簡単なあらすじ
1) 大手広告代理店・電央堂の入社試験が行われ、6次試験となる最終試験は、「プロパガンダ・ゲーム」というものであった。「プロパガンダ・ゲーム」とは、政府チームとレジスタンスチームに分かれ、政府チームは国民を戦争に導き、レジスタンスチームはそれを防ごうとするというゲームだった。
2) 8人は4人ずつそれぞれ政府チーム、レジスタンスチームに分かれる。その中で、スパイ役に選ばれた
政府チームの椎名瑞樹、レジスタンスチームの越智小夜香によって混乱に陥りながらも、ゲームは政府チームの勝利で幕を下ろす。
3) 最終選考後、落選した今井、椎名、越智、後藤、樫本、国友たちは、居酒屋に集まる。国友は、「プロパガンダ・ゲーム」は、電央堂が、蜜月関係にある政府により委託された「戦争に国民を扇動する」役割を担う人物を選定するためのゲームではないのか、と指摘する。さらに国友は、、「国や大手企業にとって振りでも、社会にとっては有益な情報を暴露できるネットメディアを新たに立ち上げる」と宣言する。
4) 国友の呼びかけに、樫本、椎名、今井たちが応じる。その後、ニュース番組では「電央堂が行った入社試験の内容が著しく不適切だったとして、学生らがインターネット上に公開した音声が議論を呼んでいます」と報じられた。初めに音声が公開されたのは、ニュースサイト「JOUNALISM4」であるという。情報を武器に相手を陥れる「プロパガンダ・ゲーム」は、終わるどころか新たな局面を迎えようとしていた。
詳細なあらすじ
大手広告代理店・電央堂の入社試験は、最終試験を迎えていた。8人の男女が残っており、最終試験が始まるのを待っていた。そこで、マーケティング局の渡部局長は、「大衆は何を求めているのか、いかにすれば大衆の関心をひきつけられるか。・・・重要なのは、大衆の習性を把握した上で、『適切に誘導する』ということだ」と話し、最終試験は「プロパガンダ・ゲーム」であると明かす。
「プロパガンダ・ゲーム」とは、政府チームとレジスタンスチームに分かれ、政府チームは国民を戦争に導き、レジスタンスチームはそれを防ごうとするというゲームだった。国民としてSNS『パレット』から選定された100人が参加し、その投票により「戦争賛成/反対」の多数派をとったチームが勝利となる。
仮想の国『パレット』を舞台として、隣国『イーゼル』に対する戦争を行うべきかどうか、ゲーム開始後1時間で国民投票が行われる。決まったポイント数に応じて、「情報素材」で情報が得られたり、SNS上でメッセージを送ったり放送で「扇動」を行うことができる。こうしたことで国民に訴えかけ、多数決で勝利しようと試みるのだった。
政府チーム、レジスタンスチームになるかは、自分で引いたカードで分けられる。だが、両陣営にはスパイが1名ずつ入っており、「盗聴」アクションにより、相手チームの会話の一部を自陣営に伝えることができるのだった。
政府チームは財源が多くあり、アクションや情報を得るためのポイント数が多く設定され、代わりにレジスタンスチームは、SNS『パレット』で市民アカウントを作成・使用することができる。
両チームのメンバーは、
・政府チーム:椎名瑞樹、香坂優花、織笠藍、後藤正志
・レジスタンスチーム:今井貴也、国友幹夫、越智小夜香、樫本成美
と決まった。
政府チームは、まずポイント数が多いことを武器に、情報素材購入を行う。購入を検討する上で、隣国「イーゼル国」が侵略しているという、パレット国の「キャンバス島」に関する情報をリストアップする。
一方、レジスタンスチームは、「政府を信じるな Don’t Trust Goverment」とメッセージを送る扇動アクションを早速行い、政府が自分たちに都合の良い情報であるプロパガンダを流すことを国民に印象付けようとする。
政府チームである椎名は、購入した情報をもとに、広報官としてカメラの前に立つ。椎名は、キャンバス島海域で行われたイーゼル国の大々的な軍事演習の様子を示す。さらに、イーゼル国は軍備費を2倍に増額していることを明かす。こうした軍事的脅威があり、「我が国固有の領土であるキャンバス島を守るべきだ」と椎名は語る。
これに対し、レジスタンスチームは「政府の主張には、謝りがあります。『我が国固有の領土』と主張していますが、根拠は明治されていません。その地域で軍事演習が行われたと言って、戦争に踏み切ることは暴挙です」と反論するメッセージを送る。
政府チームの椎名は、再び広報を行い、キャンバス島にパレット国の国民が住んでいた事実、50年前の地図にもパレット国の領土であると示されていた、と固有の領土である証拠を示す。
レジスタンスチームは、「現在、島にはヤギしかいません。ヤギを守るために戦争をすべきでしょうか?」とメッセージを送る。結果、その話題は国民を装ったレジスタンスチームのコメントによる扇動もあり、SNS上で盛り上がりを見せる。
その中で、越智はレジスタンスメンバーがどのアカウントを使用しているのか訊ね、一人ずつ明かしていく。そこで、自己申告により
・樫本:イブ@eva1991
・今井:ニコル@niko
・国友:Fleming@courier
・越智:チョップ軍隊@choparmy
と判明する。さらに、レジスタンスチームで樫本が広報官となることを引き受けたところ、スパイからの音声ファイルが届くのだった。
政府チームは、「ヤギ」のイメージを払拭しようと動く。椎名は再び広報官として話し、「まだ島には住民がおり、キャンバス島の周辺海域には莫大な石油資源が眠っています。パレット国政府がキャンバス島に石油資源を発見した時期と、イーゼル国がキャンバス島の領有権を主張し始めたタイミングはほとんど同時です。彼らの意図はあまりに明白です」と、イーゼル国が石油資源を狙っていると明かすのだった。
中間投票が行われ、賛成39票、反対61票でレジスタンス側が優勢と判明した。政府チームの後藤は、パレット国の国民が石油資源を奪われ、国益を損ねると理解できないことに憤る。そこで、「国民を守ろうと必至の思いで訴える言葉は聞こうとせず、国の方針にはまるで関係のない瑣末なことには異常に関心を抱く」と、大衆の蒙昧さに呆れているかのような発言を行う。
椎名はそこで、後藤が「後藤正義」という元政治家であることに気づく。後藤正義は、風邪薬が原因で会見中に居眠りをしてしまい、「居眠り大臣」などと揶揄されていた人物だった。マスコミに槍玉にあげられ、後藤正義は大臣を辞職、次いで選挙でも落選して無職となってしまったのだった。
そこで香坂は「国民をバカだと見下すのではなく、率いてあげないと」と言う。ゲーム再開を前にして、椎名は逆転するための会議を呼びかける。後半戦が開始し、政府チームは広報官として椎名ではなく、香坂優花と織笠藍が出演し、「You & I」などと自らを名乗り、ポップな広報活動を行う。今までの真面目な路線から、ソフト路線へと政府チームは舵を切ったのだった。
樫本は、レジスタンスのアカウントで「政府チームは女性の性を売り物にしている。チームに所属している女性に、本人の意に沿わない形で軍服のような衣装を着せ、国民を戦争に導く発言をさせている」と批判する。これに対し、政府のアカウントは「あの服着ようって最初に言ったの、あたしです!勝手に私たちをかわいそうな人にしないでください」と反論した。これにより、レジスタンス側の優位な立場は揺らぐこととなった。
さらに、政府チームは追い討ちをかけるように、椎名を広報官として、「イーゼル国が軍艦を囮にし、すでにイーゼル国軍はキャンバス島に上陸している」と明かすのだった。レジスタンスチームの今井は、政府チームのでっちあげであると主張する。そして、スパイから送られてきた「軍事演習ではパンチが足りない」「具体的な被害が欲しい」という音声を公表するのだった。そして、「軍事演習ではパンチが足りない」と発言していたのは椎名であり、「政府の言葉を信用してはいけません」とレジスタンスチームの樫本は言うのだった。
スパイによる「盗聴」により、政府チームは騒然とする。椎名は再び広報官としてカメラの前に立ち、「あの音声が一体なんなのか、お答えします」と言う。そして、「あれは本物です。指摘の通り、政府チームはこの国を戦争に向かわせるなら、どんな手段も使うつもりです」と、政府を批判するかのような発言を行う。椎名はスパイであり、音声も自ら発言し、レジスタンス側に送っていたのだった。香坂と後藤は、画面や音声を切り替え、椎名の発言を中断させる。
椎名に抗議しつつ、後藤は、「別の衝撃的な情報で、世論を誘導する」ことを提案する。「キャンパス島事件の真実」という情報素材を購入し、香坂がカメラ前に立つ。「キャンパス島事件」とは、キャンパス島で妊婦の女性がイーゼル国の兵士に撃たれ、倒れこむというショッキングな映像だった。
香坂は、「イーゼル国がこの島にやってきて、妊婦さんを平気で殺すのを見て、気づきました。武器を持った悪い人たちを止めるには、良い人たちが、武器をとるしかないんです」と訴える。
レジスタンスが反撃に動きだそうとする中、「市井ノ人@ordinaryjoe」というアカウントでレジスタンスチーム員が国民のふりをしているアカウントが晒される。レジスタンスチームは騒然とし、スパイが誰なのか疑いだす。その中で、国友は「全員、端末から手を離せ」と指示する。
しばらくして、レジスタンスチーム全員が書き込めないはずにも関わらず、越智のアカウントだという「チョップ軍隊@choparmy」の書き込みが行われる。越智はスパイであり、「チョップ軍隊@choparmy」というアカウントを使用しているといいつつも、実際のアカウントは「市井ノ人@ordinaryjoe」だったのだ。
レジスタンスチームもまた、「キャンパス島事件の真実」の情報を購入する。樫本は広報官として、「先ほど流れた動画は、政府が事件を都合のいい形で切り取った、改ざんされたフィルム」であると言う。女性は妊婦ではなく、腹部に武器を隠し持っていたのだった。しかも兵士が撃ったのは麻酔銃であると判明した。
樫本は、「殺された妊婦はどこにもいません。政府の汚い戦略で、兵士にされた女性だけです」と発言するのだった。
政府チームの香坂は、再び広報官としてカメラの前で国民たちに訴える。「私は、戦争なんてほんとうはしたくありません。平和な毎日のほうが、私は好きです。でも、イーゼル国に侵略されて、私たち政府が壊され、国が支配されてしまったら、ぼーっとしていられる自由なんてありません」と語りかけるのだった。そして、すみやかに戦争を仕掛けた場合、勝利できる確率が高いというデータを示す。
レジスタンスチームの樫本は反論し、「勝てるなら戦争してもいいなどというのは正しくありません。戦争を始めるのは簡単です。ただ、終わらせるには大きな痛みを伴います。お願いです。戦争に反対してください」と訴えるのだった。
最終投票が行われ、結果、「賛成 49票 反対 46票 棄権 5票」となり、政府チームの勝利となった。
電央堂の最終選考が終わり、選考から落選した今井、椎名、越智、後藤、樫本、国友たちが居酒屋に集まった。そこで国友は、「プロパガンダ・ゲームによる選考は、政府から戦争用の広報を依頼された電央堂が、その担当者を採用するために作ったゲームなんじゃないかと思ってる」と発言する。
そもそも、新卒採用試験としては予算がかかりすぎており、「政府がスポンサーになっている」のではないかと国友は仮説を口にする。そして、「僕は、この国で、恐ろしいことがはじまってるんじゃないかと思ってる」と言うのだった。
「電央堂は業界一位の広告代理店、そしてテレビ業界の広告費8割に関与していた。そのような企業である電央堂について、不祥事が報道されるはずがない」と国友は語る。さらに、政府与党と蜜月関係にある電央堂は、政権維持のために政権に不利になるような情報は黙殺される、と指摘するのだった。
そこで後藤は、父から伝えられたという「政府与党の党三役、現役閣僚のスキャンダル」があるのだと明かす。後藤の父親は、党から完全に見放され、復讐を果たそうとしているのだという。その情報を国友は、「有効に使う」と言う。その方法とは、「国や大手企業にとって振りでも、社会にとっては有益な情報を暴露できるネットメディアを新たに立ち上げる」と言うものだった。
さらに国友は、「ジャーナリズムとは報じられたくないことを報じることだ。それ以外のものは広報に過ぎない」と、ジョージ・オーウェルの言葉を引用してコンセプトについて語るのだった。
国友の呼びかけに、樫本、椎名が応じる。「プロパガンダ・ゲームが実際に行われた証拠はない」と懐疑的な今井に、国友はメガネに取り付けてあったヴォイスレコーダーを取り出し、最終選考開始時の音声を聞かせるのだった。
その後、ニュース番組では「電央堂が行った入社試験の内容が著しく不適切だったとして、学生らがインターネット上に公開した音声が議論を呼んでいます」と報じられた。初めに音声が公開されたのは、ニュースサイト「JOUNALISM4」であるという。
情報を武器に相手を陥れる「プロパガンダ・ゲーム」は、終わるどころか新たな局面を迎えようとしていた。