簡単なあらすじ
1) 桜井信一(阿部サダヲ)は、中卒の不動産会社営業マンだった。彼の妻・香夏子(深田恭子)も中卒であり、学歴などとは無縁と考えていた。だが、娘は賢いと思っていた信一は、統一テストで娘の成績があまりにも悪く、愕然とする。
2) 信一は、新入社員・楢崎哲也(風間俊介)の指導を担当するよう上司から言われる。楢崎は、有名大学を卒業しており、信一はいきなり顧客を楢崎に奪われてしまい、社会における学歴の影響力の大きさを思い知らされる。
3) 父・一夫(小林薫)も中卒であり、一夫が病院で非常識な行動を起こしたことに呆れてしまう。学歴について考え始めた信一は、娘の佳織を塾に入れようと考える。だが、入塾テストの結果は散々であり、塾に入れる気も失せてしまう。
4) 信一は、佳織に「一緒に中学受験をしよう」と言い、最難関の中学・桜葉学園を受験するよう誘う。佳織は最初、返事をせずに何かを考えている様子だったが、翌日、信一に「私、中学受験をする」と宣言するのだった。
ここがポイント
社会に出るまでは気づきにくい、「学歴」による壁。後になって苦労すると気づくのでは遅く、そのことを教えてくれる両親というのは、子供にとってありがたいのではないだろうか。
この父親が偉いのは、子供にだけ「勉強しろ」というのではなく、一緒になって勉強しようとするところだろう。
詳細なあらすじ
2017年2月2日、桜井信一(阿部サダヲ)は、一人娘・佳織(山田美紅羽)とともに、桜葉学園の合格発表会場にいた。信一は、「目に入れても痛くない」という愛娘・佳織に、勉強を教えたのだった。
1年半前、佳織の「全日本統一小学生テスト」が届いた。佳織は、「全部答え書けた」と言い、その結果を信一は楽しみにしていた。「トンビが鷹を生む」などと中卒の信一は考えていたが、その結果は「26,021人中25,005番」と、散々な結果だった。
信一は、通学する佳織とともに仲良く通勤する。彼は、不動産の営業マンだった。上司から信一は、新入社員の楢崎哲也(風間俊介)の指導を行うように、と言われる。
信一は、情報ばかりに頼る楢崎に、「情報じゃない。心を込めて接客するんだ」と指導する。上客を朝高級マンションを紹介する。そこで、楢崎はリサーチした情報をもとに客と話を行う。また、楢崎はその客と同じ大学出身であり、一気に心を掴む。出身大学について訊かれ、信一は「”中卒”大学です」と答え、ポカンとさせてしまう。
信一は、楢崎と飲みに行き、そこで同じく中卒の妻・香夏子(深田恭子)との馴れ初めを話す。可愛くて働き者の香夏子だったが、「ただ、唯一の欠点はバカなんだ」と愚痴る。
信一は、香夏子に「佳織を、塾に入れて勉強させようか」と言う。だが、学歴にこだわりのない香夏子は反対する。
信一は、部長から呼ばれ、「お客が、『楢崎さんだけに担当をしてもらいたい』と言ってきた」と告げられる。大卒の楢崎とは話が合ったが、信一は「ふざけてるだけ」などと言っていたのだという。申し訳なさそうな楢崎に、信一は強がりを言う。
だが実は、信一は楢崎に客をとられて落ち込んでおり、行きつけの居酒屋で愚痴る。「やはり学歴か」と思い、やりきれない思いを抱く。そんな中、ポストに中学受験を控えた塾生募集のチラシを見つける。
信一は香夏子に、「とりあえず、入塾テストだけ受けさせてみないか?」と言う。だが、香夏子は「お金もかかるし」と言って、渋る。信一は、なおも食い下がり、「マンションを売るから。そしたら、通わせてやってくれ」と言う。香夏子は「佳織がイヤと言ったら、ダメだからね」と条件を出す。
佳織は、入塾テストを受ける。塾へと送る信一の方が緊張をしていて、佳織は落ち着くように深呼吸をさせる。
桜井家に、緊急の連絡が入る。信一の父・一夫(小林薫)が、入院する病院でテレビを壊そうとしたためだった。一夫は、病院ロビーのテレビ画面に、トクガワ開発社長・徳川直康(要潤)を見て、チャンネルを変えようとするも、分からず画面を杖で殴ったのだった。
一夫は、その他にもトラブルを起こしており、病院の事務員は「苦情が殺到しております」と言う。結果、一夫は強制退院させられてしまう。
信一は、一夫を連れて自宅へと連れて行く。そこで、香夏子はすき焼きや大吟醸で一夫をもてなす。
行きつけのレンタルビデオ店で、店主が児童福祉法違反で誤認逮捕されていたことが明らかになる。信一は、「誤認逮捕」に意味が分からない一夫に啞然とする。
その晩、夢に将来苦労する佳織の姿を見てうなされる。入塾テストの結果、やはり半分以上不正解であった。入塾した場合、やはり一番下のクラスであった。ショックを受けた信一は、塾に入れることをやめる。
「佳織、勉強しなくてもいいの?そしたら、中卒かな…」と悲しそうにつぶやく佳織に、信一はかける言葉がなかった。
信一は、生涯年収と学歴の関係、中学受験などについて調べ始める。その中で、「無限大の未来への入り口がここにはある」と書かれた、桜葉学園のホームページを見かける。
信一は、「佳織の将来の姿を夢で見た。安い給料の旦那と、いつもケンカしてる。いつもスーパーで節約しようと考えてる。今のお母さんみたいに…親は、腹いっぱい食わせるだが役割と思っていた。だが、違うんだ」と言う。
さらに、信一は「人生は、途中からでは変えられないんだ。しまった、と思っても、途中からじゃ無理なんだ。中学卒業して入社した時、親父に『頑張れば男はなんでもできる』と言った。俺もそう思ってた。でも、違ったんだ。見えない天井があるんだよ。頑張って階段上がっても、そこから上に行けないんだ。そこから上に、もっと素敵な人生があると分かってるのに。そこが見えてるのに、そこには行けないんだよ」と言う。
さらに、「別の入り口があるんだ。俺は、そこを通り過ぎてしまった。今さら、そこには戻れない。佳織はまだ間に合うんだ…お父さんと一緒に、中学受験をしよう」と佳織に言う。
香夏子は、「信ちゃんが、自分の人生への不満をぶつけてるだけじゃない」と呆れる。佳織は、返事をしなかった。
徳川直康(要潤)は、麻里亜(篠川桃音)の転校手続きを勝手に進める。麻里亜は、父親を避けている様子だった。
佳織は、意を決して信一のもとへと向かう。息を切らせて佳織は、「私、勉強する。中学、受験する!」と宣言する。その時点で、佳織の偏差値は42。だが、最難関の中学を目指すのだった。