簡単なあらすじ
1) 産廃場で、光田廣(樋渡真司)という男性の遺体が発見される。光田は、組対五課長・角田六郎(山西惇)の中学時代の同級生だった。そして、光田は妻のもとから去り、家出人として届け出がされていた人物だった。
2) 被疑者として、同級生の仁藤(相島一之)が浮上し、仁藤は犯行を認める。だが、杉下右京(水谷豊)は彼が犯人ではない、と考えていた。仁藤は、恩師の娘で光田の妻のまどかが犯人であると考え、彼女を庇っていた。だが、まどかも犯人ではなかった。真犯人は、近隣住民の喫茶店経営の男だった。彼は、産廃場を監視する近隣住民の個人情報を産廃業者に売っていた。その現場近くで夜空の写真を撮っていた光田に犯人は掴みかかり、揉み合いとなる中で光田を殺害したのだった。
3) 光田は、中学の時に火災現場の写真を撮って写真コンクールで大賞をとった。ところが、その写真がもとで、仁藤の父親は保険金目的で放火したことが暴かれ、仁藤一家は崩壊してしまったのだった。それ以来、光田は写真を撮ることをやめた。
4) だが、光田が撮ってコンクールに応募した写真には、秘密があった。光田は、写真に迫力を出すため、重ね撮りして撮っていたのだった。不正によって撮った写真でコンクールに優勝したこと、さらには仁藤一家を崩壊させたこと、これらの「罪」を知る恩師(光田は、恩師の妻と結婚し、恩師と同居していた)と一緒に暮らしていることに耐えかね、光田は妻のもとを去ったのだった。
詳細なあらすじ
産廃場で、光田廣(樋渡真司)という男性の遺体が発見される。光田は、鈍器のようなもので殴られ、地面の石に頭を打ち付けて死亡していた。光田は、組対五課長・角田六郎(山西惇)の中学時代の同級生だった。角田は、光田を「天文」というあだ名で呼んでいた。
光田は、恩師・小林(柴田次郎)の妻と結婚したが、失踪して家出人として届け出がされていた。角田は、「なんで、天文は死んだんだ?」と、杉下右京(水谷豊)に捜査を依頼する。
光田は、産廃場で働いていた。地域住民は、産廃場を監視しており、光田が「作業員を監督する仁藤(相島一之)という男から暴力を受け、金を脅し取られていた」と話を行う。住民の一人は、「光田という男は、ただならぬ憎悪を抱いているようだった」と言う。
仁藤は、任意同行で事情聴取を行う。伊丹憲一(川原和久)刑事は、仁藤があちこちから借金を行っている、と指摘する。
光田は、近所の火災現場を撮影して写真コンクールで大賞をとった。写真には、呆然と火災現場を見ていた人物が写っているが、その人物こそが、保険金目当てで自分の工場に火を放った、仁藤の父親だった。その後、仁藤の父親は逮捕された。光田は、仁藤一家を破滅させたことに責任を感じていたという。
角田は、黙秘する光田に話をする。「あとぴんは今、昏睡状態で。誰が誰であるかも分かっちゃいないだろうな」と言う。
仁藤は、自供を行う。だが、角田は「アイツは犯人ではない」と言い、右京もそれに同意する。しかも、散々、取り調べを引き伸ばした後、突然供述したことに疑問を持つ。
右京は、銀塩カメラで光田が撮影を行っていた形跡があったのだが、そのカメラが現場から消えていた、と指摘する。角田は、光田以外の写真部のメンバーを集める。メンバーの中のカメラ店を営む人物は、仁藤が銀塩カメラを買いにきたのだと証言する。
光田は、細かい指示を書いたメモや購入代金を仁藤に渡し、代わりにカメラ購入を依頼していた。「写真が撮りたい」と光田は言い、力を貸してほしい、と仁藤は頼まれていたのだった。光田と仁藤は、憎み合ってはいなかった。
右京は、「あとぴんに会いに行く必要がある」と言う。だが、光田の娘は、「父が家を出た日、学校から帰ったら、父が祖父に刃物を向けていた」と明かす。「私があの部屋に入らなかったら、笑い話になってたかもしれない…私の結婚式に出ていたかもしれません」と言う。
右京は、あとぴんの娘で光田の妻・まどかに会いに行き、そこで話を聞くのだった。
仁藤は事件前、まどかに会いに行った。「あいつは変わった。会ってやってほしい」と言うが、まどかは頑な態度を崩そうとはしなかった。そこで仁藤は、「アイツ、今はカメラを持ってるんだ」と明かす。
仁藤の一家を破滅させてしまったこともあり、自責の念からカメラを持たなくなった光田が、再び写真を撮っていることに、まどかは驚く。その後、彼女は、産廃場に向かった。
仁藤は、夜間に産廃場へ行くと、まどかとすれ違った。その後、光田の遺体を発見したため、まどかが犯人であると仁藤は思ったのだった。だが、まどかは夜空の写真を撮る光田の姿を見ただけで、声をかけずに立ち去ったのだった。嬉々として写真を撮る夫を見て、「いつか、自分たちに会いに来るだろう」と思ったのだった。
仁藤は、「あの放火は、俺がやったんだ。家族が生き残るには、アレしかなかった…でも、親父は火を手にしたまま動けなかった。だから、俺がかわりに…親父は、やったのは俺だと庇ってくれた。だから、親父を追い詰めたのも、お袋を殺したのも俺だ。光田のせいじゃねぇ。でも、アイツが賞品を返して、カメラもやめたと聞いて…」と言い、右京は「贖罪ですか」と言葉をつぐ。
あとぴんは、仁藤の罪を知っていた。その上で「一生、罪を背負え」と言ったのだった。仁藤は、このようなこともあり、あとぴんの娘・まどかを庇ったのだった。
光田を殺害したのは、近隣に住む喫茶店の店主だった。彼は、古物商に銀塩カメラを売っており、足がついたのだった。
困窮する店主は、産廃場を監視する地域住民の個人情報を売っていた。その取り引きを産廃場で行っており、夜空の写真を撮っていた光田に、取り引き現場を撮っていると勘違いした店主は、カメラと取り上げ、揉み合いとなる内に殴りつけたのだった。
角田は、光田最期の一枚をあとぴんに見せようと走ったが、間に合わなかった。すでにあとぴんは息を引き取っていた。
角田は、光田が美しい夜空の写真を撮り、あとぴんに見せて「生き直そう」としていたのだ、と言う。「50にもなって、生き直そうなんて…」と言いながら、角田はむせび泣く。
右京は、光田が撮ったフィルムを見て、「賞を撮った写真は、重ね撮りしたもの」であると指摘する。不正によって撮影された写真が賞をとったこともあり、そのことは賞を返上する理由の一つとなっていたのだった。
あとぴんは、光田が重ね撮りによって写真を撮ったことを知っていた。そして、その写真が仁藤の一家を崩壊させてしまったことも。自分の「罪」を知る人物が身近にいたことで、光田は追い詰められ、家を出たのだった。
右京は、光田以外の写真部仲間で集まった際、フィルムを見たことで、光田が家を出た理由を知ったのではないか、という推理を語る。そのことを知ったため、角田は光田に「あとぴんが昏睡状態で、娘が結婚することになった」と教え、家に戻るように話をしたのではないか、と右京は言うが、角田は「そんな頭が俺にあるか」と否定するのだった。