クリスマスイブに、街でひったくりが起こる。犯人は男であり、若い女のバッグを盗んでいった。真壁修一は、「捕まえて」という女の声を無視して歩いていた。しばらくして、ひったくりの男がコートの男に馬乗りになられて殴られていたのを見かける。
その様子を見て、真壁の脳内にとどまりつづける弟・啓二は、「恵美ちゃんの親父さんも、あんなだったのかな」とつぶやく。真壁は、刑務所でした大野芳夫との約束を果たそうとしていた。大野は知人・山内広太の娘・恵美のために「サンタクロースをやって欲しい」と頼まれていたのだった。
山内は、5歳だった娘のクリスマス、恵美の前で死亡したのだという。山内は、恵美のためにリカちゃん人形をデパートで盗み、警備員に追跡された。山内は、警備員の足を刺して逃げ出すが、他の警備員に追跡された。人形を恵美に渡すと、道路を渡って逃げようとした。そこでバイクに撥ねられて死亡したのだった。
恵美は親戚に引き取られたが、ひどい扱いを受けているのだという。そこで大野は毎年クリスマスサンタクロースをしていたが、服役していて今年はできそうにないという。そこで、大野は真壁に頼んだのだった。
大野は、「女房にプレゼントは用意させておく」と言っていたが、大野の妻はすでに引っ越していた。真壁は仕方なく、父親の時計を質入して、カメオのペンダントトップを購入する。そして、恵美のいる村松家に向かう。サッシ戸を開け、真壁は侵入する。そして、靴下の中にプレゼントを入れて立ち去ろうとする。だが、そこに「サンタ様へ」と書かれた薄いピンク色の封筒があり、それを持って真壁は外に出ようとする。
だが、外に警察官がいるのを見つけ、真壁は驚く。雨どいから落ち、真壁は右足を捻挫してしまう。真壁は、警官に「待て!」と制止するよう言われるも、足をひきずりつつ走り、逃げ切る。
真壁は、警官が深夜二時過ぎにあの場所にいたことを疑問に思う。滝川に会いに行き、そこで「大野の女房はどこに行った?」と訊ねる。滝川は知らず、さらに、「大野と山内は同郷か?」などと問うが、それは大野のウソであった。真壁は、「大野は、サンタクロース役を頼まれていたのではないか」と考える。
真壁は、恵美のサンタ宛の手紙を読む。そこには、サンタへのお礼とともに、「わたし、本当はサンタさんがだれなのかしっているんですよ。名前は知りませんが、お顔はちゃんとおぼえています。あの日のおじさんですよね?自分のほうが大変だったのに、やさしい目で、わたしをジッと見つめてくれた、あの時のおじさんですよね?」と書かれていた。
真壁は、里見三郎という男に会う。里見は、真壁が警官だと思って逃げ出した男だった。里見は、捻挫した真壁に追いつくことができず、さらには、その不規則な足音から、真壁は里見が足を刺された警備員だと気づいたのだった。
里見は、大野が救急車に乗せられて運ばれる途中、リカちゃん人形を胸に抱く恵美を見て、事情を察したのだった。恵美のことを不憫に思い、里見は大野に頼んでサンタクロースをしてもらっていたのだった。
里見は、真壁に礼を言おうと思って立っていたのだった。ところが、あらぬ疑いをかけられまいと警備員の格好をして、さらにはコートを着ていたため、真壁は警察官と見間違えてしまって逃げ出したのだった。
里見は、「恵美ちゃんの夢を壊したくないんです。それに、お父さんに刺された警備員がサンタクロースと知ったらがっかりするでしょう。そっとしておいてください」と頼む。そんな里見に、真壁は「いつまでも子供じゃない」と言い、恵美のサンタクロースに宛てた手紙を渡す。それを呼んで、里見は号泣するのだった。