あらすじ
ジェシーとジェラルドは夫婦であったが、セックスレスとなり、関係も冷めてしまっていた。その状態を変えるべく、ジェシーたちはアラバマ州の人里離れた湖の家を訪れる。
ジェシーはセクシーなネグリジェを着て、ジェラルドはバイアグラを服用した上で拘束プレイのためジェシーの両手とベッドの柱に手錠をかける。だが、そのプレイ中にジェシーは本気で拒む。その理由は、ジェシーの「隠された過去」にあった。
口論になった末、ジェラルドは心臓発作を起こしてそのまま死亡してしまう。ジェシーは手錠で拘束されたままであり、さらには助けを呼んでも誰も来ない。絶望的な状況となり、ジェシーは次第に幻覚を見始める。
死亡しているはずのジェラルドの姿、そして拘束から解放された自分自身と会話をしながら、ジェシーは生き延びる末を考える。そんな中、野犬が家の中に入り込み、ジェラルドの死体を貪り始めるのだった。
また、夜になって彼女は部屋に「化け物」の姿を見る。彼は異様な顔や手をしており、装飾品を数多く身につけていた。その化け物もまた、彼女は幻覚だと考える。
そんな中、ジェシーは12歳の頃の忌まわしい記憶を思い出す。実の父親がジェシーに欲情し、彼女を膝に乗せたまま自慰行為を行い始めたのだった。父親は「このことは誰にも言ってはいけない」とジェシーに言い、彼女に「手錠」をかけたのだった。ジェシーはその約束通り、この出来事を内に秘めて苦しみ続けていた。
その記憶の中で、彼女はコップを割って指を怪我したことを思い出す。そのことをきっかけに、彼女は「ジェラルドがベッド近くに置いたグラスの破片で手首を傷つけ、自らの血液を潤滑剤として手錠から手を抜く」という方法を思いつく。手首の皮膚がめくれ上がり、大きな痛手を負いながらも右手を引き抜くことができ、近くにあった鍵を手にして左手の手錠も解除することに成功する。
ついに自由になるも、既に1日半が経過していた。脱水と出血でふらついた彼女はそのまま倒れてしまう。犬に噛みつかれながらも撃退し、外に出ようとする。その途中、彼女は「化け物」に自らの結婚指輪を渡すのだった。
夜になっていた森の中、彼女は車を走らせる。だがジェシーは気を失うように眠ってしまい、木に激突してしまう。その事故を聞きつけ、警察がかけつけて彼女は救助される。
右手は皮膚移植を受けながらも、不自由さや痛みが残っていた。そんな中、彼女はペンを持って今までの出来事を手紙にまとめる。救助された後、ジェラルドの死は自然死とされ、事件性はないと判断された。だが、化け物に渡した指輪は発見されなかった。
ジェシーは子供の頃の性被害の経験をもとに、同様のことで悩む子供たちのため、基金を設立して自らも話を聴いて相談を受けるようになった。そんな中、成長ホルモンの過剰分泌が原因となる末端肥大症のジュベールが逮捕される。「幻覚」と思い込んでいた化け物は実在していたのだった。
ジュベールが殺人や死体損壊、墓地からの装飾品の盗掘などの罪で裁判を受けることとなった。その場でジュベールは、ジェシーに向かって彼女が言っていた言葉「あなたは月夜の幻」を繰り返す。そこでジュベールはあの部屋にいたことが明らかとなるのだった。そんなジュベールにジェシーは、「思ったより小さいわね」と言って裁判所を立ち去る。
考察
ジェシーはジェラルドの拘束プレイ中、「手錠をかけられる」「パパやめてと言ってごらん」などといった言葉に激しく反応し、プレイを拒絶する。
その理由は、父親から受けた性的虐待(彼女を膝の上に乗せて、自慰行為を始めるという)、そして「絶対に秘密にするんだ、誰にも言ってはいけない」とあたかも彼女に手錠をかけて拘束するかのような経験がトラウマとなっていたことが原因だったとジェシーは振り返る。
だが、ジェシーは自らの秘密を同じ悩みを持つ人々に打ち合けたことで、まるで手錠から解放されたように呪縛から解き放たれる。結果、裁判所で出廷しているジュベールに父親、そしてジェラルドを重ね合わせるのだが、「思ったよりも小さいわね」と辛い過去を乗り越えられたことを思わせるセリフで締めくくられる。
なお、ジュベールが部屋にいたことを示す証拠としては、「野犬がジュベールに怯え、部屋から出ていった」「なくなった結婚指輪」「裁判でのジュベールのセリフ」が示している。