「盲目のヨシノリ先生 光を失って心が見えた」あらすじ・ネタバレ

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簡単なあらすじ

1) 中学教師・新井ヨシノリ(加藤シゲアキ)は、教師であることを「天職」と考えていた。そんな彼は妻・真弓(沢尻エリカ)と職場結婚し、3人の子供に恵まれていた。公私共に幸せな日々を送る中、彼は右目の網膜剥離で視力を失ってしまう。

2) 手術を受けるが、右目の視力が回復することはなかった。そして、ついには右目を失明してしまう。教師を続けていたが、部活指導もできないことから、校長に退職を勧告されてしまう。結果、ヨシノリは養護学校への異動を命じられてしまう。

3) いつか中学教師に復帰してやろうと考えていたヨシノリだったが、左目も網膜剥離となり、ついに両目を失明してしまう。自宅に引きこもるようになるが、教え子・緒ノ崎快(小瀧望)が訪ねてきたことや、弱視で高校教師として勤務する宮城道雄(若林正恭)との出会いにより、リハビリを行って教師に復帰することを目指す。

4) 厳しいリハビリを終え、点字も習得した。盲導犬・クロードを迎え、彼は養護学校へのリハビリ通勤を行うようになる。大学時代の先輩・青井修平(小泉孝太郎)は県庁に勤務しており、青井は町長らに働きかける。結果、ヨシノリはついに中学校の教師として、教壇に立つことができるようになったのだった。

起:ヨシノリの変貌

緒ノ崎快(小瀧望)は、自分の子が生まれ、喜び勇んで病院に向かう。我が子を連れて緒ノ崎は、埼玉県に帰省する。そして、恩師・新井ヨシノリ(加藤シゲアキ)のことを思い出すのだった。

ヨシノリは、「先生のことを忘れてしまうかもしれないが、節目節目で思い出すこともある。そんな時、いつでも会いに来いよ。先生、いつでも出迎えてやるからな」とかつて言っていた。そのこともあり、緒ノ崎はヨシノリに会いに行く。

緒ノ崎は、出迎えてくれた少女の落としたハンカチが血だらけであったことに気づき、心配になる。家の壁は穴だらけとなり、床にはガラス片が飛び散っていた。その先にいたヨシノリは心を閉ざし、明るかった教師時代の面影はなかった。深い、深い闇のどん底に彼は沈んでしまっていた。

承:失明

8年前、ヨシノリは玉田川中学校の国語教師として働いていた。そこで、音楽教師・真弓(沢尻エリカ)と出会ったのだった。2人は結婚し、3人の子供ができた。お互いに助け合い、共働きを続けていた。

ヨシノリはサッカー部の顧問をしており、練習中に「虫が飛んでいる」と感じる、飛蚊症の症状が見られるようになっていた。さらに、朝起きると、右目が見えなくなっていた。

病院を受診すると、ヨシノリは「しばらく、学校を休まなきゃならない。…網膜剥離だって」と真弓に伝える。「すぐに手術しなければならない。増殖性とかっていって(増殖性硝子体網膜症)、難しいんだって」と明かす。

ヨシノリは緊急手術を受ける。2時間の手術を終え、その後、通院することになった。視力が戻ると思いきや、右目の視界は歪んだままだった。

右目が見づらい状況ながら、ヨシノリは授業を続けていた。ようやくその視界に慣れてきた頃、右目の網膜剥離が再発。手術を繰り返す中、ついに失明してしまう。

校長は、「サッカー部の顧問もできない。部活の顧問もできない教師は、役に立たないと保護者にも言われる」などと言い、退職を勧告されてしまう。ヨシノリは退職し、養護学校への異動を命じられる。

ヨシノリは、いら立ち紛れに壁を殴りつけ、穴を開けて荒れていた。「元の居場所に戻ってやる」とヨシノリは思っていた。そんな彼に、父・則安(橋爪功)は「意地になっているだけではないか?」と問いかける。

ヨシノリは、左目も網膜剥離になる可能性におびえていた。そんな彼に、真弓は「私がいる。子供たちだっている。お父さんも、お母さんもみんなついてる。あなた1人じゃないのよ」と勇気づけるのだった。ヨシノリは、その日から子供の顔を目に焼き付けるかのように、寝顔を見つめていた。

ある朝、恐れていたことが起きる。目を覚ますと、左目も見えなくなっていたのだった。難治性の網膜剥離を起こし、再び手術が繰り返された。わずかばかりの視野で、ぼんやりとしか見えず、我が子の顔も輪郭がわずかばかりに分かる程度だった。

子供のピアノ発表会の写真を渡されても、そこに何が映っているのか分からず、ヨシノリはショックを受ける。母・洋子が主治医に、「私の目をあの子にやってください」と泣きながら頼んでいる様子を聞いてしまい、ヨシノリはさらにショックを受ける。

目を覚ますと、ついにヨシノリは完全に失明してしまう。「見えない、見えない…」とヨシノリは混乱し、真弓の制止を振り切って外に出てしまう。悲しみと絶望の中、ヨシノリは絶叫するのだった。

ヨシノリは、主治医に「これ以上、お力になれません。申し訳ありません、先生」と言われる。「先生」と呼ばれ、ヨシノリは「僕はもう、先生なんかではありません」とつぶやく。

ヨシノリは引きこもり、真弓に「お前は働けていいな。目が見えていいな…」などと言う。無気力に過ごし、家族と食事をとることもしなかった。献身的に支える真弓も、どうすべきか悩んでいた。ヨシノリは、真弓と会話もしなくなってしまった。

転:再起

娘・リナと家で留守番をする中、ヨシノリは麦茶を飲もうとする。冷蔵庫から瓶を取り出そうとする中、リナは麦茶を代わりに淹れる。だが、ヨシノリはコップを落としてしまい、割ってしまう。ガラス片で手を切り、ヨシノリはたまらず自室に引きこもる。そんな中、教え子の緒ノ崎がやってきたのだった。

ヨシノリは、声で緒ノ崎のことが分かった。「ヨシノリ先生」と呼ぶ緒ノ崎に、「俺は、もう先生なんかじゃないんだ。ごめんな、緒ノ崎…」とヨシノリは謝る。

真弓は、ヨシノリに「いつまでそうしてるの?この屍。せっかく教え子が来てくれたのに、あの態度はなに?結婚して子供を連れてきてくれたのに、おめでとうもいわず…ごめんなって。あなたは、何も悪いことしてない。謝ることなんかない。教え子の前では、堂々としてよ」と叱咤する。

さらに、「しっかりしてよ。あなたは、プロポーズした時に、教師は天職だって言ったじゃない。教え子の前では、教師でいてよ。緒ノ崎君に謝って欲しくなかった!」と言う。

ヨシノリは、「目の見えるお前に何が分かる!」と言う。だが、真弓はさらに「そんな生き方、恥ずかしくないの?」と言う。「死んだ方が楽だ」と言うヨシノリに、真弓は「私や子供を残して死ぬなんて、楽になるなんて許さない。死ぬなら、一緒に死ぬわよ」と応じる。

ヨシノリは、「目が見えなくなるというのは、ずっと闇の中にいるのと同じなんだ。手足も失った感覚になる」と言う。そんな彼に、真弓は「あなたは、心まで失ってしまったわ」と言い、その言葉にヨシノリは激昂する。

そんな時、ヨシノリの父・則安がやってきた。ヨシノリが久しぶりに反応を見せ、反論したことについて、真弓は「ケンカできる日が来たんです。ここからです。ここからが始まりです」と則安に言う。

ヨシノリは、娘の弾く『遠き山に日は落ちて』を聴く。その曲は、真弓がかつて弾いていた曲だった。その曲を、娘が弾けるようになっていたことにヨシノリは驚く。

真弓は、ヨシノリを連れて知人の経営する鍼灸院に連れていく。その鍼灸院は、夫婦ともに目が見えなかった。夫婦は、「ヨシノリさん、あなたはまだ若い。きっとなんとかなる」と言い、新たな道は開かれるのだと勇気づける。

ヨシノリは、プロポーズのことを思い出す。真弓はその時、「一生懸命に先生をやってるあなたが好き」と言ったのだった。だが、目が見えなくなった今、ヨシノリは「新たな道…教師には戻れないっていうことだよな。でも、俺は先生をやっていたあの時に戻れなければ、心は取り戻せない…教師に戻りたかったんだ。あの場所に、戻りたかったんだ」と、正直な気持ちを打ち明ける。

そんな中、真弓は埼玉県庁に勤務する、ヨシノリの大学時代の先輩・青井修平(小泉孝太郎)に相談する。青井は、ヨシノリに電話をして、ある人物に会うように言う。ヨシノリは断ろうとするが、弱視の・宮城道雄(若林正恭)が自宅にやってくる。

宮城は、弱視ながら高校教師をしているのだという。「また教師になれるかもしれない」と、ヨシノリはわずかながらの希望を抱く。彼は、パソコンに、音声ガイドをしてくれるソフトをインストールする。そして、宮城は視力にハンディキャップを持ちながらも、教師をどのように行っているのかなどについてヨシノリに語って聴かせる。

宮城は、「私達のようなハンディキャップのある教師が、生徒を教えることの意義は大きいと思います」とヨシノリに伝える。その言葉に奮起し、ヨシノリはリハビリを行うことを決意する。

結:教師への復帰

復職には、自力で通勤できることが必要であり、リハビリする支援員・榊京太(小山慶一郎)の厳しい指導の下、リハビリを行う。街中を白杖で歩く練習を行い、また、点字を習得する。1年にも及ぶリハビリが行われ、クロードという盲導犬と一緒に暮らすようになる。

ヨシノリは、教壇に戻るため、必死になっていた。だが、真弓は、「ヨシノリさんが教師に戻れなくなってもいい。それより、ヨシノリさんが心を失って、人が変わってしまったことが悲しかった。今、ゴールを目指して一生懸命、毎日生きてるヨシノリさんに戻ってくれて、嬉しかったの」と母・弓子(風吹ジュン)に本音を明かす。弓子は、「ヨシノリさんの願いが叶うといいわね。応援してるわ」と言う。

ヨシノリは、ついにクロードを連れて街中を歩くことができるようになり、リハビリや盲導犬を扱う研修も無事に修了するのだった。クロードを連れてヨシノリは家に帰る。

その頃、青井は町の教育委員会に働きかけていた。「まずは復職訓練を」と言い、青井は了承を得る。養護学校で復職訓練を行うことになったが、片道2時間半の道のりを毎日、家族が付きそう必要があった。則安は、付き添い役を買って出る。

雨の日も風の日も、則安は付き添き、復職訓練が1年続いた。だが、青井の交渉虚しく、「県の教育委員会は、話も聞いてくれない…」状態であった。青井はヨシノリに「すまない」と謝罪するが、ヨシノリは「いいんですよ。本当にありがとうございました」と言う。

青井は、「教壇に立つことを諦めるのか?」と言うが、ヨシノリは「諦めたら、それで終わりです。でも、これ以上、先輩に迷惑をかけるわけには…」と言う。そんなヨシノリに、青井は「お前を絶対に教壇に再び立たせてみせる」と言うのだった。

そんな中、ヨシノリは緒ノ崎と再び会う。緒ノ崎は、「希望は、愛でできている」という、かつてヨシノリが話していた言葉について語る。緒ノ崎は、「目には見えないものを、ヨシノリ先生は、たくさん教えてくれました。いつか、自分の息子も先生に教えていただきたいです」と言うのだった。

ヨシノリの講演会が開かれることになる。それは、青井や有志が企画したものであり、小さいながら講演会でヨシノリは、「いつか、中学校の教壇に立つのが夢です。それに向かって歩いて行きたいと思います」と語る。

そんな中、武甲町・大澤(中村梅雀)町長が、青井に「話を聞きたい」と言う。全盲の教師を、教壇に立たせることができないか、と町長は考えていたのだった。町長は、「なぜ、元いた場所、教師という職業にこだわっているんですか?」とヨシノリに訊ねる。

「父に、意地になっているだけだと言われたことがありました。最初はそうでも、少しずつ現実を受け入れ、運命を受け入れ、今はごく自然な気持ちで元いた場所に戻りたいと思っています…私は、教師の仕事が好きなんです」と言う。

町長は、妻・慶子(神保美喜)が講演を聴いて感動したことから、「ヨシノリ先生の生き方は、子供たちのためになる」と考えるようになったのだという。ついに、ヨシノリは再び中学校の教壇に立つことができるようになったのだった。

そこから、ヨシノリは授業の準備を入念に行い、ついに復職初日を迎える。真弓や子供たちに見送られ、ヨシノリはクロードとともに中学校へと向かう。両親もまた、そんなヨシノリの姿を嬉しそうに見ていた。

生徒たちも、全盲の教師に戸惑う中、ヨシノリは教壇に立つ。「何よりはじめに、大事なことを伝えておきます。先生は、メガネをかけても黒板の字どころか、何も見えません。メガネの代わりに、相棒が必要です。相棒の盲導犬・クロードが必要なんです。彼は仕事で来ています。ですから、クロードには触れないでください」と言う。

机に引っかかり、つまずきそうになったところで、ヨシノリは再び緊張してしまう。だがそこで、真弓の「これまで、支えてくれた多くの人がいる。…あなた、いつか言っていたじゃない。自分のような教師が、生徒たちには必要になるって。それを証明してみせて」という言葉を思い出し、再び落ち着きを取り戻す。

自己紹介を無事に終え、生徒たちはヨシノリを受け入れるのだった。ヨシノリは、ハンディキャップを乗り越え、ついに教師として復帰したのだった。

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