簡単なあらすじ
・ガウディ計画
1) 元 佃製作所の社員であり、アジア医科大学の先端医療研究所に勤める真野賢作から、佃製作所に「小児用の人工弁の共同開発をして欲しい」と依頼される。
2) 医療機器であり、訴訟リスクもあることで佃航平社長は躊躇うが、同じく共同開発を行っている株式会社サクラダの桜田章社長の「弁膜症で亡くなった娘のために人工弁開発を始めた」という熱意を知り、そして北陸医科大学の一村隼人教授の研究者、そして心臓外科医としての手腕も知り、佃は人工弁開発プロジェクト「ガウディ計画」を開始する。
3) だが、認可のためにはPMDAで審査員たちを説得・納得させる必要があった。大企業が共同開発していないこともあり、一度目の面談はほぼ門前払いであった。背後には、一村教授の人工弁の手柄を我が物にしようとするも、出資を断られた貴船教授が認可をさせまいと審査員に根回ししていたことも関係していた。
4) 貴船教授は、自ら研究を進めていた人工心臓「コアハート」の臨床試験中、患者が死亡する。対応した研修医の指導を怠ったとして、准教授の責任にしようとするが、准教授はコアハートのバルブの欠陥として、ジャーナリスト・咲間倫子に情報をリーク。結果、バルブを日本クラインから受注したサヤマ製作所のデータ改ざんが明らかとなり、サヤマ製作所・椎名社長の逮捕、貴船教授の失脚といった結果となる。
5) 人工弁の開発チームリーダー・立花洋介らは粘り強く開発を続け、2度目のPMDAの場で、「人工弁を待ち望む子供たちがいる。そんな子供たちの命を守ろうという強い意欲がある会社ならば、どんな会社だろうと、その会社の大小は関係ない。製品が優れているかどうか、その尺度で見て欲しい」と訴え、認可を取り付ける。
・ロケット計画
1) 苦労して帝国重工に取り付けていたロケットエンジンのバルブが、「別会社とのコンペで、どちらを採用するか決める」と一方的に決められてしまう。そのコンペで負ければ、バルブ受注がなくなり、さらには巨額の資金投入をしているため、大きな痛手となってしまう。
2) コンペの相手はサヤマ製作所であり、一騎打ちとなる。だが、サヤマ製作所は、帝国重工と共同開発を行っており、自社製品での内製化を進める帝国重工という背景もあり、佃製作所にとって分が悪い勝負だった。なおかつ石坂宗典部長は、財前道生のライバルであり、佃製作所に肩入れする財前にダメージを与えようとする社内紛争でもあったのだ。
3) 佃製作所は、燃焼テストで好成績をおさめ、サヤマ製作所のバルブにデータで勝つが、内製化を強く主張する石坂により、サヤマ製作所のバルブが採用される。だが、人工心臓「コアハート」のデータ改ざんが明るみとなり、結果、佃製作所のバルブが採用される。
4) さらに、バルブ内に異物が入らないようにするセンサーや、シュレッダー装置の構想についても佃は財前に話し、共同開発を取り付ける。財前は、この技術は血栓の破砕などにも利用できると考え、佃製作所は帝国重工との共同開発の中、冠動脈バイパス手術などにも活用する道を探っていくのだった。
起:人工心臓「コアハート」
佃製作所は、医療機器大手メーカーである日本クラインから、用途不明なバタフライバルブ製造を依頼される。試作に対する対価は少なく、赤字であったが「量産をする」という前提のもとで佃航平社長は仕事を引き受け、開発部の中里淳が担当することになる。
元 佃製作所の社員であり、アジア医科大学の先端医療研究所に勤める真野賢作は、同大学の胸部外科教授・貴船恒広が人工心臓「コアハート」を開発しており、その人工心臓に使うためのバルブではないかと明かす。
人工心臓「コアハート」は、元々 貴船教授の部下、一村隼人がアイデアを出し、デザインしたものだった。そのアイデアを貴船教授が横取りした。一村は、北陸医科大学の教授となり、袂を分かっていた。
一村は、小児用の心臓人工弁の開発に乗り出していた。その話を聞きつけた貴船教授は、その開発に出資して手柄を横取りし、人工心臓の開発とともに自らの実績とし、学長の座を狙おうとするが、一村は貴船教授の拙速な研究開発で失敗させたくない、と出資を断る。
一方、佃製作所には受難が待ち受けていた。苦労して帝国重工に取り付けていたロケットエンジンのバルブが、「別会社とのコンペで、どちらを採用するか決める」と一方的に決められてしまう。そのコンペで負ければ、バルブ受注がなくなり、さらには巨額の資金投入をしているため、大きな痛手となってしまう。
コンペに参加するのは、サヤマ製作所であり、その会社は帝国重工とバルブの共同開発を行っているのだという。ロケットエンジンの開発で、内製化を進めたい帝国重工の社内方針にとっては、サヤマ製作所を採用したいという意図が見え隠れしたいた。
さらに、サヤマ製作所との取り引きを進めているのは、帝国重工の石坂宗典部長であり、石坂は財前道生のライバルだった。財前が採用したバルブから、サヤマ製作所との共同開発したバルブに乗り換えさせたいと考えていたのだった。
承:人工弁開発
日本クラインから受注していた試作品について、佃製作所は「設計を変更したい」と急に申し入れられる。相談もなく、下請けを見下しているような藤堂保の態度もあり、佃は下請けを断る。結果、人工心臓のバルブ製造を、サヤマ製作所が引き受けることとなった。
この一件に日本クライン側へ抗議をした真野は、先端医療研究所を辞め、一村教授とともに北陸医科大で研究開発を行うこととする。真野は、一村教授が推し進める人工弁の開発について、佃製作所に共同開発を持ちかける。
医療機器は全くの門外漢であった佃製作所にとって、訴訟リスクもある医療分野への参入は大きな問題だった。社内での営業第二部長・唐木田篤の反対もあり、佃は真野の提案を断る。だが、同じく共同開発を行う株式会社サクラダの桜田章が、娘を心臓弁膜症で亡くしており、人工弁開発を並々ならぬ覚悟や熱意で行っているということに打たれ、佃は考え直す。さらに、一村教授が心臓外科医として一流の腕を持ち、なおかつ研究者としても優れているということを聞き、ついに人工弁の開発「ガウディ計画」に乗り出す。
サヤマ製作所で行われている、日本クラインから受注したバルブ開発は、目に見えた成果が現れなかった。そこで、サヤマ製作所は、様々な会社から技術者をヘッドハントしてきた。
その中で、佃製作所の中里淳も引き抜かれ、バルブ開発に当たっていた。中里は佃製作所の山崎光彦 技術開発部長が提案していた設計を、日本クライン側へと渡してしまう。
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転:PMDAという壁
佃製作所も参加した「ガウディ計画」で、人工弁の臨床試験前に行われたPMDA(医薬品医療機器総合機構;医療機器・医薬品などの品質や安全性の審査業務を行う公的機関)による事前面談が行われる。だが、そこで滝川信二という専門員は、大企業が開発に参加していないことで、始めから開発計画について認めない様子で、PMDAの開発許可が下りないという事態に陥る。
滝川は、貴船教授の息がかかった人物だった。貴船教授は一村教授が出資を断り、自らの手柄とするために人工弁を差し出さないことから、審査を通さないよう滝川に働きかけていたのだった。また、一村教授の人工弁に関する論文も、貴船教授の圧力で学会誌への掲載が見送られてしまう。
PMDAの結果が芳しくなかったことから、株式会社サクラダの桜田社長は、親会社の経営を任せている弟・努から、「成果がなければこれ以上の出資はできない」と言い渡されてしまう。
PMDAの面談で、中小企業では分が悪いことから、佃は帝国重工の財前に提案を行う。佃は、「バルブに異物が入ってきて誤作動を行いよう、センサー付きのシュレッダーを開発した。この技術を共同開発とする代わりに、人工弁も共同開発ということにしてもらいたい」と言う。帝国重工に名を連ねてもらい、PMDAでの話し合いを有利にしたいと考えていたのだった。
一方、佃製作所は、ロケットエンジンのバルブの性能テストを行う、燃焼試験の前倒しを帝国重工の富山啓治から急に言い渡され、不利な状況となる。帝国重工の石坂や富山の意向で、サヤマ製作所有利になるよう、明らかに嫌がらせをされていたのだった。
性能テストの結果、佃製作所の製品の優位性が証明されるが、「誤差の範囲だ。それならば共同開発のサヤマ製作所に製造依頼すべきだ」と石坂が主張し、佃製作所は採用されなかった。
結:ガウディ計画の結実
貴船教授が進める人工心臓「コアハート」の臨床試験が開始されるも、1人の患者が急変し、死亡する。当直を行う研修医に、適切な指示を行っていなかったとのことで、貴船教授は、巻田英介准教授に責任を負わせて、事故を終結させようとする。
だが、巻田准教授はコアハートの耐久性に問題があり、破損したことが問題ではないかと考え、コアハートの設計図をジャーナリスト・咲間倫子に渡す。咲間は事故を調査し、サヤマ製作所でのデータ改ざんを疑う同社社員・横田信生から、実験データを手に入れ、そのデータには、意図的な改ざんの可能性があった。
横田の内部告発をきっかけに、咲間は臨床試験での死亡、そしてサヤマ製作所のデータ改ざんについて記事を書き、その記事は週刊誌に掲載される。問題が露見し、サヤマ製作所の椎名社長は責任を追求される。
この件を受け、ロケットエンジンのバルブに関しても、サヤマ製作所の受注はなくなり、佃製作所が再び受注を請け負うこととなった。
一方、佃製作所の面々や一村教授、桜田社長らはPMDAに再度臨む。滝川の執拗な嫌がらせのような指摘に対し、心臓人工弁の開発チームリーダー・立花洋介は、「人工弁を待ち望む子供たちがいる。そんな子供たちの命を守ろうという強い意欲がある会社ならば、どんな会社だろうと、その会社の大小は関係ない。製品が優れているかどうか、その尺度で見て欲しい」と訴える。
結果、PMDAの山之辺敏 審査役リーダーの意見で、開発許可が下り、ついに人工弁の開発は実を結ぶ。
貴船教授は、教授職を解かれ、地方の病院医院長に赴任することとなった。サヤマ製作所・椎名社長は逮捕され、専務が同社の社長となった。
日本クラインは、再度、人工心臓のバルブ開発について佃製作所に依頼するが、佃はそれを拒否する。そして、現在、開発中のバルブについては、3年前に佃製作所が特許をとったものであり、中里が持ちだした設計については、特許使用許諾を認めない、と言い渡す。中里は、設計を日本クライン側に渡したことを佃に謝罪する。中里は、サヤマ製作所に留まり、仕事を続けると言うのだった。
ガウディ計画は成功に終わるが、バルブ開発者の立花は、もう既に血栓バイパス手術用に使う、血栓を粉砕するシュレッダー開発に乗り出していた。桜田社長は、亡き娘に人工弁開発が成功したことを報告し、遺影の前に供えるのだった。