簡単なあらすじ
1) 鳴海大和(福士蒼汰)は、東海林明(香川照之)の遺品の中にあったUSBメモリーで、ある書類を手に入れる。その書類は、3億円事件の三ヶ月前に書かれていたものであり、「3億円事件」を起こすことで、安保闘争に参加する過激派・学生たちを容疑者として、ローラー作戦で一斉摘発するという計画が書かれていた。
2) 計画書の書類には、沢田慎之介の名前が記載されていた。刑事時代の沢田は、3億円事件を利用して安保闘争に参加する過激派・学生たちを一掃しようと考えたのだった。そして、3億円事件を実行したのが大和の父・川崎雄大だった。
3) 3億円事件実行後、現金は米軍基地に運ばれた。そうすることで、警察の非常線に引っかからずに済んだのだった。だが、計画の黒幕・公安の須黒隆により、雄大、仲間の竜は殺害されそうになる。竜はその傷が原因で死亡し、雄大は生き延びた。
4) 警察・公安によって次々と事件の証拠が消される中、雄大は、沢田の子供を誘拐し、事件の証拠となる3億円を手に入れる。そして、沢田の指紋がついた唯一の五百円札を保管していたのだった。
5) 沢田は、3億円事件のことを利用して警察や政治家を強請り、民和党・幹事長にまで登り詰める。その一方で、雄大は3億円事件に加担して様々な人々の人生を変えてしまったことを後悔していた。さらに、雄大は炭鉱で働いていたところ、事故に巻き込まれて亡くなった「鳴海鉄也」になりすまし、過去を捨てて別人の人生を歩んだのだった。
6) 沢田は過去を消すため、多くの人命を犠牲にしてきた。だが、雄大や大和、鈴木泰成(劇団ひとり)により、ついに3億円事件の真相が暴かれ、沢田は真相を語ることを決意する。雄大は1人軍艦島に残り、旧紙幣を燃やして犠牲となった人々を弔うのだった。
前話:「モンタージュ 三億円事件奇譚 前編」あらすじ・ネタバレ
起:「3億円事件」の目的
川崎雄大(唐沢寿明)は、かつて働いていたジャズバー・HERBIEを訪れる。店主は、雄大が生きていたと知って驚く。そんな雄大は、店主に「頼みごとがあるんだ」と言って、封筒を渡す。
その後、鳴海大和(福士蒼汰)は父・雄大のことを訊くため、小田切未来(芳根京子)とともにジャズバーを訪れる。話をすると、店主は「3億円事件の直後、雄大はぶっつりと行方不明となった」と言う。そして、「昔の話を訊きにきた人たちがきたら、この封筒を渡して欲しいと言われた」と言い、封筒を渡す。
その封筒には、那覇へのフェリーチケットと現金が入れられていた。沖縄には、雄大のかつての仲間・響子ギブソン(夏木マリ)がバーを経営しているのだという。
水原大輔(ムロツヨシ)刑事は、東海林明(香川照之)の遺品の中にあったUSBメモリーから、書類のデータを発見する。そして、その書類について、大和たちに対し「3億円事件の後、ローラー作戦で学生運動を行う過激派の一斉検挙が行われた。そして、そのローラー作戦をあらかじめ予期するかのような書類が発見された。書類は、3億円事件の3ヶ月前に書かれている。3億円事件は陰謀だとする噂を裏付けるような書類だ。そして、その書類は民和党の幹事長・沢田慎之介(西田敏行)によって書かれている」と語る。
沖縄にやってきた大和は、響子に話を訊く。響子は大和が雄大の息子だと知って驚く一方、彼女の自宅に身を隠すよう言う。
承:沢田の計画
1967年、雄大は女子大生の井上和子(門脇麦)と交際していた。雄大の写った写真を撮ったのは、カメラを誕生日プレゼントとして贈った和子だった。
大和は、響子に「3億円を盗んだのは、川崎雄大という男ですか?」と訊ねる。響子は、「1人じゃない。3億円事件の犯人は、私たちなんだ」と明かす。響子が見せた写真には、雄大が警察官の格好をして、白バイの前にいる姿が写っていた。
大和は、写真を撮った人物について、「沢田慎之介ですか?」と言う。響子は、「あんたたち、そんなことまで知ってるの?」と暗に認める。
3億円事件の10ヶ月前、沢田刑事は雄大に会い、「ノンキャリアでも、偉い人に目をかけられている。それを突破口に上にいきたいと考えている」と言う。そして、結婚して妻は妊娠しているのだと明かす。
大和は、「沢田慎之介が3億円事件を計画したと考えていいんですか?」と響子に質問する。響子はそれを認め、なぜ雄大が加担したかについて、恋人・和子が亡くなったからだと明かす。
和子の遺体の前で泣く雄大は、警察官の心ない言葉に激怒し、殴りつける。自宅に戻った雄大は、沢田に慰められる。「彼女は、デモに巻き込まれた。機動隊にやられたんじゃない、学生がクルマを奪って、それに巻き込まれたんだ。学生運動に殺されたんだ」と沢田は言い、「このままじゃこの国はダメになる。俺とこの国を変えないか?俺と一緒に、和ちゃんの仇を取ろう」と沢田は計画に雄大を誘ったのだった。
大和は、「親父は3億円が欲しかったわけじゃない。…なら、なぜ3億円を処分しなかったんだ。なぜ隠したんだ?」と考える。そして、沢田と仲違いしたのではないか、と仮説を立てる。
そんな中、響子は店が火事になったのだと電話を受ける。関口二郎(遠藤憲一)刑事は店に火をつけ、大和たちをおびき寄せたのだった。関口は、大和たちを確保するよう指示する。一方、関口はさらに響子の自宅に入り、スーツケースの中の3億円を奪おうとしていたのだった。だが、大和は関口たちの行動を予期しており、待ち伏せしていた。
大和は関口を追い詰めるが、逆に未来を人質にとられてしまう。関口は、未来の首を絞め、家の周りは警察官が取り囲んでいた。絶体絶命のピンチの中、響子の店の常連であるアメリカ兵に助けられ、大和は気を失った未来を背負って逃げ出す。
未来が死んでしまったと勘違いした大和は、「俺は自分の人生を見つけなければならない。ずっと3億円事件にとらわれて、いつかこんな風になることを望んでいた。でも、未来がいなければダメなんだ」と言って泣く。そんな中、未来は意識を取り戻すが、未来の服の中に携帯電話が関口によって入れられており、そこに関口がやってくる。
発砲する関口から逃げる中、そこに予備校講師・鈴木泰成(劇団ひとり)がやってくる。鈴木の運転するバンに乗り込み、大和たちは逃げ出す。
転:3億円事件の真相
鈴木は、大和たちに3億円の隠し場所を訊くが、大和は「信用できない」と言う。そこに関口がやってきて、再び大和たちは逃げ出す。その先に、退役軍人のハリー・スタンレーが運転するクルマが停まっていて、乗り込む。
3億円事件には、沢田だけでなく公安も関わっているとハリーは明かす。ハリーは、公安の須黒隆によって沢田と引き合わされたのだった。大和は、ハリーによって3億円が基地内に隠されたのだと推理し、ハリーは認める。
沢田は、望月竜(渋谷謙人)に3億円事件の実行犯になるよう説得していた。だが、竜は響子と結婚を控えていた。そのため、雄大が「俺がやる」と名乗りを上げたのだった。
実行直前、雄大は沢田に「3人で写真を撮ってください」と言う。雄大は、こっそりと写真を撮影する沢田が映るようにミラーを調整していた。カメラは、響子に預けるのだった。わざわざ証拠を残す理由を問われ、雄大は「証拠を消されないためです」と言う。
3億円をとりに墓地へと向かった響子に、ハリーは「竜は亡くなっているんだ。3億円事件の翌日に息を引き取ったそうだ」と明かす。恋人が亡くなっていると知り、響子は悲しむ。そして、雄大が置いた地蔵の場所が「竜のお墓なんだ」と告げる。地蔵の下には、竜の遺骨、そして竜が渡すはずだった婚約指輪があった。
響子は、「3億円事件の犯人として、自首するわ」と言う。ハリーは、響子を見送って3億円を掘り出す。だがそこに、鈴木が現れ、「そのお金は私が預かりますよ」と言ってハリーを殴打する。
雄大は、沢田の妻・関口ヒロミに再会する。ヒロミは呆けているようで何も口にしないかと思われた。だが、「生まれたばかりの娘を誘拐されました…それで、何もかも変わってしまいました」と言う。
沢田慎之介は、子供を探しもせず、事件にもしなかった。代わりにコインロッカーに捨てられた子を拾ってきたのだった。慎之介のことを許せず、ヒロミは子供を引き取って離婚する。その子供こそが、大和たちを追う関口二郎であった。二郎は、ヒロミの交際相手に虐待されるも、包丁で刺して復讐するような子供だった。沢田と二郎は、血の繋がりこそないが、父子だったのだ。
沢田は、メディアや警察に圧力をかけ、響子を「頭のおかしい愉快犯」として仕立てあげる。一方、ハリーは、鈴木本人から「軍艦島にいる。2人を連れてきて欲しい」と連絡を受ける。ハリーは、ヘリで2人を軍艦島へと連れて行く。
結:軍艦島へ
大和と未来は、鈴木と再会する。鈴木は、2人を連れて軍艦島の65号棟へと案内する。「ここで川崎雄大と沢田慎之介は育った」と言う。そこに、沢田もまたやってくる。
大和は、沢田に対して「そもそも、あなたの計画が失敗だったからではないですか。時効になり、安保闘争にも勝利した。だが、今でもあなたは人々を苦しめ続けているだけじゃないですか。そしてあなたは、3億円事件をネタに警察や政治家を強請って出世しただけに過ぎない」と言う。
沢田は「お前の父親が私の計画をめちゃくちゃにしたんだ」と反論する。だが、その場に雄大が現れ、「いや、最初から慎ちゃんの計画は狂っていたんだ」と言う。
雄大は、沢田の秘書を名乗る男に呼び出され、拉致されたのだと明かす。さらに、関口二郎に撃たれて足に怪我を負ったのだと明かす。
また、「計画は須黒という公安の人間によって狂わされた」と雄大は言う。雄大は計画を実行し、落ち合う場所となっていた米軍基地に沢田、そして須黒がやってきたのだった。須黒は、沢田に対し「早く始末しろ」と告げる。
沢田は、雄大に拳銃を向ける。だが、竜は沢田の腕を斬りつけた。竜は首をかすめる形で撃たれ、須黒は雄大の胸を撃った。雄大は、沢田が「防弾チョッキを着ろ」と言っていたため、命を救われていたのだった。
須黒は、竜にとどめを刺そうとして、逆に雄大に返り討ちにされる。雄大は、傷ついた竜を連れて助け出そうとした。だが、病院にも連れて行けず、竜は数日後に亡くなったのだった。
横溝保(瀬戸利樹)は、竜を匿う中で3億円事件の真相について知ったのだった。その後、店を自力で経営するに至ったが、バブルが弾けて経営難に陥る。そこで、横溝は沢田を脅してカネを引き出そうとしていた。その直後、自殺を装って殺害されたのだった。そして、その横溝の息子こそ鈴木泰成だった。鈴木は、3億円事件の真相を父親から知らされており、父親の死の真相を暴くために動いていたのだった。
雄大は、沢田の娘を誘拐し、沢田と交渉して事件の証拠となる3億円を手に入れる。沢田の指紋がついた五百円札を雄大が持っていることを知り、沢田は「もう、いい…」と言う。娘にまで害が及ばぬよう、沢田は雄大が娘を預けた施設に、娘を引き取りには行かなかった。
一方、雄大は炭鉱で働き、そこで事故に巻き込まれて死亡した鳴海鉄也を名乗って過去を捨てる。鉄也の息子は、再び沢田の娘を預けた施設に預けた。その息子と沢田の娘は、その後結婚することになる。2人の間に生まれたのが未来だった。沢田は、実の娘を殺害することなどできなかった。2人は水原刑事によって救出されていた。
関口二郎が現れ、沢田はなおも「お金を渡してください」と言う。だが、沢田が軍艦島にやってきていること、沢田の指紋がついた五百円札、沢田や竜の血液が付着した紙幣、沢田の記した3億円事件の計画書など、様々な証拠が残されていた。
沢田は、「なんとでも言い逃れできる。二郎、撃て」と命じるが、鈴木は「あんた、俺を育てて幸せだったのかよ?」と質問する。沢田は答えられず、鈴木は「それを答えられない時点で、あんたは終わってるよ…俺は幸せだったよ」と言って笑い、自らの命を絶つ。
沢田はかつて、「軍艦島は国に捨てられるだけだ…俺を信じてついてこい」と言った。その言葉を信じ、雄大はついていった。「だが、変えたのは人の人生ばかりだ」と言う。沢田は、「3億円事件は失敗だった…でも、俺は今の職務を何よりも大事だと思っている。俺は、この国を外からの都合で変えられない、強い国に変えたいと思ってきた。そう思った瞬間から、自分の感情は全て殺し、生きてきたんだ」と言う。
「だけど、俺の故郷はここだ。そう分かったんだ…せめて、この島で死なせてくれ」と言う沢田に対し、雄大は「死ぬな!だったら、真実を語ってくれ」と言う。雄大の説得により、沢田は生きて真相を明かすことを選んだ。
雄大は大和に、「俺はここに残る。…沢田慎之介が全てを語り、罪を償うまでここにいる」と言う。「その時、その時でいい顔をして、それらしく振る舞う。息子のお前にまで、自分の顔を隠して…まるで俺の人生は、モンタージュ写真のようになってしまった」と、3億円事件に関わったことを後悔する。
雄大は、息子・大和に「自分の人生を生きて欲しい」と伝える。そんな父に大和は、「俺の人生は、俺に任せろ」と言い、強い意思を持ってこれからは生きていくことを決意する。そして、響子から預かった和子のカメラを手渡す。雄大は、万感の思いを持ちながら、そのカメラを見つめていた。
雄大は、1人残った軍艦島で旧紙幣を燃やしていた。その様子を遠ざかる船に乗り、鈴木は「弔っているんだ、3億円事件に散った人たちのことを」とつぶやく。雄大は、島から立ち上る煙を見て、未来の手をとり、互いに見つめ合うのだった。