簡単なあらすじ
1) 保険会社の営業マン・谷中敏夫(石井正則)は、医師から余命半年の末期癌と診断される。そんな彼は、たまたま訪れた家で、山本幸一(十貫寺梅軒)という男性が、首吊り自殺をしようとしていたのを止める。
2) 山本には娘がいたが、田島という男に貢いだ末、横領事件を起こして自殺してしまったのだという。その田島に偶然遭遇し、山本は田島に復讐を遂げようとしたが、できなかった。そのため、自殺しようとしたのだった。
3) 3週間後、山本は後頭部を殴打されて死亡していた。仏壇には、谷中の名刺があり、さらには山本が保険に入り、谷中が受け取り人になっていたため、警察は谷中を疑う。だが、谷中にはアリバイがあった。
4) 谷中は、田島を拉致して、山本の娘が死んだ崖につれていく。そこで、自らを殺害させ、田島を刑務所に入れるという計画を立てていたのだった。ところが、右京がその場に現れ、計画を阻止する。田島は、山本に脅迫されており、山本を殺害した。そのことを自供して逮捕される。谷中は、「俺は何もしていない…」と感じていたが、田島は結果として逮捕された。谷中もまた逮捕されるも、医師から「数値が改善している」と言われ、完治の可能性もあるかもしれない、と言われて驚く。
詳細なあらすじ
保険会社の営業マン・谷中敏夫(石井正則)は、医師から余命半年の末期癌と診断される。両親もすでに他界し、恋人もいない谷中は、医師から「やりたいことをやってはどうか」と提案される。
病院からの帰り道、上司からの電話で契約をとれていないことを叱責された谷中は、「目の前の家に飛び込み営業をかけろ」と言う。すると、山本幸一(十貫寺梅軒)という63歳の男性が、首吊り自殺をしようとしていた。
谷中は、山本の自殺を止める。山本には娘がいたが、殺されてしまったのだという。その犯人に出くわし、復讐を果たそうとしたが、逡巡している内に逃げられてしまった。それで死のうと思ったのだという。
三週間後、山本が自室で後頭部を殴られて殺害されていた。現場には、冠城亘(反町隆史)がいた。亘は、「右京さんの下で働いても、勉強にならない。一度、勉強させてほしい」と、伊丹憲一(川原和久)刑事に取り入ったのだった。
青木年男(浅利陽介)は、事件について杉下右京(水谷豊)に話す。右京は、被害者の仏壇に、谷中の名刺が置いてあったことに気づき、谷中の勤務先の保険会社を訪ねる。右京は、「トラブルのようなものはありましたか?」と訊ね、谷中は山本が死亡したことに「え、そんな…」と驚いていた様子だった。
そこに伊丹たちが乗り込んできて、谷中に任意同行を求める。亘は、「山本が最近、谷中の勧めで保険に入り、受取人が谷中になっていたため」であると事情を話す。谷中は、「営業に行ったところ、不憫に思った山本さんが保険に入ってくれた。身寄りもなく、受け取り人がいなかったため、僕にした」と話す。
その後、谷中にアリバイがあることが判明し、解放する。一方、右京は「山本さんの家に行き、梁に何かを引っ掛けたような2本の痕があった」ことから、山本は自殺を図ろうとしていたが、谷中が止めた、と推理する。
右京は、山本の娘が10年前、田島タカシ(渋江譲二)という男に貢ぐため、横領事件を起こしたことを知る。娘は、その事件をきっかけに自殺したとされていた。
亘は、田島が勤めていたホストクラブを突き止める。亘と右京は、そのホストクラブに向かう。そこで、谷中もまた、田島の田島のことを聞きにきたのだという。そこで、情報を得るため、シャンパンタワーを行い、500万円もの散財を行った。
店長は、つてを辿って、田島の居場所を教えたのだという。また、田島の背中には入れ墨が入っており、「あの人、ヤクザでしょ?」と店長は話す。
田島は、会社社長の娘と結婚し、悠々自適な生活を送っていた。山本の娘については、「もう関係ない。勝手に貢いで、勝手に死んだだけ」と言い放つ。
右京は、田島の入れ墨を入れた彫師のもとへ向かう。田島は、「本来数ヶ月かかる入れ墨を、1週間で入れてくれ」と頼んだのだという。また、田島は銀星会という暴力団組織を訪れ、「拳銃を売ってください」と言い、購入したのだった。入れ墨は、「カタギの者ではない」と示すために入れたのだった。
右京は、谷中の主治医の反応から、谷中が余命いくばくもないと察する。そして、谷中は田島を処刑するために拳銃を用意したのではないか、と考える。
田島のもとに、亘が訪れる。そこで、谷中が保険の説明のため、5日前にやってきたと田島は語る。亘は、「なぜその時に殺害しなかったのか」と不思議に思う。
田島は、妻の写真と、「さよならを言え」とのメッセージを谷中から受ける。田島は、妻に電話をかける。すると、彼女は、谷中から喫茶店で保険の説明を受けているのだという。亘は、妻を保護するために喫茶店へと向かう。
だが、谷中は妻に保険の説明をする途中で「トイレに行きます」と中座し、帰ってこなかった。谷中は、亘がいることに気づき、亘を妻のもとへ向かわせるため、計画を変更したのだった。亘がいなくなった後、谷中は田島を拳銃で脅して拉致した。
谷中は、田島を山本の娘が自殺した崖へと連れていく。そこで、谷中は田島にナイフを持たせる。
右京はその場に現れ、「あなたは、山本さんの復讐を果たそうとしている。でも、山本さんとは面識もなかったわけでしょ?」と言う。谷中は、「僕が田島を殺害すれば、人のために生きていると感じられる」と言う。
谷中は、山本に「僕がやりますよ」と誓った。その感謝のあかしのため、山本は保険に入ったのだった。
右京は、谷中が田島に自分を殺させようとしていると指摘する。田島は、防犯カメラの前で、ハンカチで拳銃を隠して脅していた。一方、田島はナイフを持っている。しかもそれは、田島の家から持ち出されたものだった。そのナイフで自らを刺殺させ、田島を刑務所に入れようと考えたのだった。
そこで田島は、山本に「娘のことを妻にバラされたくなければ、カネをよこせ」と脅されていたのだった。田島は、何度も山本の家に呼び出され、カネを渡さざるを得なかった。だが、それに耐えきれなくなった田島は、山本を殺害したのだった。そのことを田島は認める。
谷中は、すでに拳銃を捨てており、ハンカチの下で拳銃を持っているかのように見せかけていただけだった。
計画を阻止された谷中は、崖から飛び下りようとする。だが、右京は「ここであなたが死ぬことで、この場所を愛する人たちを傷つけることになる。ここで死なないということだけでも、あなたが生きたあかしになるのではないでしょうか」と説得し、谷中は死を選ぶことをやめる。
その後、谷中は田島とともに逮捕されるが、医師からは「数値が改善している。完治もありうるかもしれない」と言われ、驚く。