簡単なあらすじ
1) 郊外の廃倉庫で、白骨化した遺体が発見された。その遺体の傍らには、告発文が置かれており、そこには「大手米穀販売会社・タキガワが、主食用の米に加工用米を混ぜて販売している」と書かれていた。
2) タキガワの社長・多岐川は否定するが、マスコミはその偽装を大々的に報じる。そんな中、遺体の身元が判明する。その男性は、前科のある蜂矢克己(稲健二)という中年男性であった。蜂矢は、タキガワの元社員であり、協力雇用主制度(元受刑者を受け入れる制度)を利用して入社していた。
3) 一方、蜂矢と同時期にタキガワを退社している亀井雄吉(笹野高史)がいた。彼は、無銭飲食で逮捕され、服役していた。そんな亀井は出所し、杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)は話を聞きに行く。
4) 蜂矢は、タキガワの不正に気づき、多岐川社長にそのことを指摘しに行った。ところが、社長は「俺と前科者の言葉、どっちを信用する?」「お前が加工米を持ち出したことを、警察に通報してやろうか」などと開き直った。その言葉に傷ついた蜂矢は、自殺してしまったのだった。
5) 蜂矢の死を無駄にしたくなかった亀井は、蜂矢を白骨化させ、死因を分からなくさせた。その上で、告発を行おうとして殺害されたと見せかけたのだった。多岐川社長の出したゴミに、蜂矢の財布が入れられていたかのように偽装したが、そこに亀井家の家業である旋盤の粉が付着しており、亀井の偽装工作が行われたと判明する。亀井は「蜂矢を無駄死にさせたくなかった」と自供するのだった。
詳細なあらすじ
冠城亘(反町隆史)は、杉下右京(水谷豊)とレストランで食事を行っていた。亘は、「刑事という職業に、限界を感じています。とにかく、食が貧しくて…」と愚痴をこぼす。亘は、そのレストラン・トラットリア道上のオーナーシェフ・しおり(入山法子)を、右京に紹介する。
郊外の廃倉庫で、白骨化した遺体が発見された。捜査一課に捜査要請が入るが、「骨しかなくて、それだけでは調べようがない」ということがあり、伊丹憲一(川原和久)刑事は、特命係が捜査を押しつける。
廃倉庫に、右京と亘がやってくる。1年以上が経過した遺体であり、男性であると考えられた。工事・改修が行われようとしたところ、白骨遺体が発見されたのだった。その遺体の近くには、米の入った袋と紙片が置かれていた。
紙片には、「告発状」と書かれており、「大手米穀販売会社・タキガワが、主食用の米に加工用米を混ぜて販売している」と書かれていた。
骨髄から摘出したDNAの型から、遺体は、前科のある蜂矢克己(稲健二)という中年男性と判明する。蜂矢は、3年の服役の後、協力雇用主制度を利用して、タキガワに再就職していた。協力雇用主制度とは、元受刑者の社会復帰を促すため、彼らを雇用した企業に補助金が支給される仕組みだった。
タキガワ側は、告発の内容を真っ向から否定する。「抜き打ちテストを受け、食品Gメンのお墨付きをもらってる」と証拠を提示する。だが、そのテストは1ヶ月前に行われたものであり、右京は「1年前のデータはありますか?」と言うが、夜陰は言葉を濁す。
タキガワは、元受刑者が無断欠勤を行い、蜂矢は米を無断で持ち出そうとしていたということもあり、協力雇用主制度による受け入れをやめているのだという。
蜂矢が、タキガワの不正を告発しようとして殺されたのではないか、という疑惑が浮上する中、右京は、タキガワで雇用されていた元受刑者のリストに、蜂矢と同時期に「逮捕による懲戒処分」で退職している人物を発見する。
その人物とは、亀井雄吉(笹野高史)であり、無銭飲食を行って逮捕されていた。彼は、「シャバなんて、楽しいのは最初だけ」と言い、刑務所に舞い戻ったのだった。
青木年男(浅利陽介)は、しおりが食材アドバイザーとしてタキガワの経営にもかかわっていたが、食品偽装疑惑が持ち上がる直前、レストラン経営に専念するようになったことから、「タイミング良すぎますよ。逃げただけなんじゃないですか」と言う。
右京は、再び亀井に接触する。亀井は、タキガワについて「就職してすぐに後悔したね。刑務所と一緒。一般社員と元受刑者は、別々に働いて、食堂なんかも別だった。作業は、米を混ぜてただけ」と言う。
亘は、しおりに会いに行く。しおりは、「不正に関わってはいない」と否定する。
右京は、亀井に再び会う。「蜂矢さんは、真面目な人だった。一生懸命働いて、社員に昇格しようとしていた。でも、結果はどうだい。死んじまった」と亀井は言う。
しおりは、マスコミの前に現れ、告発を行う。彼女は、「良心の呵責を感じ、話をすることにしました」と話す。
多岐川社長の家の近くにあるゴミ捨て場で、蜂矢の財布などの所持品が発見される。近くの防犯カメラ映像で、ゴミ袋が回収されるまで、触れた者は多岐川本人以外にいなかった。
タキガワの工場長は、不正を行っていたことを認める。そして、蜂矢が不正に気づいていたことを明かす。そのことを多岐川社長に告げたのだったが、社長は居直り、「私と前科者のあんたの言葉、どっちを警察は信用する?」と言ったのだった。翌日から、蜂矢は出社しなかったのだという。
多岐川社長は、蜂矢の失踪した日からイタリア旅行に行っていた。さらに、その出張には愛人であるしおりも同行していたのだという。多岐川社長のアリバイは立証されてしまう。
亘は、しおりに「多岐川社長と、不倫関係にあった」ということを認めさせる。だが、しおりは「あの人に、殺人なんかできません…あの人の無実を、証明してください」と言う。
右京は、亀井の家族宅を訪れる。やはり妻子は、亀井のことを許さず、「あの男の居場所は、刑務所にしかない」と言う。亀井の息子は、旋盤工を行っていた。その旋盤の削り粉を持ち帰った右京は、蜂矢の財布に付着した粉とともに、成分を分析させる。結果、その成分は一致した。
そんな中、亀井は再び無銭飲食で逮捕された。右京は、亀井に会いに行く。「今回の罪状は、無銭飲食だけではないですよ」と言う。「僕はあなたが、蜂矢さんの遺体遺棄に関わっていると思っています。それは、蜂矢さんの死を、無駄死ににさせたくなかったからでしょうね」と言う。
蜂矢は、不正を見過ごすことができなかった。だが、多岐川社長は、蜂矢が加工米を持ち帰ろうとした事実について、通報しようとした。必死で更生しようとした蜂矢にとって、そのことは大変なショックであり、蜂矢は自殺してしまったのだった。
その自殺を、他殺に見せかけるため、亀井は1年間かけて白骨化させた。そして、告発により殺害されたと見せかけるため、告発状を置いていたのだった。
ゴミ袋の中身を入れ替え、蜂矢の財布を入れたのもまた、元受刑者だった。その人物も、タキガワに勤務していた人物だった。
亀井は、「もし俺らが告発しても、俺ら前科者の言葉なんか、誰が聞く?家族にすら耳を貸してもらえない。でも、蜂矢の死に顔を見たら、たまらなくなって。いくら前科者だって、あんな死に様で良いわけじゃない」と言い、今回の偽装工作を行ったのだと話す。
右京は、「社会の中で、あなたがた元受刑者が生きていくのは辛いことでしょう。でも、それはあなた方だけでしょうか?家族や、被害者たちも苦しんでいるんです。あなた方は、前科者だからこそ、塀の外で必死に生きなければならないんですよ」と話す。
そして、「今度、シャバに戻ったら、連絡してください。食事くらい付き合いますよ」と言う。しおりは、イタリアに修行に行くのだという。