簡単なあらすじ
1) 日本ではクーデターが起こり、憲法も変えられた。1人の指導者が率いるようになり、異を唱える者は「再教育」されるため、施設に送られてしまうのだという。日本の体制が変わる中、学校の教育制度にも変革が起きていた。
2) 印象的な緑色のワンピースを着た鈴木マリ(賀来千香子)は、生徒たちを「指導・教育」するため、9時に生徒たちの前に現れる。マリは優しく、諭すような物言いで、次第に心を掴んでいく。父親を施設に送られてしまったトシユキは反抗するが、次第に言いくるめられ、学級委員長にされると、マリの言うことを聞くようになる。
3) トシユキは、マリに言われて「自由 平等 平和」と書かれた額を、校庭に投げ捨てる。マリは、腕時計を見ると9時23分を示していた。たった23分間で、マリは完全に子供たちの心を掌握する。
4) マリは、今までの教科書を生徒たちに破らせる。「教科書を破れた子から、あたらしい服と教科書をとりにきて」と言うと、最初はマリの言葉に疑いを持っていた生徒も、我先にと教科書を破るようになるのだった。
詳細なあらすじ
中年の女教師・安西は、小学校の教室で生徒たちの目も憚らず泣いていた。9時になり、そこに印象的な緑色のワンピースを着た女性・鈴木マリ(賀来千香子)がやってくる。
マリは、安西に「他の先生方は校長室に行きましたよ」と言い、そこに行かせようとする。だが、安西は「子供たちは、どうなるんです?」と問い、生徒たちに身を案じる。マリは優しく、にも関わらず有無を言わさない様子で、安西を教室から出て行かせる。
マリは自己紹介し、新たな担任教師となったことを告げる。生徒たちは戸惑い、疑問を口にする。だが、マリは生徒たちの氏名、特徴、親の職業などを言い当てて、次第に生徒たちの心を掴んでいく。
さらに、マリはテープレコーダーで『アメージング・グレイス』を流す。そして、「今日から、朝にこうした外国の音楽を流すわ。みんな、この曲は好きかしら」と言う。
そんな中、1人の男子生徒・トシユキがマリに反抗的な態度や言動を行う。彼は、新聞の切り抜きを持っており、「クーデターが起きたんだ!それで憲法が変えられてしまったんだ!」と言う。彼の父親は、収容所に入れられ、「再教育」を受けているのだという。「行きたくもないところに、お父さんは連れて行かれたんだ!」と彼は訴える。
マリは、クーデターについて「憲法でも、間違っていたら変えなきゃね」と言う。さらに、「大人も学校に行くの。間違った考え方をしているなら、大人でもそれを変える必要があるわ」と優しく諭すように言う。
トシユキが黙ったところで、マリは「今日から、皆さんにはお泊りをしてもらいます。綺麗なところで、ご馳走が食べられるわ」と言う。生徒たちは喜ぶが、反抗的な少年だけは、疑いの目をマリに向けていた。
さらに、マリは「お菓子がもらえるように、お祈りをしましょう。さぁ、目を閉じて。『神様、お菓子をください』と言ってみましょう」と言う。だが、祈りで何も起こるはずがない。さらにマリは、「神様を、指導者様に変えてみたらどうかしら?目を閉じて、『指導者様、お菓子をください』と言ってみましょう」と言う。
マリは、生徒たちの机に、お菓子を配って回る。配り終えたマリは、「さぁ、目を開けて」と言う。生徒たちは、お菓子がもらえて喜ぶ。だが、トシユキは「僕は薄目を開けて見ていたんだ。先生がお菓子を配ってた!」と言う。
マリは、「そうね。先生、ウソをついていました。ごめんなさい。お菓子は私が置いたの。誰かにお祈りして、何かがもらえるなんてことはないの。お菓子でもなんでも、誰かが用意するといった他の人の力によるものなの」と言う。
マリは、「自分の考えをはっきり言うことができる。トシユキ君は、立派ね」と言う。その言葉に呼応するかのように、他の生徒たちもトシユキを褒め始める。そこでマリは、「学級委員長を決めなきゃね。クラスを導くことができるよう、はっきりと発言できる子がいいんじゃないかしら」と言う。
結果、「それなら、トシユキが良いんじゃないか?」と生徒たちは言い、トシユキが学級委員長となる。そこで、最初の仕事として「自由、平等、平和」と書かれた額を外し、校庭に投げ捨てるように言う。戸惑うトシユキに、「大事なことは、書かれている言葉でしょ。それは、胸に留めておけばいいのよ」と言う。
「トシユキがやらないのなら、俺がやる」と言う生徒が現れるが、トシユキは「これは俺の仕事だ」と言い、額を窓の外に投げ捨てる。額のガラスは割れ、校庭に散乱する。その時、マリは腕時計を見る。時刻は9時23分。彼女はたった23分間で子供たちの心を完全に掌握するのだった。
マリは、緑で統一された服と、新しい教科書を取り出す。そして、「古い教科書は、もう要らないわよね。破り捨ててしまいましょう。破れて子から、新しい服と教科書をとりにきてちょうだい」と言う。もう既に疑問を口にする子供はおらず、我先にと教科書を破り始めるのだった。