簡単なあらすじ
1) 8年前、タカハシという人物が東京都の外れにある黒水(くろうず)町にやってくる。そこにタカハシという人物が現れ、精神的な共同体を築いていた。ところが、彼は逃亡犯にも優しく接し、結果、犯人隠避でタカハシは逮捕されてしまう。タカハシは、抗議の意味で自ら命を絶つ。
2) タカハシの死で、警察に憤りを覚えた槙野真理男(平岡拓真)少年は、警視総監・四方田松栄(永島敏行)を殴る。槙野は、暴行の罪で逮捕される。だが、武闘派で知られる四方田は、少年に殴られてしまったことを知られたくはなく、内々に処理した。そのことで秘密を握った有本刑事は、汚職や薬物の売買などを行うも、内偵から逃れていた。
3) 黒水(くろうず)町では、有本刑事を含む4人の刑事が失踪していた。そんな中、杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)たちは、黒水南駐在所への臨時異動辞令が下る。右京たちは失踪事件を調査開始し、そこで有本刑事らが殺害されていることが明らかとなる。
4) 数々の証拠から、槙野が犯人と考えられていたが、右京はその結論に疑問を抱く。犯人は、黒水町の町長・和合(八嶋智人)であった。IT企業の社長でもある和合は、警視庁に納品されたPCにウィルスを仕込み、警察を監視し、動きを逐一察知していた。また、住民たちの過去や関係性、槙野を犯人に仕立てることができるといったことに気づき、警察をからかい尽くすことができると思った和合は、犯行に至ったのだった。
5) 和合は、自らの罪を暴こうとした女性ジャーナリストを殺害した。そして、彼女に好意を寄せていた亘を呼び出し、「俺が殺した」と言い、亘に自らを殺害させようとした。だが、亘は踏みとどまり、和合は逮捕されるのだった。
詳細なあらすじ
警察官が監禁され、しろくまのかぶり物をした男に乱暴されていた。監禁場所には、しろくまのぬいぐるみが置かれていた。
杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)たちに、黒水(くろうず)南駐在所への臨時異動辞令が下った。黒水は、「問題がある警察官の左遷先」と噂される署だった。亘には、「お前は新人だ。駐在所で経験を積め」と有無を言わさぬ様子で命令される。
黒水署の有本(森岡豊)という刑事のもとに、「お前のことは全て知っている」という差出人・タカハシというメールが届く。その後、有本刑事は行方不明となり、しろくまのかぶり物をした男に殴られ続ける。
亘と右京は、「しばらく会えなくなります」と言い、小料理屋・月本幸子(鈴木杏樹)に挨拶をしに行く。幸子は、黒水町について、「前科のある人間を積極的に受け入れ、寂れかけた町を再生させるプロジェクトに取り組んでいる。町長がIT系会社の社長で、革新的な町づくりを行っている」と言う。
都内では、警視総監の四方田松栄(永島敏行)を囲む会合が開かれていた。都内の浄化作戦で成果を上げた四方田のためのパーティーであり、会場には副総監の衣笠藤治(大杉漣)や、甲斐峯秋(石坂浩二)もいた。そしてそこに、黒水町の町長・和合(八嶋智人)もいた。「人間のイノベーションですよ」と、和合は甲斐に言う。
会場に、四方田宛の差出人不明の電報が届く。そこには、「revertar ut a bestia(私は獣として帰還する)」と、ラテン語らしき文章、そして子供が描いたようなシロクマの絵が描かれていた。四方田は、動揺するも、それを和合に隠す。
右京と亘は、黒水町でカフェを見かけ、「今度、来ますから」と右京は言う。その後、黒水署の署長に挨拶に行く。その後、大河内がいるのを見かけ、監察が入っている、と亘は考える。
亘は、制服を着て駐在所に立つ。一方、右京は前任者が無断欠勤をしており、失踪状態にあることに気づく。そして、駐在所にあったカレンダーに書かれた名前の、有本刑事を始めとした警察官たちが、次々に欠勤していることに気づく。
右京は、有本の写真を持って聞き込みを開始するが、団地の住民たちは「知らない」と首を振るばかりだった。そんな中、団地の壁に「revertar ut a bestia(私は獣として帰還する)」と書かれていることに右京は気づく。
団地付近の防犯カメラを調べるが、有本刑事の姿は映っていなかった。右京は、鑑識に相談するが、不真面目な捜査員たちは動こうとしない。仕方なく、亘は道具を借りて、パトカーを調べる。血痕が発見され、右京と亘は、何らかの事件が起きたことを確信する。
有本刑事の部屋を調べると、やはり団地から姿を消した後、戻ってはいない様子だった。そして、部屋にハーブらしきものを発見する。そこに、若月詠子(伊藤歩)という地方テレビ局のディレクターが現れる。
詠子は、「警察も動き出したんですね」と言う。黒水署の警察官連続失踪事件を追っているという詠子は、警察内部ですら統制されている機密情報をなぜか知っていた。
有本の部屋にあったのは、マジカルハーブという、危険ドラッグの一種だった。警察署長は、有本が薬物に絡んでいたことを知っていた。右京は、他の4人は関係しているのか、と訊ねるが、署長は「出ていけ!」と言うばかりで、答えようとしない。
詠子は、広報課長の社美彌子(仲間由紀恵)に取材要請するが、美彌子は「ノーコメント」と突っぱねる。
右京は、有本刑事ら4人の刑事が麻薬(マジカルハーブ)の取引を行っていたのではないか、と考える。カレンダーに書かれた数字は、取引するグラム数ではないか、と指摘する。
詠子は、警察官の連続失踪事件について、美彌子の「ノーコメント」という発言を含め、報じてしまう。美彌子は、「内部の情報が漏れている」と考え、青木年男(浅利陽介)に捜査を命じる。
亘は、詠子を食事に誘う。詠子は、「この町は異質なの。宗教的共同体があり、人に優しいの」と言う。
一方、右京は喫茶店を見張る刑事に話しかける。男が右京に詰め寄っているところ、町長の和合に助け舟を出される。
詠子は、「四方田警視総監について」というメールを受け取り、慌てて席を立つ。
右京と和合は、喫茶店に行く。和合は、「この町で再生してください」と言う。「結局、人なんですよ。再生しようとする人がいれば人も町も変わる」と言う。そして、前科者たちを受け入れていることに反発する警察関係者もおり、「喫茶店の駐車場にいた、この警察官のことを探ってください」と依頼する。
喫茶店の駐車場にいた男は、見崎亮という、所属不明な人物だった。さらに、警視総監から直々に黒水警察署の署長へ圧力がかかり、「詮索するな」と右京たちは言われる。
現場には、「revertar ut a bestia(私は獣として帰還する)」というラテン語が書かれていた。
詠子は、「四方田警視総監は、8年前に2週間欠勤している」という情報を、美彌子にぶつける。そのことを美彌子は探ろうとするが、四方田は「君は広報の仕事に専念して欲しい」と言う。
右京と亘のもとに、甲斐と美彌子が現れる。亘が、甲斐に警視総監の情報を提供していたのだった。甲斐は、有本が汚職に関係しており、内偵を進めていたことを明かす。右京は、四方田警視総監が圧力をかけ、調査をしないよう指示していたと指摘する。
美彌子は、「8年前に2週間欠勤している」「常に拳銃を持っている」と明かす。そこで右京は、なぜ槙野真理男(平岡拓真)という青年を警視総監が尾行しているのか、と疑問に思っているのだと言う。
右京は、槙野を監視していた見崎刑事がいなくなっていることに気づく。そこで、見崎が団地の屋上から監視していると右京は推理し、そこへ向かう。すると、望遠鏡はあったが、そこに見崎の姿はなかった。
貯水槽の壁に「revertar ut a bestia(私は獣として帰還する)」というラテン語が書かれており、しろくまのぬいぐるみが置かれているのを発見する。右京は貯水槽の中を見ると、そこに見崎の遺体を発見する。
右京は、他の失踪した刑事たちも殺害されているのではないか、と考える。本庁の刑事たちが現れ、捜査を開始する。「異常な事態」であるが、四方田警視総監が直々に乗り込み、捜査が開始される。
「見崎の仇を討つ。ホシは虎の尾を踏んだ」と言う四方田に、右京は「ちょっとよろしいですか」と口を挟む。「総監は、『虎の尾』という言葉をよく使うのですか?現場にあったしろくまのぬいぐるみにの足に、サンスベリア、別名・虎の尾という植物がついていました。まるで総監を挑発するかのように。…なにか、しろくまについて心当たりはありますか?」と訊ねる。だが、四方田は「知らんな」とだけ言う。
現場の証言で、槙野の目撃情報が上がり、さらには現場に槙野の指紋が発見された。槙野が重要参考人とされるが、彼は山に行ったまま、姿を消していた。そして、再び姿を現した後、警察官はたちに取り囲まれるが、静止を振り切って逃げ出す。右京は、「証拠が揃い過ぎている」と、彼の犯行であることを疑っていた。
詠子は、情報を得て現場へと向かう。そこで、有本を含む警察官4人の遺体を発見する。さらに、有本を殴りつける動画がアップロードされるのだった。
詠子のもとに、情報提供を求める伊丹憲一(川原和久)刑事たちが現れる。直前、詠子は塩水に携帯電話のSDカードを入れていた。海外メーカーのものであり、復元は不可能だった。亘は、詠子に「やり過ぎだ。…ネタ元の情報、そのまま流してるだけなんだろう?」と言う。
前科のある人々が逮捕される。「携帯電話に、槙野の命令を受け取った形跡がある。前科者なら、警察に恨みを持っているはずだ。全ての前科者を疑え」と四方田は捜査会議で言う。だが、亘は「彼らが犯人とは思えない」と言う。
和合町長もまた、「今回の警察のやり方は強引すぎる」と怒りを覚え、「警視総監に直談判する」と言う。槙野と働く喫茶店従業員・理香子に、右京は槙野に連絡をとってもらう。右京は、「君に伝えたいことがあります。…僕が約束できるのは一つだけです。君がこの町にどうして帰ってきたのか、その理由だけは明らかにします」と告げる。
右京は、槙野が四方田を殴りつけ、それを有本が後処理したのだと推理する。さらに、武闘派で知られる四方田は、14歳の少年に殴られたことを明かしたくなく、治療していた期間に2週間かかり、欠勤せざるを得なかったのでは、と指摘する。だが、なぜ槙野少年が四方田を殴ったのかは不明だった。
防犯カメラの映像が捏造され、さらには団地の住民がウソの証言をしている可能性があった。右京は、署長に相談し、黒水署の刑事たちが総動員され、証言を住民たちに再確認する。
槙野は、団地の住民たちとつながっていたと明らかになる。さらに、住民はマジカルハーブの栽培を行っていた。有本が取引していたハーブは、住民が栽培したものであると考えられた。さらに、証拠を再鑑定し、指紋や髪の毛などの証拠も捏造した可能性が浮上する。
団地住民はかつて、タカハシを中心に、精神的な共同体を築いていた。「罪を犯した者にも優しい」というタカハシは、逃亡犯を匿った。結果、タカハシはその犯人隠避の罪で逮捕され、彼は抗議の意味で自殺した。最期のメッセージは、「revertar ut a bestia」だった。
団地住民は、「”タカハシ”の指示どおり、私達は動いている。戦いが始まったんだ」と言う。さらに、住民たちは、槙野が指示を行っていると考えていた。また、住民たちは、マジカルハーブを常用していたが、「有本刑事たちが取引を始めた。悪さに使ったのは、アイツらだけだ」と言う。
四方田と和合の会合が行われている中、彼らが拉致されてしまう。四方田の体内には、GPS装置が埋め込まれており、追跡される。和合は生存していたが、四方田は遺体で発見される。四方田はの顔面は潰れるまで膀胱を加えられており、近くにはしろくまのぬいぐるみが置かれていた。
和合は、「槙野君が、マスクの男たちと行動をともにしていました」と証言する。そこに右京が現れる。
亘は、新しく納品されたPCそのものに、ウィルスが仕組まれていた可能性を指摘する。PCを納品したのは、和合の会社の関連会社だった。
和合は、踵を骨折していた。四方田の顔面を潰れるまで踏んだため、和合は骨折したのではないか、と右京は指摘する。
和合は、「僕が四方田を殺した」と自供する。「最初は殴ろうと思ったんだけど、どうしても踏みつけてしまって」と言う。
右京は、「あなたは、人心掌握することに、快楽を覚える。そして、あなたは殺人衝動を爆発させる」と、和合の動機について話す。また、拉致については、元兵士を使用し、”アウトソーシング”を行ったのだという。
だが、警察は既に槙野が犯人であると発表してしまっていた。逮捕するには証拠がなく、和合は「今、話しているのもウソですからね」と言い切る。右京と亘は、和合の自供していた内容を録音していた。その録音データを、亘は詠子に渡す。
詠子は、「真実を伝える」と言い、さらには亘に「ネタ元には、食事くらい奢らないとね」と言って立ち去る。
詠子は、ニュース番組で真実を報道しようとする。だが、和合によってスタジオは爆破され、詠子は殺害される。
和合から、右京に電話がかかってくる。和合は、「何も言わずに、僕の指示に従ってください」と言う。右京が指定の場所に向かうと、そこに理香子がいた。理香子は、和合に槙野がそこの場所にいると言われてやってきていた。
右京は、亘がスマホを置いて姿を消していることに気づき、「冠城君に復讐させようとしているんだ」と思い至る。冠城がその場所に向かうと、そこに槙野もいた。和合は、「詠子を殺したのは俺だ」と言い、冠城に自らを殺害させようとする。
槙野は、和合を殴り続ける。冠城は拳銃を取り出し、槙野を撃って止める。右京は、「和合さん、あなたの負けです」と言う。
衣笠が発注したPCで、今回の事態が起こった。甲斐は、衣笠にそのことを指摘し、「これで、君が警視総監になることはなくなった…私が推薦したい人間がいるんです。協力してくれるね」と言う。
右京は、和合に「悲しみの淵に立っても、そこから立ち直ろうとしている人がいます。あなたは、そのような人たちの心が、一生分からないでしょう…哀れな人だ」と言う。
その後、右京は槙野に「あなたは、8年前にタカハシさんのために四方田警視総監を殴った。そして今回は、町の人たちを騙した和合を殴った。でも、暴力による正義を、僕は認めません。罪を償ったら、理香子さんのもとへ帰りなさい。正義よりも大事なことがあるはずです」と言う。
亘は、「僕は右京さんと一緒にいる資格はありません」と言うが、右京は「君がスマホの特捜部データを消去していたら、和合の居場所を見つけることはできませんでした。特捜部のデータを消していなかった、それは君が踏みとどまっていたという証拠です」と言う。右京と亘は、特捜部へと戻るのだった。