簡単なあらすじ
1) 公園で、女性の右腕が発見される。犯人はテレビ局に電話し、「腕は、鞠子のものではない。彼女は別の場所に埋めてある」と告げる。そこから、被害者の家族たちを巻き込んだ劇場型の犯罪が展開していく。
2) 連続誘拐殺人事件として、警察は捜査を行う。有馬義男(橋爪功)は、孫娘・鞠子を救いたい一心で犯人に翻弄され続ける。だが、殺害された娘の骨が発見されてしまう。鞠子の失踪事件を追っていたルポライター・前畑滋子(中谷美紀)は、取材を再開する。その取材の中で、事件の第一発見者であり、一家惨殺事件の生き残りである塚田真一(濱田龍臣)と出会うのだった。
3) 事件を実行していたのは、栗橋浩美(山本裕典)だった。彼は、亡くなった姉の幽霊に悩まされ続け、その亡霊から逃れるため、殺人を繰り返していた。そして、それを指南し、劇場型の犯罪を計画したのは、ピースこと網川浩一(坂口健太郎)だった。
4) 栗橋は、幼なじみの高井和明(満島真之介)に罪をなすりつけ、事件の幕引きを図ろうとしていた。だが、高井は栗橋のことを心配しつづけ、守ろうとしていた。そんな高井の気持ちに打たれ、栗橋は警察に出頭しようとする。だが、そんな2人を網川は転落死させる。警察は「栗橋と高井が、連続誘拐殺人事件の犯人」であると発表するのだった。
5) 滋子は、犯人からの電話に、「女ばかり狙う卑怯者」と罵倒する。その言葉によって、栗橋は成人男性である木村庄司を殺害していた。木村が殺害されたことで、滋子は自責の念に囚われる。
ここがポイント
女性連続誘拐殺人事件が発生し、被害者の家族を巻き込んだ劇場型の犯罪が起こる。実行犯は栗橋浩美(山本裕典)であったが、事件を計画し、栗橋を操っていたのは、ピースこと網川浩一(坂口健太郎)だった。
網川は、栗橋および高井和明(満島真之介)を事故死させ、証拠を残した上で彼らを犯人に仕立て上げる。網川は、この事件についての書籍を出版し、「真犯人Xは別にいる」と主張し、自分の作家性を世間に認めさせようとしていた。
一方、事件を追うルポライター・前畑滋子(中谷美紀)は、この一連の事件についての記事で一躍有名となるが、「女ばかり狙う卑怯者」と犯人を罵倒して刺激たことで、世間からのバッシングを受けてしまう。
起:発見された右腕
高校生の塚田真一(濱田龍臣)は、自宅マンションに戻った。すると、玄関のドアは開いており、幼い妹や母、父親までが惨殺されていた。真一は声も上げられずにリビングで腰を抜かした。
1年後、真一は飼い犬の散歩に出かける。リードを離してしまい、犬が勝手に走り出してしまい、ゴミ箱に捨てられた人間の右腕を見つける。
豆腐屋の店主・有馬義男(橋爪功)は、東京・台東区の公園で、女性の右腕が発見されたニュースを知る。有馬は、古川真智子(室井滋)から電話を受ける。
「DNA鑑定をしたいから、鞠子(松本穂香)のクシなんかをもってきてほしいって警察に言われた」と真智子は話す。真智子の娘・鞠子は失踪し、右腕とともに鞠子のカバン・定期券が発見されたため、警察は右腕が鞠子のものと考えていたのだった。
真智子は、「私の夫が女を作って出てったので、鞠子も悩んでいて行方不明になってしまったのではかもしれない」と言う。
だが、犯人らしき人物からテレビ局に電話があったという。ボイスチェンジャーの声で、「腕は、鞠子のものではない。彼女は別の場所に埋めてある」と告げたのだという。武上悦郎(岸部一徳)刑事は、報道を控えさせた上で、「録音した音声を提出させろ」と言う。
真智子は、呆然として警察署を出ていった。彼女はふらついた足取りで歩いており、そんな彼女はトラックに惹かれてしまう。
承:取材再開
ルポライターの前畑滋子(中谷美紀)は、ニュースで鞠子の名前を聞く。滋子は、失踪女性のルポで、彼女の名前に聞き覚えがあったのだった。
滋子は、警察署に向かう。「予算の都合や、テーマが地味だとかで、記事は掲載されませんでしたが、再開したいと思うんです」と滋子は言うが、「売れそうだから再開か?ふざけんな」と警察官に追い返されてしまう。
滋子は、雑誌『サブリナ』編集長の板垣雅子(高畑淳子)に会いに行く。そこで、ルポを再開させてもらいたい、と言う。「自分の力に疑問を感じて仕事を辞めたんですが、書くことに未練があって…もう一度、書かせてください」と頼み込む。
雅子は、「これはただの失踪事件じゃない。殺人事件、しかもバラバラ殺人事件。…最新情報によると、腕は古川鞠子じゃない可能性もある」と言う。さらに、「マスコミは加熱、軍畑状態。そこに半分主婦のアンタが入ってきて、戦えると思う?」と言う。
それでもやりたい、と申し出る滋子に、「一家惨殺事件の被害者が、今回の右腕の発見者。その切り口で書く図太さがある?」と問う。
真一は現在、父親の友人であるという石井に世話になっているのだという。滋子は、真一の住所を教えられて訪れる。だが、真一を追いかけてきた若い女性に玄関に居座られてしまい、滋子は真一に電話をかけ、「助けが必要なら、私が…」と言う。
滋子は、裏口から出てきた真一を連れ出す。「取材させてほしい」と滋子は言うが、真一は「警察には何も話すなと言われています」と断る。だが、真一は自分を匿うことを条件に、「取材に協力させてください」と言う。
滋子は、真一を自宅にやってくる。そこで、自宅の前にいたのは樋口めぐみ(久保田紗友)であると明かす。めぐみは、真一の家族を殺した犯人の娘であり、死刑が求刑されている父親のため、「減刑嘆願書にサインしろ」と迫ったのだった。
犯人は、真一が「父親が、祖父の遺産1千万円を相続した」とゲームセンターで口を滑らせたのを聞いた、店長だった。押し入って金だけを奪う予定だったが、抵抗されて全員を殺害したのだった。
悲しい身の上を知った滋子の夫・昭二(杉本哲太)は、「いつまでも一緒にいていいからね」と言う。そして、真一は「ルポの取材の手伝い、させてください」と申し出るのだった。
滋子は、古川家を訪れる。だが、真智子が交通事故に遭ったこともあり、豆腐店は「しばらく休業します」と張り紙が貼られていた。
義男は、真智子の夫・茂に会う。そこで、真智子の容態について話すのだが、茂に「一緒に暮らしている女が妊娠しました」と告げられ、義男は呆然とする。
茂が出て行った後、家に電話がかかってくる。ヴォイスチェンジャーのような声で電話をかけてきた人物は、「鞠子の命は、爺さん次第。今日、テレビに出て、土下座しろ。『鞠子を返してくれ』ってな」と言う。
義男は、「アンタが本当に犯人か証拠を見せてくれ」と言う。すると犯人は、「今夜7時、ロイヤルウェスタンホテルに来い。取り引きしよう」と言う。
義男がホテルに向かうと、フロントで手紙を渡される。そこには、「8時に最上階のバーで待て」と書かれていた。手紙を持ってきたのは、制服を着た女子高生だったという。
8時になると、義男に電話がかかってくる。「俺が本物だって証拠は、鞠子の家にある」と犯人は告げる。義男が家に戻ると、そこには、義男がプレゼントした鞠子の腕時計が置かれていた。手紙も添えられており、「これで俺が本物だって分かったか?これで終わりじゃない。むしろスタートだ」と書かれていた。
転:鞠子の死
日高道子は、娘・千秋が3日間連絡もなく行方不明になっていることを心配していた。犯人は、「思い出の公園で、千秋が待ってるぜ」と言う。
道子は公園に行くと、千秋が滑り台に座らされていた。だが、千秋の首には絞められた痕があり、死亡していた。警察の調べで、ホテルに手紙を届けたのは千秋であることが判明した。
警察は、犯人がヴォイスチェンジャーではなく、機械的に作った人工音声を仕様しており、声門の照合ができなかった。「犯人は犯罪捜査に詳しい人物」であると武上刑事は考える。さらに、腕が発見された周辺で、盗撮の犯罪歴のあった人物が目撃されていたことが判明する。
義男は店で、再び犯人からの電話を受ける。義男は胸を押さえ、苦しそうにしていた。そんな彼に、犯人は「私は弱くて惨めなジジイです、と言え」と言う。義男はその言葉を言わず、犯人は「鞠子がどうなってもいいのか?」と言う。
店には武上たちが詰めていた。ネット経由で電話がかかっており、発信元は割り出すことができなかった。義男は、「犯人は、鞠子の声を聞かせない。鞠子はもう死んでいる」と言う。だが、武上は「犯人は人間です。人間なら掴まえられる」と言う。
坂崎弘光(温水洋一)は、「犯人から電話がありました」とHBSのスタッフに言われ、運送トラックのサイドミラーにかけられたビニール袋を調べる。その中には、人骨と思われるものが入れられていた。
真一は、ニュース番組を観て動揺していた。「僕、負けたくないから」と言う真一に、滋子は「無理して戦わなくていいから。今日の取材、私1人で行って来る」と言う。
滋子は、有馬豆腐店を再び訪れる。そこには、取材陣が取り囲んでいた。義男は、「お騒がせしてすみません。今、歯型とDNAを照合しているところです」と明かす。
武上は、「残念です…DNA鑑定の結果、鞠子さんと判明しました」と告げる。滋子は、「店番なら、私がします」と言う。義男は一礼し、警察署へと向かった。
滋子は豆腐店に残り、「日常を奪う権利は、誰にもない」とメモする。するとそこに、犯人からの電話がかかってくる。「せっかく骨を返してやったのになぁ。ジジイの声、聞きたかったのになぁ」と言う。
滋子は、「女ばっかり狙う卑怯者、臆病者のくせに」と罵倒する。すると犯人は、「次は大人の男を狙う。男が死んだら、お前のせいだ」と言って電話を切る。
新聞に、「容疑者のイニシャルはT」という文字が踊り、武上刑事は驚く。警察は田川一義(笠原秀幸)を追っていたが、犯人からの電話がかかってきた際、理髪店で髪を切っており、電話していなかった。
田川は、HBSに出演し、「私は犯人ではない」と話を行う。浅川智也(山中崇)ディレクターは、「生放送なら、劇場型の犯人は電話をかけてくるはず」と考えていた。犯人からの電話がかかってきて、浅川は、電話をスタジオに繋ぐ。
犯人は、「モザイクの外に顔を出してみない?」と言う。「交換条件さ。Tさんが顔を出して名前を出してくれたら、大川公園に捨てた腕の残りの部分を返してやる」と言うが、CMに入ってしまい、激昂した犯人は電話を切る。
だが、CMが終わる直前、再び電話がかかってくる。「さっきみたいな無礼なことをしなければ、続けてもいいですよ」と犯人は言う。「僕の交換条件に乗りますか?Tさんが無実なら、顔を出しても大丈夫でしょ?拒否したら、世間はあなたが犯人と考えます。仲間と共謀して、こんな電話をかけさせたのだと思う」と言う。
田川は、顔を出して自ら「俺の名前は、田川一義だ」名乗る。そんな田川に、犯人は「君はバカだ」と言う。そんな中、「田川は、大川公園で8歳の子供を連れ去ろうとした」人物であると、子供の母親から電話がかかってくる。警察は、幼女連れ去りの容疑で田川を事情聴取する。
滋子は、番組を観ていて居ても立ってもいられず、義男のもとに向かう。彼女は、「CMの後に電話をかけてきた人物は、前に電話をかけてきた人物と違います…一人称は、『俺』だったにも関わらず、CM後は『僕』でした」と告げる。
その話を聞いた武上は、「あなた、何者です?」と尋ねる。すると、滋子は「記者をやってる者です」と明かす。武上に連れ出された滋子は、「犯人と何を話した?」と訊かれ、「怒鳴りつけてしまったんです。女ばっかり狙って卑怯だ、と。それで犯人が、『次は大人の男を狙う』と言ってまして…」と話す。
川崎市で、木村えり(藤吉久美子)に犯人からの電話がかかってくる。犯人は、「殺す前に、ダンナとよく話をしたよ。頼まれて家の模型を作ってるんだって?早く棺桶に入れてやりなよ」と告げる。
結:浩美と和明
群馬県警から、「転落したクルマのトランクから、消息不明であった木村庄司の遺体が発見された」との報告があった。さらに、運転席と後部座席に、拘束されていない人物の遺体が発見される。
「犯人が木村庄司を運んでいる最中に運転を誤り、転落死した」と考えられた。転落したクルマに乗っていた栗橋浩美(山本裕典)、高井和明(満島真之介)らが犯人であると考えた警察は、栗橋の家宅捜索を行う。そこで、被害者の写真や、右腕のない遺体が発見された。
高井と栗橋は同級生であり、高井は脚が悪く知能が低く、栗橋は精神異常をきたしていたのだという。武上は、「なぜこんなことを…」とつぶやく。一方、滋子は、「なんであんなこと言っちゃったんだろ…消えちゃいたい」と思う。
21年前、栗橋、高井、網川浩一と高井の妹・由美子はよく一緒に遊んでいた。浩美は、「この名前、死んだお姉ちゃんの名前なんだ。僕は、お姉ちゃんの幽霊に体を乗っ取られちゃう」と言うが、高井は「僕が守る」と言うのだった。
だが、栗橋は、無職で実家の金を巻き上げて遊んで暮らすような遊び人になっていた。栗橋が、HBSに電話をかけているのを、そばの出前配達中に高井は見かける。
高井は、栗橋に会いに行く。高井はそこで、栗橋がHBSに電話で話していた内容を復唱するかのように言い、番組では公表されていない「古川鞠子」という名前を出す。そして、「まだお姉ちゃんの幽霊、見る?」という高井に、栗橋は「見ねぇよ」と言って立ち去る。
高井は、マスコミを騒がせる事件を報道する記事の切り抜きを行っていた。そんな中、高井に栗橋が電話をかける。栗橋は、「俺、例の連続誘拐殺人事件の犯人に心当たりがあって。その犯人を追ってる最中なんだ」とウソをつく。
高井は、「浩美が警察に言わないのは、浩美の友達だからなんだろ・調べるのを一緒に手伝う」と言うのだった。
栗橋は、高井を別荘に呼び出す。「犯人の別荘にいるんだ。一緒に証拠を探してくれ」と言い、高井は別荘にクルマでやってきた。別荘には、網川もいた。
高井がやってくると、栗橋は地下の一室に連れて行く。そこには、木村庄司の遺体があった。栗橋は、高井に全てをなすりつけようと考えていたのだった。
栗橋は、高井を殴りつける。目を覚ました栗橋は、「俺が、連続誘拐殺人事件の犯人なんだ」と言う。すると高井は、「うん、そうだと思った。でも、もう一人犯人はいる。浩美を操ってるのは、ピース(網川)だ。ピースは危険だ。離れた方が良い」と言う。
だが、栗橋は「俺を姉貴の亡霊から解放してくれたのはピースだ」と言う。栗橋は彼女の岸田明美(石田ニコル)を、故意ではなかったが殺害してしまう。パニックになった栗橋を落ち着かせ、遺体を別荘に埋めるのを手伝ってくれたのがピースであったことを明かす。そこから、ピースが作った劇場型犯罪のストーリーを栗橋は展開していたのだった。
栗橋は、視聴者たちを魅了していると自負していたが、高井は「こんなストーリー、誰も望んでない。亡くなった人には、家族がいるんだ。その人たちに、全く説明できてないよ…世の中の大人は、浩美やピースが思ってるように冷血漢じゃないよ。テレビ局に電話したのも浩美、事件を起こしたのも浩美…このままでは、浩美だけが犯人にされてしまう」と言う。
高井は栗橋を説得しようとしたが、そこで網川は高井を麻酔薬で眠らせる。そして、「お化けビルで、浩美が殺すんだ」と言う。
栗橋は、高井を乗せて運転していた。目を覚ました高井は、栗橋に子供の頃の話を行う。いつまでも栗橋を守りたいという高井の話に、栗橋は「俺は、本当はカズのことが大好きなのに…なんでこんなことを、人殺しなんかしたんだろ?姉ちゃんの幽霊を見るんだ。殺しても、殺しても幽霊を見るんだ」と言う。
高井は、栗橋に「警察に行こう…犯した罪は消えないけど、ちゃんと浩美は治療するべきだ」と言う。栗橋はそれに同意するが、途中でブレーキが効かないことに気づく。「ピースは、俺も殺すつもりだ」とつぶやいた後、クルマはガードレールを超えて崖から落下した。
警察は、「高井と栗橋が共謀して一連の連続誘拐殺人事件を起こした」と発表する。武上は、「記者会見のタイミングが早すぎる」と考えていた。
滋子は、木村庄司が死亡したことで、自らの言動が招いたことと思い、「ごめんなさい…私のせいで殺された」とつぶたいて後悔する。そんな彼女は、網川と街ですれ違う。