簡単なあらすじ
1) 昭和30年前半、列車の車内で、刑事・平田巡査部長(杉本哲太)は、隣の男と手錠で繋がっていた。誰が見ても犯人の護送中であったが、そこに、刑事だと自称するキザな男(北村一輝)が話しかけてくる。
2) 実際の俣野は、すでに捕まって別の場所にいた。平田刑事は、隣にいる男が指名手配犯・俣野昇に似ていることから、ある作戦を立てた。密売グループと大河原組との取り引きの最中、警察との銃撃戦が始まったことから、俣野はカネとクスリを持ち逃げした。裏切り者を許さぬ麻薬密売グループのリーダー・カワウソは、必ず俣野を始末しにくるはずだったのだ。
3) キザな男がカワウソであると思った平田刑事たちは、取り押さえようとするが、キザな男は煙幕を焚いて逃げ出そうとする。ところが、車掌に扮した刑事に捕らえられる。平田刑事は、キザな男を護送する。平田刑事は、「祝杯だ」と言い、2人でウィスキーを飲み始める。
4) 平田刑事は、「カワウソが入れているという、カワウソの入れ墨を見せてくれ」とキザな男に言う。だが、そのような入れ墨は入っていなかった。キザな男は、「俺は大河原組の組員だ」と明かす。その直後、ウィスキーに眠り薬を盛られた平田刑事は眠ってしまう。そして、キザな男のウィスキーには毒物が入れられており、長い眠りにつくことになった。薄れ行く意識の中で、キザな男は、売り子の女性の足元にカワウソの入れ墨が入れられていることに気づくのだった。
詳細なあらすじ
昭和30年前半、列車の車両の最後尾で、刑事である猪首の男(杉本哲太)と、手錠で繋がった犯人である優男(古川雄輝)が隣り合わせに座っていた。そこに、キザな男(北村一輝)が途中で乗り込んでくる。
キザな男もまた、警察手帳を見せて「同業者です」と言う。優男は、「人違いなんです!指名手配犯と間違われて…」と言う。優男は、俣野昇という名前の指名手配犯と間違えるられたのだという。
俣野は、麻薬密売グループの一味であり、警察官を殺害した上、ヤクと一億以上のカネを持って逃亡したのだという。大河原組と密売グループの取り引きの最中、捜査員たちは一斉摘発を行おうとした。結果、激しい銃撃戦が行われ、刑事や密売人、組員たちも多く死亡した。密売グループでは、俣野のみが生き残ったのだという。
キザな男は、「それほどの凶暴犯を、1人で護送とはおかしい。それに、俣野が捕まったという話は聞いていない」と言う。そこで、キザな男は、刑事と名乗る猪首の男が「麻薬密売グループのリーダー・カワウソ」などではないかと考える。カワウソは、裏切り者や組織に害をなす者などを許さず、残らず始末しようとするのだという。
カワウソが、俣野と行動をともにして移動するため、刑事と名乗っているだけではないか、というのがキザな男の推理だった。だが、猪首の男はそれを一笑に付す。そして、最初にキザな男が俣野のことを知らないふりをしたと指摘し、「俣野に気づかないふりをしたことがおかしい」と言う。さらに、「捜査員と同じくらい情報を知っている刑事が、俣野に気づかないはずがない…アンタこそ、刑事じゃないだろう」と言うのだった。
猪首の男は、キザな男に「アンタがカワウソなんだろう…カネとヤクのありかを吐かせるために、この男を奪うつもりなんだろ」と言う。
キザな男は、「アナタのことを知ってる…水神署の平田巡査部長でしょ」と言う。平田巡査部長は、「相棒がいないのは、俣野に射殺されたんだ」と明かす。
キザな男は、「相棒が撃たれるところを見てたんですね?」と言う。だが、平田巡査部長は「現場は、混沌としていてな」と言葉を濁す。さらに、「おとぎ話をしましょう…あるマル暴の刑事は、難病に犯された息子のため、ガサ入れ情報を流していた。ここまではよくある汚職警官の話だが、密売グループを作り、裏から指示していたんだ」と言う。その汚職警官というのが、平田巡査部長だった、とキザな男は言う。
「平田は、相棒に密売グループとの関係を疑われていた。そこで、『もう密売グループは解散だ』と言うが、河田という男はそれを拒否した。さらに、『俺が警察にタレ込めばお前は終わりだ』と脅された。そこで、ガサ入れのどさくさに紛れて、河田と相棒を殺害した…平田は、俣野にカネとヤクを持って逃げさせ、殺害して罪を着せれば終わりだと考えていた」と言う。
俣野と思しき男は、平田に掴みかかる。平田は、キザな男の話を否定するが、促されるままに拳銃を奪う。だが、それを平田に向けると思いきや、キザな男に向けるのだった。彼は、俣野ではなかった。俣野はすでに逮捕されていた。平田刑事と一緒にいた男は、俣野に似ていたため、「カワウソ」をおびき寄せるため、平田とともに今回の計画を実行しようとしていたのだった。
まんまと罠にハマったと知ったキザな男は、煙幕を焚いて逃げ出そうとする。酔いつぶれていた男は、キザな男の部下であり、俣野に似た男を撃って、キザな男とともに降車する。ところが、車掌に化けていた男は刑事であり、2人を逮捕する。
キザな男は、平田刑事に護送される。平田刑事は、キザな男がウィスキーを飲むのを許し、ともに飲もうとする。
カワウソらしき男の逮捕に気を良くした平田刑事は、「カワウソの入れ墨を見せてくれ」と言う。カワウソは、体の一部にカワウソの入れ墨を入れているのだという。だが、キザな男は手の包帯を外すが、そこには傷があるだけだった。
キザな男は、「俺は大河原組の者だ」と明かす。驚いた平田刑事は、そのまま眠ってしまう。ウィスキーには、睡眠薬が入っていたようだ。さらに、キザな男も意識が朦朧としてくる。その視線の先には、売り子の女性がいた。彼女の足元には、カワウソの入れ墨が入っていた。売り子の女性こそがカワウソであり、キザな男は始末されたのだった。