主婦・松岡ゆかり(岡田奈々)は、生きたカニを買うか迷っていた。だが、近所の主婦・河崎今日子(左時枝)に「生きてるから新鮮でいいんじゃない」と言われ、半ば押し切られるようにして購入することになるのだった。
「鍋で茹でてしまえばいい」と教えられて、調理をしようとするのだが、息子・健一は「殺さないで」と言って止めるのだった。健一は、「海に帰してやるんだ」と言ってきかず、結局、カニを調理することはできなかった。一方、河崎家では早々にカニは茹でられ、夫婦でカニ鍋を堪能する。
健一の父親・広太郎(五代高之)は、タバコを吸いながら酒を飲み、ゆかりに「人間は、他の命を奪って生きてきた。そのことを健一にも教えてやらねばな」と言う。そんな中、ゆかりたちは悲鳴を聞く。
河崎家では、泥棒が侵入していた。泥棒と今日子の夫は揉みあいとなっていた。泥棒は追い詰められ、台所の三角コーナーにあったカニの爪をとり、夫の胸につきたてる。その後、妻のほうにもにじり寄り、背後からカニの爪をつきたてるのだった。松岡家で聞いた悲鳴は、この時のものであった。
松岡夫妻は、河崎家に向かい、そこで夫婦が息絶えているのを発見する。通報するとともに、潜んでいた泥棒をゴルフクラブで殴りつけて気絶させる。泥棒は、まるでカニのように泡を吹いて倒れる。
一方、松岡家では、広太郎が慌てて家を出たため、タバコの吸殻が新聞の上に転がっていた。一階ではボヤが起きていたのだが、健一はそうとも知らず、二階で寝ていた。そんな中、健一が風呂場へと移したカニは異変を察知し、リビングへと向かう。そして、泡を吹いて消火するのだった。
松岡夫妻は、自宅へ戻るとリビングが泡だらけになっていることを不思議に思う。その後2人は、タバコの不始末でボヤが起こっていたことを知るのだが、カニが消火したとは夢にも思わないのだった。
翌日、広太郎は健一を連れて海へとドライブに行く。健一は、海へとカニを返そうとしていたのだった。
広太郎は、「いつか、恩返ししてくれるかもしれないぞ」と言い、健一は「昨夜、そんな夢を見た」と言うのだった。
1990年8月30日放送 脚本:関澄一輝