出版社・文礼堂の『千言万辞』という辞書を担当する編集者・中西が、メッタ刺しにされて遺体となって公園で発見される。『千言万辞』のファンである杉下右京は、現場に出向いて調査を開始する。
右京と冠城は、編集部部長である和田に話を聞いた後、『千言万辞』編集の主幹である大鷹に話を聞きに行く。大鷹は、言葉にとりつかれ、言葉の収集をし続けるがあまり、家族にも見放されていた。
そんな大鷹は、物忘れが激しい様子で、時折癇癪を起こしていた。大鷹はどうやら、アルツハイマー病を患っているようだった。また、初版、第二版では関わっていた国島が『千言万辞』の編集から離れ、再び第四版では編集に携わっていることが明らかとなる。
右京は国島に、「主幹交代の密約があったため、編集に戻ったのではないか」と指摘を行う。国島は否定せず、「行きがかり上」と言う。さらには、大鷹家で家政婦を行う佐知江に話を聞くと、国島が事件当日、作業場である大鷹の家にやってきていたことが判明し、さらには事件現場近くで目撃されていた。
そんな調査結果が揃う中、国島は「私が中西を殺害しました」と出頭するのだった。凶器となるペーパーナイフも、国島の仕事部屋から発見された。ところが、大鷹もまた「私が中西を殺した」と出頭する。
互いに自分が犯人であると主張する中、右京は調査を続行する。そこで、病気になった大鷹を、日頃から国島がサポートしていることが明らかとなる。そこで右京は、国島が大鷹を庇い、さらには『千言万辞』を守ろうとして自分が犯人であると主張しているのではないか、と推理する。
さらには、編集部の部長である和田は、『千言万辞』ではなく『文礼堂国語辞典』を愛しており、復刻・改訂を望んでいたことが明らかとなる。和田は、大鷹がアルツハイマー病であることを明かし、『千言万辞』の出版を阻止しようとしていた。ところが、和田は大鷹と国島の主幹交代により、『千言万辞』を出版させようとしていたのだった。
中西は『文礼堂国語辞典』をなじり、和田は殺意を持った。中西の名を騙って大鷹家に電話をかけ、大鷹を公園へと呼び出した。一方、中西には主幹交代の話をする、と一緒に公園へと向かい、そこで和田は中西をペーパーナイフで殺害したのだった。
その後、和田は公園で中西を待ち、さらにはそこへ国島が現れた。中西の遺体を見た国島は、大鷹がやったと思い込み、自ら罪をかぶることにしたのだった。国島は、ペーパーナイフを入れ替える偽装工作を行った。
和田は、このままでは大鷹が捕まらず、『千言万辞』は出版されてしまうと思った。そこで、大鷹に「国島さんが逮捕された。中西さんを殺害した罪で。でも、実際は先生が殺害したんでしょ?ペーパーナイフで」とアルツハイマー病である大鷹に吹き込んだ。結果、大鷹はそれを信じてしまい、出頭したのだった。和田は、右京の推理を聞き、自らの罪を認めるのだった。
脚本:神森万里江
監督:権野元