簡単なあらすじ
1) 杉下右京(水谷豊)は、吉井聡美(及川莉乃)が駅のホームから落ちて亡くなったのだと神戸尊(及川光博)から聞く。聡美は自殺した可能性が高く、亡くなる2ヶ月前まで、息子とともに姿を消していたことから、聡美は夫のDVから逃れるため、シェルターにいたのではないか、と右京は考える。
2) さらに、立てこもっている司の母親・亮子もまた、何者かから身を隠しており、聡美同様、亮子もまた、DVを受けていたのではないか、と考えらえた。司は、聡美が死亡しているのを知りながら、なぜ「聡美を呼べ」と要求したのか、真渕の振りをして立てこもっているのかを考える内、右京は司の狙いに気づく。
3) 司は、真渕治が妹・明里を連れ去ろうとした現場に居合わせ、明里を守ろうとした末に、真渕をブロックで殴りつけた。真渕と水野浩介のメールのやりとりから、真渕がDVを受けていた母子たちを探し、子供をさらって父親のもとへと戻す仕事を請け負っていると考える。
4) このままでは、母と妹が父親のもとへと連れ戻されてしまうと考えた司は、真渕の振りをして水野から情報を引き出し、父親の暴力や、水野の行っている行為を明らかにしようとしたのだった。
5) マスコミにより、真渕が入院していることが明らかとなってしまう。水野は、立てこもっているのが司と気付き、司の母・亮子を拉致する。そして、司に「母親を救いたかったら、証拠を消せ。そしてお前は自殺しろ」と命じる。だが、右京は水野から亮子の居場所を聞き出し、救出するのだった。母の無事を知った司は投降する。
ここがポイント
立てこもり犯である司の父親・誠は、家族にDVを行っており、妻・亮子、子供たちの司・明里たちは誠から隠れて住んでいた。
そんな中、明里は真渕治に連れ去られそうになり、司はやむなく真渕をブロックで殴り、重傷を負わせる。さらに明里が「この人悪い人。彰浩君も連れてった」と言い、真渕が同じようにDV被害を受ける女性から子供をさらっていることが判明する。
司は、父親に母と妹の居場所を知られてしまったことを恐れる。そして、母・妹を守るため、父親の暴力を告発し、真渕、そして真渕を雇って指示していた水野浩介の罪を暴こうとして、立てこもったのだった。
今回、誠から「すぐに警官を突入させろ(司を口封じのために消すため)」と圧力をかけられた警察庁長官官房総務課長の山崎哲雄(菅原大吉)警視監は、『劇場版 相棒 IV』に登場し、再び右京と激しい火花を散らす。
詳細なあらすじ
杉下右京(水谷豊)は、神戸尊(及川光博)から吉井聡美(及川莉乃)についての情報を聞く。聡美の様子がおかしいということで、大河内春樹(神保悟志)に依頼され尊は調べていたのだった。聡美は、線路内に落ち、事故死していた。
自殺と考えられ、検死結果から薬物や飲酒などを使用している形跡もなかった。聡美には、亡くなる2ヶ月前まで、幼い息子と姿を消していた時期があった。
新堂司(田中偉登)の父・誠(永野典勝)は、法務省矯正局のホープだった。さらに、司の母親・亮子は、誠から逃れるため、共済保険組合から資格喪失を申請していた。右京は、司や亮子がDVを受けていたと考える。そして、聡美もまた、DVを受けておりDVシェルターで亮子と知り合ったのではないか、と右京は推察したのだった。
誠は、「健全な家庭を守る会」という「妻は夫や家庭を支えるべき」という思想の団体に入会していた。その団体に、警察庁長官官房総務課長の山崎哲雄(菅原大吉)警視監も入会していたのだった。
米沢(六角精児)の調査結果により、真渕治(三浦英)が表沙汰にできない仕事をクラウドソーシングサービス会社の社長から引き受けていたと突き止める。真渕は、DVを受けて身を潜めている母子を探す仕事を引き受けていたのだった。
司は、聡美が自殺したことを知りながら、「聡美を呼べ」と要求していた。それにより、聡美の死の真相を誰かに突き止めて欲しいと考えていたのだった。
マスコミにより、真渕が意識不明の重体であり、立てこもり犯でないことが明らかになってしまう。結果、司が真渕の振りをして水野浩介から情報を引き出そうとしていることが、水野本人に知られてしまう。水野は、司の母親を誘拐し、司に真渕のスマホを破壊させ、さらには「自殺しろ」と司に迫る。
意を決して包丁を握る司が、部屋を出ようとしたところ、家の電話が鳴る。田原総合病院からの電話であり、立てこもった家の家主が入院している病院からであった。電話をとると、それは右京からの電話だった。
右京は、「君は、お母さんと明里ちゃんと守りたいと思っている。僕は、お母さんと明里ちゃんと君をお父さんから守りたいと思っています」と言い、信用させる。そして、「今から、僕が言うことをよく聞いてください」と言い、右京は司に指示を行う。
吉岡班長らが、突入準備を行う。そこに冠城亘(反町隆史)が現れ、「突入中止」と告げる。その直後、家主の妻、そして明里が解放される。
水野は、誠に電話を行い、「司は全てを知ってるぞ。君は警察に知り合いがいるだろう。突入を急がせろ」と脅す。誠は、山崎に圧力をかける。山崎は、「すでに12時間以上かかっている。関係各方面から、事が長引くことで問題が大きくなるとお伝えしにきた」と言い、突入を急がせる。
右京は組対5課の刑事とともに、水野のオフィスを訪れる。そこで右京は、「新堂亮子さんはどこですか?」と訊く。「礼状を待たずに話した方がいいですよ」と言い、水野は亮子の居場所を吐く。
亮子の居場所へ、亘と右京が現れ、亮子を救い出す。亮子が無事に救出されたことを告げられ、司は投降する。
亮子は、「司は暴力に耐えかねて家を出ました。明里もパニック発作を起こすようになり、私はもうダメだと思って、シェルターに。そこで、聡美さんと出会いました。…亡くなったあの日、聡美さんは電話をくれたんです」と明かす。
聡美は、子供が生まれてからずっと「育て方が悪い」と言われ、夫から暴力を振るわれるようになったのだという。聡美が駅のホームから落ちて亡くなったことから、すぐに亮子は「自ら命を絶ったんだと思いました」と言う。聡美は、子供を連れ戻され、家に戻るしかなかったのだった。
司は、明里を真渕が連れ去ろうとしていたのを見かけたのだった。司を殴り、なおも明里を連れ去ろうとしたため、司は真渕をブロックで殴ったのだった。しかも、明里は真渕のことを「この人悪い人。彰浩君(聡美の息子)を連れてった人」と言う。
父親に居場所を知られたと思った司は、真実を明かし、母と妹を救おうとしたのだった。そのため、真渕になりすまし、指示していた水野の罪を暴こうとしたのだ。
右京は、「お母さんと妹さんは、これから無事に暮らせます。私が約束します」と言う。右京は、誠に「未成年者略取誘拐罪が成り立つ」と言い、さらに「亮子さんも明里ちゃんも司君も、あなたのものじゃありません。1人の人間です!」と言う。
山崎警視監は「拉致を見抜いた」として昇進が決まった。右京は、明里の証言により、真渕による彰浩連れ去りが裁判で明らかとなると考えていたが、「パニック発作を起こすような子供の証言は採用できない」と山崎警視監が進言したことが明らかとなる。
右京は、山崎警視監に「あなたは、どうして警察官になったのですか?」と面と向かって訊ねるのだった。