簡単なあらすじ
1) 検事・冨永真一(玉木宏)は、幼女誘拐殺人事件でめざましい成果を上げ、東京地検特捜部に配属となる。そこで羽瀬喜一(奥田瑛二)副部長直々に、「大物代議士・橘洋平(仲代達也)を逮捕する」と目標を伝えられる。
2) 橘代議士と繋がりのある群馬県の土木会社会長・本郷五郎が、闇献金の疑いにより特捜にガサ入れを受ける。そこで、証拠となる手帳が発見される。その直後、本郷は自殺するのだった。橘・本郷の事件を追う中、冨永は旧友で文科省の官僚・近藤左門(鈴木浩介)から、メッセージを受け取る。
3) 近藤は、橘や中江信綱(西村雅彦)官房長官らがアメリカに宇宙開発技術を売り渡そうとしていることを告発するVTRを送る。だが、橘は私財を投げうってまで宇宙開発に尽力し、日本を世界一の産業大国にすると奮闘してきた代議士であった。そのため、アメリカに技術を売り渡すとは考えにくかった。
4) 冨永は、橘に直接会って話をする。橘や本郷は、アメリカに技術を売ろうとしている中江にハメられたのだった。本郷の手帳を盗み、特捜にガサ入れさせて発見させたのも中江だった。橘は、中江を告発するため、アメリカとの窓口となっている会社と中江の繋がりを示す通帳のコピーを匿名で冨永に送った。さらに、自らを逮捕させて「私が証拠なる」と言い、中江を告発するのだった。結果、黒幕である中江はついに逮捕されるのだった。
詳細なあらすじ
八反田遙(相武紗季)は、鹿児島・内之浦宇宙空間観測所で、研究員として勤務していた。火星探査機「あんじん」は無事に打ち上がり、遥は大喜びする。その報道を、大物代議士・橘洋平(仲代達也)は見つめていた。
検事・冨永真一(玉木宏)は、2015年7月13日に発生した野間あかねちゃん誘拐殺人事件を担当していた。被疑者は井原秀明であり、以前にも幼女誘拐殺人の疑いがかけられたが、遺体は発見されなかった。
冨永は、井原が工事現場のコンクリート下に遺体を埋めたのではないか、と推理する。羽瀬喜一(奥田瑛二)は、東京地検特捜部副部長に命じられる。部長として赴任することが内々で約束されていたが、部長には岩下希美(羽田美智子)が任命された。羽瀬は、特捜部で実質の主導権を握るよう言われ、その上で橘を上げろ、と命じられる。
富永は、遺体を発見できないまま被疑者を起訴する。開廷中、栃木県内であかねちゃんと思しき遺体が発見される。この事件をきっかけに、冨永は、東京地検特捜部へ抜擢される。
羽瀬は、直々に冨永へ「手伝ってもらいたいことがある。暗号の解読だ」と言われる。裏金リストが記された手帳が、群馬県の土木会社会長・本郷五郎宅で見つかったのだという。
本郷は、地元の市議・県議・国会議員まで土建業界票のとりまとめをしていた。本郷は、手帳が押収された翌日に、自殺していた。本郷は、橘と学生時代から親しくしていたのだという。
遥は、宇宙航空研究センターの研究者となる。面識のある寺島光太郎教授(勝村政信)の下で、宇宙研究生活を始めるのだった。
橘は、さまざまな大臣を歴任するも、総理大臣にはならなかった。「ミスターグレイ」などと言われ、黒い噂が絶えない人物だった。宇宙開発も積極的に推進しているのだという。徹底した親米派でもあった。そんな橘を、本郷は支援し続けていたのだという。
冨永は、本郷の妻・登紀子(草笛光子)に事情聴取を試みる。邸宅を訪問するが、「会いたくない」と言う。さらには「何も存じません。お帰り下さい」とあしらわれる。
遥は、研究室のセキュリティを任される。寺島教授は、画期的なプロジェクト・オメガに携わっていた。「狙われているから気をつけて」と先輩研究員から注意を受ける。
冨永は、大学の同窓会で近藤左門(鈴木浩介)に会う。近藤は、文科省で官僚をしており、宇宙開発に携わっていた。近藤は、「巨悪を眠らせるな…期待してます」と言う。
官房長官・中江信綱(西村雅彦)は、宇宙開発に関する予算会議で、「たかだかおもちゃ…少ない予算でなんとかする。もっと現場は努力すべきだ」と言い、遥は面食らう。寺島教授は、「なんとしてでも予算を引き出さないと」と躍起になる。そして、ロケット技術のミサイルへの転用など、宇宙開発と軍事が切り離せない事実を目の当たりにする。
本郷夫人は、不承不承ながら特捜にやってくる予定となっていた。冨永は、夫人が表千家の師範の資格も持っていることから、父にお菓子を届けてもらうよう頼む。「わざわざ前橋からきてくれるんですから、おもてなしをしなければ」と冨永は言う。
冨永は、近藤からの留守番電話を聞く。「久しぶりにオモロイことしませんか?…昨日見たジャカルタの雪、凄かったな」とのメッセージであり、それは子供のころからスパイごっこをしてきたならわしで、ありえない言葉の組み合わせは、「SOS」の信号だった。
冨永は、宇宙開発推進委員会を訪れる。近藤に携帯電話が繋がらず、そこならば会えると考えたのだった。受け付けをしていたのは遥であり、冨永は彼女に「近藤さんは今日、欠席されています」と言う。
「ジャカルタの雪」なる宝石が展示されているのを見て、冨永は展示会を訪れる。スタッフに近藤のことについて訊くと、「スマートフォンをお忘れのようで、冨永様にお渡しするようにと言付けをいただいております」と言われる。
冨永は、国交省のクルマの車両番号を見て、本郷の暗号は、車両番号を示していると気づく。羽瀬報告すると、「でかした」と褒められる。
本郷夫人がやってきて、手帳の書いた暗号を解いたと話をするが、夫人は「先生方に便宜を図っていたとして、いちいち記録を残すなどという恩着せがましいことはいたしません」と言う。
冨永は、「もし本当に無実なら、生きながらえてそれを証明すべきでは?橘などという男に利用されるだけされて、捨てられた」と言う。本郷夫人は、「…帰ってよろしいかしら?」と言い、立ち上がる。
冨永は、「少し、休憩しましょう」と言い、お茶を点てる。冨永が有名和菓子店の息子だと知り、本郷夫人は驚く。そして、和菓子に舌鼓を打ち、冨永自ら点てた抹茶によって心を開いていく。
夫人は、「橘先生は、主人にとって英雄でした。先生こそ日本の未来を切り開いていくお方だと言っておりました。支援も行っておりました」と言う。自殺を選んだ理由は、「命にかえても守るべきものがあったからです。空き巣に入られました、3ヶ月前に。でも、金庫から手帳が発見され、驚いておりました。夫はハメられたんです」と言う。空き巣に盗まれて一度消えた手帳が、金庫から再び発見されたのだった。そして、本郷夫人は「光は、闇から生まれるんですよ」と意味深なことを冨永に告げる。
遙は、中江官房長官が「ロケット開発は民間主導に変えていきます」とニュース番組で発言していたことに愕然とする。寺島教授も慌てて、プロジェクト・オメガ継続のため、政府に事実確認を行う。
冨永は、近藤のスマホのコードを解こうとしていた。近藤は、スパイごっこのとき、「0039」のコード番号を使っていた。コードを解くと、近藤の映像が流れる。「これらの人物は、アメリカのスパイです」と、政府主要人物たちのリストを見せる。
中江官房長官は、宇宙航空研究センターの規模縮小を狙っていた。予算は半減し、「日米共同研究」としてすすめるよう指示したのだった。背後には、橘がいた。橘は、「日本骨抜き計画」を水面下で進行しているのだという。近藤は、「真ちゃん、出番です。ケチな贈収賄と違う。桁違いの犯罪だ」と言う。
特捜部部長は、「まず国土交通大臣を狙う。獲れる首から獲る」と言う。羽瀬は止めようとするが、部長は聞かない。その尻ぬぐいをする代わりに、羽瀬は橘の捜査を続けるのだという。
遥は、機密情報が詰まったパソコンの不審な操作ログの痕跡を見つける。入退室管理記録から、その捜査を行ったのは寺島教授だった。先輩研究員・天野義弘(松澤一之)は、「君のお父さんがここを去った理由…論文を盗まれたんだ」と明かす。
文科省の近藤の上司は、「近藤の居場所がつかめない。なにか近藤から預かっておられませんか?」と訊ねられる。「近藤は国家機密を漏らしたおそれがある」と上司は言う。
冨永のもとに、差出人不明の封筒が送られてくる。そこには、「グローバルインプ」という名義の通帳のコピーが入っていた。その会社は、「アメリカの窓口」なのだという。企業誘致などを、その会社を通じて行われているのだった。そして、グローバルインプの提携会社として、宇宙航空研究センターがあった。
冨永は、宇宙航空研究センターを訪れ、遥に話を聞く。「現場で何が起きていますか?」と訊ね、「日本はこのロケット技術を絶対にミサイル転用しようとしない。しかし、その技術を他国から狙われる…そんな心配があるのではないですか?」と指摘する。
遥は、「いつか北極星に探査機を…そこまで行った探査機は存在しません。でも、いつか作ってみたい。途方もない夢ですけど。空を見るたびに、ここまでおいでって言われてる気がします。そういう思いでみんな研究に取り組んでるんです」と答える。
橘は、グローバルインプの木戸が内偵されている知らされる。中西春男(手塚とおる)検察官は、「余計なことに首をつっこまない方がいい」と警告する。冨永は自宅に戻ると、配電盤が壊され、引っ掻き回されていた。さらに、近藤のスマホが奪われていた。だが、パズルのピースに隠したmicroSDカードは無事で安心する。
冨永は、近藤への逮捕状が出されたと知らされる。冨永は、羽瀬に「近藤は無実です」と言い切る。だが、羽瀬は「近藤を隠匿したな。お前を取り調べる必要がある」と言う。だが、冨永はmicroSDカードに入れておいた、近藤の告発VTRを見せる。
冨永は、「国際的な収賄事件です。日本の研究者が積み上げてきたものが奪われる。献金どころではない重大犯罪です」と言う。羽瀬は、部下たちに橘らに対するより一層の捜査を指示するが、冨永には「お前は重大事件を上司に報告するのを怠った。謹慎だ」と命じられる。
寺島教授は、「アメリカでプロジェクト・オメガをプレゼンすることになった」と遥に明かす。そのプレゼンに、同行するよう誘う。「アメリカで共同開発する方がいい。予算が桁違いだ」と寺島はつぶやく。そこで遥は、「先生の不正アクセスが見つかりました。先生を尊敬していたのに、なんであんな裏切り行為…」と言う。
寺島教授は、「この国に未来はない」と言うが、遥は「私の父は、論文を盗まれました。父の研究成果を、当時の指導教官がアメリカの軍事メーカーに売ったそうですね…先生のしていることは犯罪です」と断罪する。
冨永は、遥からの電話を受け、呼び出される。遥は、「やっぱり話せません…」と立ち去ろうとするが、冨永は「近藤は親友なんです。このままでは、逮捕されてしまう」と言う。だが、遥は「今まで国が何をしてくれました?失敗すれば叩かれ、成功すれば便乗」と言う。
冨永は、「でも、罪は裁かれるべきだ」と言う。そんな冨永の言葉に、遥は「あなたには分からない。法に縛られているあなたには」と言って立ち去る。
事務官・五十嵐鉄夫(萩原聖人)に会い、グローバルインプの木戸会長と寺島教授が会っていることを明かす。冨永は、関わっている中江官房長官らを引っ張るべきと考えるが、官邸から待ったがかかる。冨永は、謹慎中の身ながら最高検察庁次長・小松一平(田中健)に直訴するが、「まだその時期ではない」と却下されてしまう。
冨永は、「火の用心 これは最後通告です」とのFAXを受け取る。その直後、母親から電話がかかってくる。実家が燃やされ、父親が怪我を負って入院を余儀なくされる。冨永は父に「あの火事、僕が今…」と謝ろうとする。
だが、父は「真ちゃんの仕事はなんや?悪者を逮捕することやろ」と言い、全てを承知した上でやるべきことをやれと言うのだった。
羽瀬は、冨永の実家が燃やされたことに激怒する。羽瀬は、部長命令に反し、「木戸を呼んで吐かせろ」と命じる。「正義を貫け。ただし、証拠を固めた上での逮捕だ。それ以外はありえん」と言う。さらに、冨永を呼び出し、ともに捜査させる。
そんな中、冨永は本郷夫人の「主人はハメられたんです」との言葉を思い出していた。様々なピースが頭の中ではまっていく。「日本を世界一の産業大国にする」とかつて橘は語っていた。
木戸は自供し、橘の私設秘書に賄賂を渡していたことが判明する。シンポジウムで、寺島教授のプレゼンを行う場に乗り込む。橘に対し、「なんでもっと国は、寺島教授のような才能のある人物を助けてくれないんですか?」と訴えかける。
その場に冨永が現れ、「お話、聞かせていただけますか?」と橘に言う。冨永は、「あなたのことを調べました。徹底的に。永田町のドンと言われるにふさわしい、悪徳政治家だと。長年親しくしていた長江まで巻き込んで。この一件の主犯。たしかな証拠を積み上げていけば、犯人の顔が見えてくるはずなんですが」と言う。
そして、匿名で送られてきたグローバルインプの通帳のコピーで、橘と長江へのカネの動きが分かったことを告げる。その一方で、私財を投げうってまで宇宙開発を進めてきた橘がアメリカに技術を売るとは考えられなかった。
そこで冨永は、何者かが橘と本郷会長をハメたのではないかと考える。その人物は、特捜に本郷会長の手帳を発見させるように仕向けたのだった。さらに、橘自身がグローバルインプの通帳コピーを送り、真相にたどり着くよう仕向けたのだった。橘は、近藤が海外で身の安全を保証されているのだと告げる。
橘は、中江が仕組んだのだと明かす。「この国を世界一の産業大国にする。日本復活の鍵を握っているのは、科学技術しかない。なのに、その最前線にもスパイが放たれていた。その連中をあぶり出すために動いていた」と橘は語るのだった。
冨永は、「光は闇の中から生まれてくる。あなたは、悪事の中から生まれてくる光があるとお考えだったのですね」と言う。だが、「ただ、証拠がない。そのような告発は受け入れることができない」と言う。
そこで橘は、「私を逮捕しろ。私が証拠だ」と言うのだった。近藤もまた、VTRで「橘先生を信じろ。先生ほどの愛国者はおらん」と言い、後押しする。冨永は、橘の言葉を信じることにするのだった。
冨永は、中江逮捕のため、橘が自らを逮捕しろと言ったのだと羽瀬に報告する。一方、五十嵐は中江に特捜の動向を知らせていた。
寺島教授は、遥に「お父さんからもらったこの贈り物を、お父さんの仏壇に供えてほしい」と言う。それから間もなく、寺島教授は自殺した。
橘は、中江を告発すると冨永に宣言する。その告発により、特捜は中江官房長官の同行を求める。その後、五十嵐は橘の命を受け、アメリカや中江とも接点を持つ二重スパイであることを明かす。
遥は、浮かない顔でペットボトルロケットを飛ばしていた。冨永は、「寺島教授をお守りできず、あなたを悲しませてしまい、申し訳ありませんでした」と謝罪する。そして、「いつか、北極星に探査機を飛ばしてください。あなたを守ります。法の番人として、愚直に夢を追う研究者を守ります…巨悪は眠らせない」と約束する。