神代広平(福山雅治)は、かつてプロミュージシャンだった。だが、今は女性の家を転々とする生活だった。神代は合鍵を置き、同棲していた女性に別れを告げる。頬を張られ、神代は、少ない荷物とギターケースを担いで出て行く。
佐野さくら(藤原さくら)は、大型車販売店「ビッグモービル」の整備工場で整備補助として働いている。上司の滝川文雄(木下ほうか)に、新人・高橋正志(阪本奨悟)を指導するよう言われるが、まともに返事をせずに注意される。さくらは、仲間たちとも会話をしない。だが、愛想はよく、仲間はずれにされるような様子はなかった。
一方、神代は臨床心理士として、この会社に週2日勤務していた。仕事を終え、神代はライヴハウス『S』を訪れる。オーナーの笹裕司(宇崎竜童)に、当面の宿を笹に頼むが、断られてしまう。
神代の以前のバンド仲間たちも、みんな結婚して頼むことはできなかった。笹は、宍戸夏希(水野美紀)に頼めば良いと言うが、気が進まないようだった。
さくらは、ルームシェアしている中村真美(夏帆)に、新歓コンパ用の店を予約して欲しいと頼む。さくらは吃音(どもり)があり、真美以外の人と上手く話すことができないようだった。
夏希に泊まらせて欲しいと頼むのは気がひけ、マンガ喫茶に泊まろうとする。だが、狭くて居心地が悪く、迷惑がられながらも、仕方なく夏希の家に転がり込む。
さくらは、背後に機械が近づく高橋に声をかけることができず、体当たりで危険を知らせる。その様子を見ていた滝川は、コミュニケーションが苦手だというさくらを神代に診せる。
神代は、さくらに問診を行うが、さくらは口を開かない。神代は「あなたが話したくなったら話してください」と言い、さくらが話すのを待つ。さくらは、乾燥して喉がいがらっぽいと誤魔化す。神代はお茶を差し出し、熱さにむせるさくらは、心配する神代に「大丈夫です」と言い、そこで彼はさくらの吃音に気づく。
神代は、さくらの顔に付いた汚れを拭き取り、恥ずかしくなったさくらは面談室から逃げ出す。仕事場に戻った彼女の表情には、自然と笑みが浮かんでいた。
さくらは家に戻ると、会社の先輩・野村健太(駿河太郎)がやってきて驚く。野村と真美は結婚することになり、その報告をしにやってきたのだった。真美は、「さくらに、結婚式のスピーチをして欲しい」と言うが、さくらは「買い出しに行く」と言ってその場を逃げ出す。
神代は、夏希に吃音について相談する。「吃音を治すのは難しい。特に成人になってからは。軽減するのはできるんだけども。吃音を受け入れて、上手に付き合っていく必要があるかもね」と夏希は言う。
2013年4月、真美はさくらを連れて新宿を歩いていた。さらに遡ること2年前、真美はさくらよりも先に広島から上京したのだった。さくらは、児童養護施設で育った。そこには、真美もいた。吃音でいじめられていたさくらを助け、真美とさくらは仲良くなった。
さくらは戻ると、真美に「子供ができた」と明かされる。「親に捨てられたのに、母親になんかなれるのかな」と真美は不安を口にする。「だけど、この子に凄く会いたい。きっと彼は良い父親になってくれると思う…でも、私がお母さんでしょ。ちゃんと家族になれるのかな?」と言い、さらに「スピーチ、しなくていいからね。無理言ってごめんね」と真美は謝る。
翌朝、さくらは神代の勤務する病院を訪れ、「吃音を治したい」と必至に伝える。「時間をかけ、上手く吃音と付き合っていくべきです」と神代はアドバイスする。だが、友人のためにスピーチをしたいと考えるさくらは、そんな神代に見切りをつけ、診察室を出て行ってしまう。
後日、さくらは仕事場の休憩室で神代に会い、気まずくなってあからさまに避ける。さくらが落としたクーポン券を神代は拾う。さくらは、居酒屋に予約の電話をしようとするが、上手くいかず、友人・天野空一(菅田将暉)に練習を頼む。
ライヴハウス『S』で、故人を追悼するイベントが行われる。バンド仲間はセッションを行うが、神代は複雑な表情でギターを弾こうとはしなかった。
さくらは居酒屋に電話をするが、上手く言葉が出てこない。一言も発することができず、さくらは電話を自ら切って、1人身もだえる。
神代はギターを手に取るも、ついに弾かずに置いて出て行ってしまう。神代は、拾ったクーポンを使って飲みにきた居酒屋で、店にやってきて予約をしにきたさくらの姿を見かける。必至になって吃音を克服しようとするさくらの姿を見て、神代はさくらの吃音を治してやりたいと思う。
さくらが仕事場で、好きな曲をハミングしている様子を神代は見かける。その声に、神代はかつてのバンド仲間の故人の歌声を重ねていた。
さくらは、同僚に「予約がとれた」と嬉しそうに伝える。だが、別の店が良いということになり、苦労して予約した店はあっさりとキャンセルされてしまう。
ゲームセンターでギターのゲームを行っているさくらに、神代は「やりますね」と声をかける。だが、さくらは逃げ出す。神代は「吃音の専門家がいるって話をしたじゃないですか…」と言うが、さくらは「吃音じゃろうが、なかろうが、私の人生は変わりはせん!」と言って、駐車された自転車を倒してバイクで走り去ってしまう。
神代はさくらに電話をかけるが、その電話番号はでたらめだった。診察室に野村が現れ、相談する。さくらは無断欠勤しており、それを聞いた真美は、さくらを叱りつける。言い合いになり、さくらは「結婚なんかせんといて!」と言う。真美は「しっかりしてよ」と自立して欲しいと言うが、さくらは聞く耳を持たずに部屋を飛び出す。
さくらは踏切を乗り越え、電車に飛び込もうとするが、それを神代が止める。だが、さくらを襲っていると勘違いした天野は、神代にめがけて頭突きをしてしまう。
神代は、夏希のクリニックにさくらを連れて行く。そこで、神代は「音楽好きですよね?音楽でトレーニングしてはどうですか?」とさくらに提案する。夏希も音楽療法の提案に乗り、神代は「好きな歌、あるでしょ?」と歌うように促す。
さくらは、必死になり、絞りだすように歌う。神代は、ギターを取り出し、さくらの歌に合わせて弾く。さくらは『500マイル』を泣きながらも歌い切る。
逃げ出すように立ち去るさくらに、夏希は診察券を渡す。さくらの姿を見送ると、夏希は神代に「彼女、お姉ちゃんに似てるね」と言い、神代は「どこが?」ととぼけるようにして言う。