大阪真(杉本哲太)は、運転手の男・マキタともう一人の仲間とともに銀行強盗を行う。工事の作業員を装って、トイレの窓からビルに侵入し、大阪はそこで待機していると、運転手の男からポケベルで「105216」と送られてくる。
大阪はトイレからペンライトを使って、マキタに合図を送って位置を知らせる。ポケベルの数字は、「どこにいる」という意味だと大阪は仲間に説明する。その他、「889-46(早くしろ)」「49-06(至急出ろ)」などが暗号としてあるのだという。
仲間は「遅れてますよ。今のポケベルは文字が送れますよ」と言うのだが、大阪は「これなら警察に押収されてもバレない、裁判でも証拠として採用されない」と言うのだった。また、「このポケベルを持ってから、ツキが回ってきた」と言い、大阪はニヤリと笑う。
「6O」とメッセージが送られてくる。それは、「GO」という意味であり、2人は銀行へと向かう。2人は拳銃を銀行員に向け、「1億を古券で出せ」と要求する。出された現金を2人はバッグに詰める。
そんな中、想定より早く「889-46(早くしろ)」というメッセージが送られてくる。女性行員の1人が通報ボタンを押していたのだった。シャッターを開けさせ、そこから出ようとするが、「49-06(至急出ろ)」のメッセージが送られてくる。表ではパトカーが到着していた。
そこで大阪は、裏口から出る。だがそこに女性行員がやってきてしまう。顔を見られた大阪は、ナイフを取り出し、女性行員の腹部を刺す。返り血を浴び、言い訳ができない状況でパトカーが近づいてきて、大阪はとっさにバッグを近くのゴミ箱に入れ、運転手のマキタが回収する。やってきた警察官には発見者を装って女性を抱きかかえるのだった。
刑事(大杉漣)が、大阪を取り調べる。大阪はあくまでも発見者であると言い張るが、刑事は大阪が強盗犯だと睨んでいた。大阪は供述の疑問点を厳しく追求され、追い詰められる。
「たまたま近くを通りかかったら、女が死んでいた」と大阪が言うと、刑事は「なぜ女が死んでると?」と言う。「あの女は、死んでいない」と刑事は言い、大阪は動揺する。警察官がやってくる直前、大阪は脈をとって調べていたのだった。だが、刑事は救急車の中で蘇生されたと言うのだった。
女性行員は集中治療室に今いるのだという。大阪は「そんなはずはない、あの女は死んだはずだ…」と思い、不安な時間を過ごす。そんな中、刑事は病院からの電話を受け、「今、連絡があった。1時間もあれば女の意識が戻る。病院にあなたの写真を届けておきましょう」と言うのだった。
そんな中、ポケベルの音が鳴る。そこには、「0310-345」という数字が並んでいた。刑事はポケベルを取り上げ、仲間が電話番号を知らせてきたと思う。だが、そのような電話番号は存在せず、刑事は大阪にポケベルを見せて「この暗号の意味を教えろ!」と迫る。
だが、そのポケベルを見た大阪は、暗号の意味をそこで解読し、態度を豹変させる。刑事は「女の意識が戻った。今、お前の写真を見せている」と言うのだが、「それはよかった。回復したならとても嬉しい。彼女、意識戻ったんでしょ?彼女に聞いてください。なんて言ってるんですか?…今から病院行ってもいいですよ」と迫る。
大阪は釈放される。「0310-345」という暗号は、反転させると「SHE DIED(彼女は死んだ)」となることに大阪は気づいたのだった。
マキタが迎えにきて、2人は高笑いをする。マキタは「あの女がもう喋れねぇのは知っていたが、どうやって知らせようか焦ったよ」と言う。そして、「ポケベルにメッセージは送っていない」と言う。
「考えていたが、暗号を思いつかなかった。だから表でじっと待っていた」とマキタが言ったところで、再びポケベルが鳴る。そこには、「7734-09」というメッセージが表示されていた。
そのメッセージは、再び反転すると「GO heLL」となり、「地獄へ行け」という意味だと分かったところで、大阪とマキタの乗っていたバンのタイヤがパンクし、埠頭に置かれたクレーンに突っ込んでしまう。
大阪は鉄骨に刺されて即死し、マキタはまだ生きていたが、バンが爆発して死亡する。大阪に刺殺された女性行員の死体は遺体安置室に置かれていたが、その左手の薬指がわずかに動くのだった。
黒煙が上がる曇天の空に、「女は死んでいない」のタイトルテロップが表示される。
原作:渡辺浩弐「0310-345の謎」(『マザー・ハッカー』所収)
脚本・演出:落合正幸