真壁真一の泊まっていた「旅館いたみ」に、安西久子が訪れてきた。久子は、「ストーカーみたいな人に尾けられている気がする」と言う。
久子は、見合いをしていた。相手は久能次朗であり、初めに見合いで会ったのは彼であったが、次に来たのは姿形はよく似ていたが、別人の兄・新一郎が現れた。そのため、久子は怒り、「もうお付き合いはよします」と言ったのだという。新一朗は平謝りするが、久子は許せなかった。
次朗は、「兄・新一朗は、オートバイの自損事故で酒とギャンブルを覚え、怪しげな不動産業者と付き合うようになった。たまに現れては、カネの無心をしてくる」と明かす。新一朗は、次朗の見合い相手と会ってみたいと言い、替え玉することを提案した。次朗は、その提案を了承してしまったのだった。
その翌日から、「弟と結婚しろ」と脅迫めいた電話がかかってくるようになっていた。さらに、「死ね」といった殴り書きの紙が投げ込まれるようになった。
真壁は話を聞き、怯える久子と泊まろうとする。だが、旅館で火事が起こり、新一朗の仕業ではないかと考えた。真壁は階下へと飛び降り、久子を下で受け止める。翌日、女将・市野ヤス子が亡くなったことが報じられた。
翌日、現場を訪れるとバケツの水に油が浮いており、ガソリンが撒かれていたのを発見する。真壁は、やはり放火であると考える。真壁は、新一朗を探し始めた。真壁は、次朗に居場所を訊くも、知らなかった。だが、新一朗の付き合いのある不動産屋が木梨という男であると知る。新一朗は、「兄貴が久子さんにしたことは許せません。でも、私も心のどこかに久子さんを憎む気持ちが生まれてしまったような気がして」と話した。
真壁は、林田という男に話を聞きに行き、木梨には、鈴本という仲間がおり、新一朗はバイク修理ができるため、熊野という男の所有する工場にいることを知る。だが、使い物にならなかったため、熊野は追い出したのだという。だがそこで、新一朗がガソリンをこっそりと盗んでいたという情報を得る。
木梨は逮捕されていたため、真壁は馬渕と取引をして木梨と話をする。そこで、新一朗のいる女のアパートの住所を知る。女は、ホストに入れ込んで既にそのアパートには住んでいなかった。その部屋を訪れ、しばらく誰も住んでいない様子を見た真壁は真相にたどり着く。
新一朗は、次朗になりすまし、実家である文房具屋にいた。そして、土地と店舗を売り払うべく片付けをしていたのだった。真壁は、文房具屋に忍び込む。そこで、「弟を殺ったのか?」と訊ねると、「だったらどうした」と新一朗は言う。真壁は新一朗はを痛めつけ、「覚えておけ。俺はいつだってお前の寝室に忍び込める」と脅す。
問題が解決し、啓二は自分の死の真相を明かす。母親が無理心中を図り、家に火を放った。母親は啓二を抑えつけたが、一瞬、力を緩めた。本当は逃げ出せたのだが、啓二は逃げなかったのだという。母親は泣いており、逃げ出すことができなかったのだった。
啓二は話し終えると、姿を消した。自分の影がアスファルトの歩道に落ちていた。影は、濃さを増しながら、どこまでもついてきた。