冒頭から、ワンシーンで撮られたゾンビ映画『ONE CUT OF THE DEAD』が流れる。
その内容は、廃墟となった山奥の浄水施設で、狂気に駆られた映画監督が死者を蘇らせる儀式を行い、ゾンビでパニックとなった女優を追いかけ回し、リアルな表情を撮影しようとするというもの。
だが、その映画を観ていると、冗長な会話を続けるシーンや、唐突に展開するストーリー、カメラマンが突然転倒し、しばらくそのままのアングルが続くなど、違和感を覚えるシーンが多くある。
その映画がエンディングを迎えた後、話は1ヶ月前に遡る。
監督の日暮隆之は、「安く、早く、質はそこそこ」をモットーに、番組の再現VTR撮影を請け負っていた。そんな日暮に、プロデューサーから「ゾンビ映画・ドラマの専門チャンネル開局に伴い、ワンカット30分のゾンビ映画をノーカット生放送したい。その監督をお願いできないか?」と依頼されるのだった。
日暮はそんな無謀な企画を最初は断るのだが、娘の真央が主演の神谷和明のファンであり、その仕事を引き受ける。そこから、冒頭の映画『ONE CUT OF THE DEAD』がどのように撮影されていたのかが明かされていく。
生放送を迎える直前にも、数多くのトラブルが起こる。本来は、『ONE CUT OF THE DEAD』の中で映画監督役、メイク役として登場するはずだった役者が交通事故で現場にやってくることができず、日暮自身が映画監督役として出演、そしてメイク役は偶然見学に来ていた、元女優の妻・晴美が急遽出演することとなった。
さらに、カメラマン役の細田学はアルコール依存症で、差し入れられた日本酒を飲み干してしまい、泥酔してしまう。また、音声役の山越俊助は下痢で演技途中にも関わらず、勝手に中座してしまう。
だが、日暮は映画監督志望の真央とともに、機転でトラブルをなんとか切り抜けていく。晴美が演技に没頭するあまり暴走すると、日暮は妻を絞め落として気絶させる。
ついにエンディングとなり、そのシーンは屋上に血液で描かれた五芒星の上で、主演女優の松本逢花が佇むのを上空から撮影するものだった。
ところが、クレーンカメラが晴美の暴走で破壊されてしまい、撮影できなくなっていた。そこで真央のアイデアにより、出演者・スタッフ一同で人間ピラミッドを作り、4mの上空から撮影することに成功するのだった。かくして、出演者・スタッフのチームプレイにより、生放送は中断なく終えることができたのだった。
どんでん返しの解説
冒頭のワンカットゾンビ映画『ONE CUT OF THE DEAD』は、実は生放送されており、その映像がどのように撮られているかを、次のパートで明かすという流れである。
『ONE CUT OF THE DEAD』で違和感のある数多くのシーンの裏に、どのようなトラブルがあり、出演者・スタッフがどのように解決しているかが明かされるところにこの映画の面白さがある。
ネタバラシ部分は、三谷幸喜監督作品『ラヂオの時間』のようで、様々な創意工夫で生放送を乗り切る様子がコメディタッチに描かれている。