就職活動中の大学生・西原(鶴見辰吾)は、商社への就職を考えていた。ゼミのOB・高野を頼り、西原は会社訪問を行う。だが、高野は多忙であり、「会議が終わるまで、B1階にある社員食堂で待っていてくれ」と言われる。
西原は、エレベーターに乗ってB1階を押す。すると、他の社員たちを見て「俺も、会社員になったら、こんな平凡な人々になるのかな」などとぼんやりと思う。他の社員たちは1階で降り、西原だけがB1階へと向かうことになった。
だが、B1階で降りると、そこはなぜか屋上だった。屋上から下を見下ろしていると、社員らしき男性(津村鷹志)に声をかけられる。その男性は、「自殺する人間も、コンクリートは痛いと思うのか、途中で体をひねって植え込みに落ちるんだ」などと言う。さらに、「社食はまずい。外の店へ食いに行こう。そこで会社の話も聞かせてあげるよ」と男性は言うのだった。
声をかけた男性は、うなぎを食べながら「待遇がいいっていうのは、フェアウェイを歩く者だけにだ。そんな人間、1/5もいないよ」「冷たい会社だ」などと悪口を言う。
西原は、「この人は人事の人で、もしかしたら会社の悪口を言って反応を見てるのかも。ここは無難に答えておいたほうがいい」などと考える。「失礼ですが、お名前を伺っても?」と言う西原に、男性は「市井です」と言って名刺を渡す。市井は、第三営業部の係長なのだという。
その後、西原は高野と会って話を聞く。高野は、「覚悟が決まったら言ってくれ。人事部には話を通しておくから」と言う。その帰り、西原は1階に下りるのだが、エレベーターから出ると、そこは再び屋上だった。
再び下を眺めていると、今度は警備員(川崎敬三)に声をかけられる。警備員もまた、この会社の元社員なのだという。そこで、市井という社員が「つまらないミスで詰め腹を切らされ、屋上から飛び降り自殺をした」と聞かされるのだった。
西原は、「市井さんは、植え込みに落ちたんですか?コンクリートですか?」などと訊ねる。警備員は、「コンクリートだったよ。私は、体をひねって植え込みだった」と答える。
西原は、この会社に就職するのはやめよう、と心に決める。そして、西原は今度、エレベーターではなく階段を選んで降りることにする。「ドアが開いてまた屋上だったら、たまらない」などと西原は思うのだった。
1990年8月23日放送 脚本:小中千昭