言い、捜査続行は無理であると言う。
ペタンクという、フランス発祥の球技ルールを覚え、再びネウストリア料理の専門店を訪れる。そこで、客としてやってきていた大使館員たちにペタンクの球を見せ、一緒にプレイしに行く。
麻木は、大使館職員に三城とネウストリア人が写った写真を見せる。すると、その人物がエリック・コールマン(エリック・ヘルマン)という大使館職員であることが判明する。久利生が検事と発覚し、大使館職員たちは早々に飲み会を終了して帰る。
転:越境
翌朝、久利生は信号待ちで突き飛ばされ、危うく轢かれそうになる。だが、怪我もなく無事だった。犯人を探そうとするが、その場に犯人の姿はなかった。
外務省欧州局局長・松葉は、久利生に「違法な捜査はやめたまえ」と命令する。だが、久利生は「事故の調査を行っているだけです。写真に写った、被害者と一緒にいるコールマンという人に会って話がしたいんですが」と言うが、松葉は「たかが交通事故で外交の邪魔をするな」と言う。久利生は、「たかが?」と、松葉の言葉に疑問を感じるが、けんもほろろに帰される。
久利生は、麻木とおでんの屋台で食事を行う。雨宮を意識する麻木に、久利生は「自分と雨宮を比べんな」と言う。そんな中、屋台にダンプカーが突っ込み、店主をかばって久利生は撥ねられてしまう。
久利生は入院し、雨宮が駆けつける。麻木は、雨宮と久利生を残して帰る。雨宮は一晩中、久利生のそばについていた。
雨宮は、ネウストリア公国の大使館と暴力団が繋がっていると考える。捜査終了をすべきだと言うが、久利生は「ここでやめたら、何が起こったのか分からないままだ。事故の被害者と加害者の人生がかかってるのに、ここでやめることはできない」と言う。
久利生は、「ありがとうな、来てくれて」と雨宮に言い、捜査は自分で行うと言う。城西支部のメンバーは、久利生の熱意に打たれて、自分たちも大使館相手に捜査を開始する。
二崎会は、違法薬物をネウストリア公国大使館を介して捌いていた。さらに、三城は大阪で二崎会の地上げの話を聞いて東京に逃げてきた。そして、ネウストリア公国の大使館職員がいるパーティーに参加した2時間後に交通事故で死亡した。
このことから、城西支部部長・川尻健三郎(松重豊)もまた、ネウストリア公国の大使館、そして二崎会の繋がりがあると考える。二崎会の依頼を受け、三城を消すことを大使館職員・コールマンは実行しようとしていたのだった。
馬場礼子(吉田羊)検事は、コールマンとの交渉役となっている二崎会のヤクザを尾行したところ、彼がカバンを交換し、取り引きを行っていると気づく。ちょうどその時、テレビの生放送ロケが行われており、その映像から、取り引きの相手がヴェルネ公使と判明する。
雨宮は、城西支部のメンバーが徹夜で捜査を行っていると知り、自らも城西支部に再び出向く。
ヴェルネ公使が現金を渡し、違法薬物を受け取ったと考えられた。さらに、三城と知り合いであるコンパニオンの携帯電話には、事故直前の留守電メッセージが入っており、その背後にはオルゴールが鳴っていた。
二崎会傘下の石見興業が所有するダンプカーから、屋台のおでんが発見され、久利生が襲われたものと判明する。さらに、コールマンはニ崎会との関係があることが判明する。
久利生は、三城がネウストリア公国の大使館にいたことが証明できれば、ニ崎会とネウストリア公国大使館、そしてコールマンが三城を消そうしていたということ全てが立証されると考えていた。だが、大使館の壁は厚く、高い。ところが、雨宮はお見合い相手・矢口の父親のコネを使い、大使館のパーティーに傘下できることとなった。
久利生と雨宮は、パーティーに出席する。そこで、久利生はコールマンを見つける。追いかけて途中で見失ってしまうのだが、そこで三城が出てきた庭のドアを発見する。庭を歩くと靴は泥だらけであり、三城のストッキングが汚れていた理由であると久利生は考える。さらに、三城の靴についていたアクセサリーの一部が庭に落ちていたのを発見する。
大使館職員に発見された2人は、地下に閉じ込められてしまう。そこで、久利生は「本当に大使館に手を出していいと言われたのか?」と雨宮に質問し、やはり彼女は単独行動であると判明する。
地下室に、ヴェルネ公使が現れる。「非常識な検事だ。外交特権を侵害している」と言う。そこに、ジャック・ローラン(ジェームズ・C・バーンズ)大使が現れる。彼こそが、ネウストリア料理店で一人飲みしていた人物であると久利生は気づく。ローラン大使は、「帰りなさい」と言い、久利生を帰す。
さらに、松葉にも激しく叱責され、「次の職を探しておくんだな」と言われる。その最中、久利生は時計のオルゴール音が、三城の知人にかけた留守電に残った背後の音と一致することに気づく。
外務省は、「久利生は検事にふさわしくない」と抗議を行い、川尻部長は呼び出されることとなった。
結:久利生の執念
久利生は、松葉局長に「大使館の扉を開けてもらうよう説得しに行く」と言って出かける。一方、雨宮は上司に叱責されるも、実は応援されていたことに気づいて感謝する。
久利生たち城西支部のメンバーは、総出で松葉局長に会いに行く。麻木は、ネウストリア公国大使館の庭で発見した三城の靴の飾りを見せる。そして、宇野検事や馬場検事たちもまた、コールマンやヴェルネ公使が違法薬物の取り引きを行っていることを告げる。さらに、久利生は三城のかけた留守電の背後に聞こえる大使館の時計の音を聞かせ、「三城さんは大使館にいたんです」と言う。
事実を積み上げ、松葉は「ヴェルネ公使だ。ナンバー2だ」と言う。そして、外交官パスを持つのはヴェルネ公使であり、彼こそが違法薬物の密輸を行っているのだ、と指摘する。
松葉は、「大使が公使を外国に引き渡すはずがない」と言い、証拠をいくら突きつけても意味がない、と言う。だが、久利生は「ウソつかれたっていい。騙されたっていいんです。結局、分かり合えなかった、それでもいいんです。俺は、ちゃんと会ってしっかり目を見て話したいんです。そこからじゃないですかね、そこから始まるのは」と言い、大使との話し合いを行いたい、と言う。
一方、呼び出された川尻は、「最初から諦めるなど、検事にあるべき姿ではない!」と怒鳴り、久利生たちの捜査の必要性を訴える。
松葉は、久利生に言われ、ネウストリア料理店に出向く。そこで、久利生と話していた人物と久利生は会話を行う。そして、松葉は彼と「話をしたいのです」と言う。「ネウストリア人は、1日7本ソーセージを食べる」「ネウストリア人は、ペタンクが好き」と教えた彼こそが、お忍びで店にやってきたジャック・ローラン(ジェームズ・C・バーンズ)大使だった。
翌朝、久利生、雨宮、麻木たちがネウストリア公国大使館から招待される。ローラン大使から直々に呼び出された久利生たちは、大使がネウストリア料理店でお忍びの恰好で食事をしていた客であることに気づく。
ヴェルネ公使は、ローラン大使に「後悔しますよ」と言って立ち去る。その後、久利生たちはローラン大使と膝を突き合わせて話を行う。ローラン大使は、「ルールは守らねばならない。ヴェルネは、ネウストリアに返す。彼は、そこで裁かれるだろう。そして、外交特権のない者は、あなたがたに引き渡す」と言うのだった。
感謝する久利生に、ローラン大使は「お礼は松葉さんに。まずは久利生検事の話を聞いてやって欲しい」と言われたのだと言う。
久利生は、コールマンを参考人として呼び出し、聴取を行う。さらには、ダンプを突っ込ませた件で聴取、大阪では雨宮によって違法薬物から聴取を行われる予定だった。
コールマンは、事故の状況を話し、その結果、三城を避けることは不可能だったとして、彼女を撥ねた徳本を久利生は不起訴にする。だが、「女性が一人亡くなっています。そのことは忘れないでください」と言う。麻木も、「これからは安全運転を」と言い、徳本は頷く。
雨宮と麻木は一緒に食事を行う。麻木は、「雨宮さんは、久利生検事のこと好きでしたか?」と訊く。雨宮は、「大好きだった…彼は、大切なものを気づかせてくれる人。やっぱり、久利生さんは久利生さんだった」と答える。そして、雨宮は麻木に「久利生さんのこと、よろしくね」と言って立ち去る。
雨宮は、お見合い相手の矢口に「結婚はできません」と電話で告げる。「他に好きな人がいるんですか?」と訊かれ、雨宮は「はい…でも、それだけでなく、検事としてまだ何もできてないんです」と言う。矢口は、「勝手な人ですね…私も勝手に待ってます。良い検事になってくださいね」と言い、電話を切る。
雨宮は、石垣島に赴任することになっていた。かつて久利生が左遷された場所に行くことで、雨宮は「久利生さんと同じ道を辿ります」と言う。そんな彼女に、久利生は「じゃあな…」と言い、後ろ姿をしばらく見送った。
ネウストリア公国と日本の貿易交渉が無事に締結され、松葉とローラン大使はネウストリア料理店で食事を行っていた。
久利生と麻木は、12時間かけてネウストリア公国を訪れる。その目的は、ニ崎会・コールマンとの関係の先に存在しているヴェルネに会うためだった。「直接会って、ヴェルネと話をしたい」と久利生は考えていたのだった。