簡単なあらすじ
1) 死刑囚の70番(椎名桔平)は、同じく死刑囚の50番(今井雅之)が「妙に悟りきった様子」であることに反感を覚える。そこで、50番が他の刑務所に移送されることを知り、脅かしてやろう、と思い、話しかける。
2) 死刑囚が死刑執行される場所へと通じる廊下があり、「刑場の清掃をしたことがある」という70番は、その様子を詳細に50番は語る。最初は聞き流していた50番も、まだ見ぬ刑場の様子をいつしか真剣に聞いていた。
3) 翌朝、50番は70番が話していた「死刑執行の場所へと通じる廊下」の方へと連れて行かれる。70番は、「単に、50番は施設の老朽化で移送されるだけ」と思っていたが、悲鳴を上げた後、心臓発作で死亡したのだと知る。
4) さらに翌朝、70番は50番が向かった方に連行される。だが、そこの様子が、自らが語った「死刑執行の場所へと通じる廊下」に酷似していることから、「自分は死刑執行されるのではないか」と思い込んでしまう。半狂乱になって最後の扉近くの部屋に入り、そこに置かれた電気椅子の存在に驚く。さらに、刑務官が懐中電灯で70番の顔を照らし、驚いた70番は50番同様に心臓発作で死亡する。ただ、刑務官たちは50番同様、70番を他の刑務所に移送するつもりなだけであった。
詳細なあらすじ
死刑囚の70番(椎名桔平)は、写経に励む同じく死刑囚の50番(今井雅之)の「妙に悟りきった様子」に反感を覚えていた。
そんな中、老朽化した刑務所の改装に伴い、囚人たちが移送され、最初は50番であると耳にした70番は、50番に話しかける。
「私語は禁じられています」と、50番は取り合おうとしなかったが、「死刑執行の場所に通じる扉がある。俺は、刑場の清掃をやらされたことがあって、その通路のことを知っている」という70番の話に、思わず50番は写経の手を止める。
普段使わない方の通路の先には、緑色の観音扉があるのだという。その先には、薄暗い通路があり、最後の電球は切れていて点灯していない。さらにその先に進むと、一条の光が差す。
赤い扉を通過すると、ひび割れた壁があり、水が染みだした廊下には苔が生えてぬるぬるとした感触がある。最後の扉に到着すると、死刑囚はなぜか待たされる。扉を開けると、そこで死刑囚たちは最後の抵抗を行い、扉には手のひらの痕がついている。
扉の先には、樫の木で作られた木製の椅子があり、それは電気椅子だ。座らされ、拘束させると、黒い頭巾をかぶせられる。それは、囚人の断末魔の表情を刑務官たちが見たくないからだ。頭にはヘッドギアがつけられ、伝導率を上げるため、水に浸された海綿が挟まれる。
…こうした70番の話を聞き、50番や隣の部屋にいる60番も震え上がる。翌朝、写経も手に付かず、食事も喉を通らない50番の部屋の前に、2人の刑務官がやってくる。50番は、70番が「死刑執行の部屋」へと通じる通路だと教えた方に連れて行かれ、怯える。
恐怖に震える50番の様子を見て、60番は70番に抗議する。だが、70番は「アレはウソだ。どこの刑務所が、死刑囚に刑場の清掃をさせるんだよ。70番は、単に移送されるだけだ」と言う。
だが、50番の悲鳴の後、血相を変えて刑務官が医師を呼びに行ったのを見て、異変に気づく。70番は、心臓発作を起こして死んだと知り、70番は60番に「言うなよ」と口止めを行う。
翌朝、70番は刑務官に連れ出される。50番が死亡した方の通路に連れて行かれ、70番はその先にあった緑色の観音扉に驚く。それは、見たこともないにも関わらず、50番に話をした内容、その通りであった。
さらに、切れた電球、一条の光が差し込む廊下、ひび割れた壁…まるでそれは、自分の想像の中の光景そのものだった。最後の扉の前で待たされ、70番はその扉に、手のひらの痕があるのを見つけ、半狂乱になる。
刑務官を振りほどき、近くにあった扉に入る。そこには、電気椅子らしきものが置かれていた。慌てて外に出ようとするが、その先に刑務官がおり、懐中電灯で照らす。すると、70番もまた心臓発作で死亡したのだった。
最後の扉の先は、庭に繋がっていた。やはり50番、70番ともに別の刑務所に移送されるだけであり、護送車が待機していただけだった。
なお、最後の扉についた手のひらの痕は、鍵を閉める際に刑務官が押さえてつけられたものであり、死刑囚の手のひらの痕ではなかった。