簡単なあらすじ
1) 画家・三上史郎(斉藤陽一郎)が、歩道橋から転落して死亡する。目撃者の証言から、男2人が揉み合いになった後、三上が転落したことが明らかになる。
2) ピカソの青の時代の作品とされる絵が、磯田オークションに鑑定依頼を出される。その絵は、8年前に古澤画廊に持ち込まれ、鑑定を依頼されていた。だが、その鑑定途中に絵は贋作とすり替えられていた。結果、古澤は弁償金を支払わされることになり、画廊を手放すはめになった。
3) 杉下右京(水谷豊)は、三上が贋作を描き、磯田が本物を売却して利益を得たと考える。古澤と元恋人で磯田の会社に潜り込んだ恋人は結託し、贋作を「本物だ」と言って鑑定を依頼し、磯田に揺さぶりをかけていた。
4) だが、そもそも本物のブルーピカソの絵など存在しなかった。三上が描いた贋作を用意し、古澤画廊に持ち込んだ。そして、贋作にすり替えられた、と勘違いさせて弁償金をせしめたのだった。この事件に関係していたのは、磯田、三上、そして不動産屋の筒井だった。
5) 三上は、かつて自分で描いた贋作が再び現れたため、不安定になった。筒井は、道連れにされてしまうことを恐れ、三上を殺害したのだった。筒井、古澤たちは逮捕されることとなった。
詳細なあらすじ
「磯田オークション」が主催する美術品オークションの会場に、杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)がいた。そこで、話題となっていた三上史郎(斉藤陽一郎)の絵画『流砂』がオークションに掛けられる。
だが、三上本人が乗り込んできて、「300万円?こんな最低の出来の絵にそんなカネを出すな」と言う。三上は、出品を取りやめようとし、ついには絵を床へと投げ捨ててしまう。
三上は、「眠れないんだよ、アレから…なんで今になってあんなものが出てきたんだよ!」とオークション会社の社長・磯田(坂西良太)に動揺して詰め寄る。だが、磯田は落ち着くように言い諭す。
その晩、三上は歩道橋から転落死した。報道では、自殺と他殺の両面から捜査をしているのだという。特命係に、伊丹憲一(川原和久)たち捜査一課の刑事たちが現れる。そこで、伊丹は「三上は、磯田に一物を持っていた」と言う。世間では磯田は三上の生みの親とされていたが、三上は「アイツは単なるブローカー」などと言っていた。
右京と亘は、磯田に会いに行く。そこで、磯田社長と社員の貴和子(森尾由美)が絵の真贋について言い争っている様子だった。
磯田は、「何か質問があれば、彼女にでも聞いてください」と言い、貴和子に話を振る。貴和子と磯田は、「ブルーピカソ」の真贋鑑定で意見が対立しているのだという。
「ブルーピカソ」とは、友人の自殺を目の当たりにしたピカソが、青い絵の具で、暗いタッチの絵ばかりを描いていた。いわゆる「青の時代」と呼ばれる作品群のことである。磯田は、持ち込まれた絵を「ニセモノだ」と言うが、貴和子は本物の可能性が高いと話していたのだという。
貴和子は、シアトルの美術館でキュレーターをしていたのだという。その後、磯田オークションに勤務して半年なのだという。客人がきている、と右京たちの前から離れようとしたところ、右京は、「もしかして、横浜から盗まれたブルーピカソの絵を持ち込んだ人物が来ているんですか?」と言う。
そのブルーピカソの絵は、横浜で発見された絵で、鑑定が行われる寸前に8年前、贋作とすり替えられたのだった。その絵が、磯田オークションに持ち込まれたのだという。
一方、伊丹たちは、タクシーの運転手が夜中、歩道橋で言い争っているのを見かけた、との証言を得る。
貴和子にともなって右京は、中村家という家を訪れる。そこに、ブルーピカソと考えられている絵が飾られていた。中村家では、絵を購入した夫は既に他界しており、妻がその後を継いで鑑定に出したのだった。
鑑定を依頼された「古澤画廊」で、ブルーピカソのすり替え事件が行われた。しかもその画廊で、三上が初個展を開いていたことが明らかとなり、右京は関係が事件と関係があるのではないか、と睨んでいた。
古澤画廊は、事件後にすぐ売却された。弁償金3億円を支払わざるを得なかった。古澤画廊の店主は、売れない画家時代の三上の面倒をみていたのだという。
店主の古澤は、特別養護老人ホームに入所していた。そこで、本物らしきブルーピカソの絵が見つかった、と右京は伝える。「贋作者に心当たりはありませんか?」と訊ね、さらに「当時、あなたの画廊に出入りしていた若い画家の仕業とは思いませんでしたか」と言う。
古澤が贋作に気づいたきっかけは、画布を留める鋲が違っていたことだったという。一部が欠けていた鋲が、欠けていない鋲に変わっていたのだった。古澤は、「贋作は処分しました。本物は誰かの手に渡ったのでしょう」と言う。
磯田は、ブルーピカソ事件の半年後に1億円の資本金で会社を立ち上げた。亘は、「ブルーピカソを三上に贋作を描かせて本物とすり替え、売却。その後、三上を有名画家に押し上げた。三上を恨んだ古澤が殺害した可能性がある」と考える。
右京は、持ち込まれたブルーピカソを見に行く。そこで、画布を留める鋲を確認するが、欠けている様子はなかった。磯田は、贋作だと決めつけ、貴和子に鑑定をやめろ、と迫る。
右京は、絵を手に入れた中村の勤務していた会社を訪れる。そこで確認すると、上海に出張したというのはウソだと判明する。
また、古澤のアリバイは完璧であり、犯行は不可能とかんがえられた。だが、古澤は水曜によくどこかへ外出しているのだという。古澤は、貴和子に会っていた。
古澤と貴和子は、25年前に交際していた。だが、古澤には妻がおり、貴和子は悩んでいた。その相談に乗ってくれたのが中村だったのだという。ブルーピカソ事件が起きたため、貴和子は戻りたいと思ったが、こらえていたのだという。その後、中村の夫が亡くなり、ようやく帰国したところ、古澤の現在の様子を聞かされたのだった。
貴和子は、三上と磯田が贋作とすり替えたのだと考える。さらに、彼女は証拠を集めるため、磯田の会社に潜り込んだ。磯田は三上が描いた贋作を「本物だ」と言い、磯田に揺さぶりをかけたのだった。
貴和子は、「私たちは、三上さんの死に関わっていません。単に、本物のブルーピカソのありかを知りたいだけなんです」と言う。磯田は、犯行時刻にマンションのベランダにいて、目撃者がいたのだった。
右京は、ブルーピカソを再び見て、絵の一部に描かれているタロットカードに着目し、真相に気づく。
磯田社長は行方不明となり、金庫や会社資金がなくなっていた。逃亡を企て、空港で詐欺容疑で逮捕されたのだった。
右京は、古澤と貴和子に「ブルーピカソ」事件の真相を語る。そもそも本物の絵など存在せず、三上が描いた贋作を古澤のもとへ持ち込んだのだった。欠けた鋲を変えたのも、「贋作が贋作にすり替えられるはずがない」という思い込みを助長させるためのものであった。そもそも磯田は、古澤の弁償金目当てでこの計画を思いついたのだった。
だが、三上は「もしかしたら古澤さんは気づいてくれるかもしれない」と思い、「塔」のタロットカードを描いて、古澤に警告しようとしたのだった。
三上は、自分が描いた絵が現れたため、精神が不安定になってしまった。自滅するのではないかと考えた、磯田の仲間で不動産屋の筒井は、道連れにされるのを恐れ、歩道橋から突き落としたのだった。