住野よる「また、同じ夢を見ていた」あらすじ・ネタバレ・解説

小学生の小柳奈ノ花は、同級生を見下していて友達がいなかった。話をするのは、誰とでも分け隔てなく付き合う荻原くんと、絵を描くことが好きな桐生光だけだった。風変りな奈ノ花を、担任教師のひとみ先生は優しく教え諭していた。

奈ノ花は、学校の外に友人がおり、
・近所に一人で住むおばあちゃん
・弱っていた猫を介抱してくれたアバズレさん(表札に嫌がらせで書かれた文字で
、奈ノ花が名字だと思い込んでいた)
・屋上でリストカットをしていた女子高生の南さん(制服に刺繍された高校の名前であり、奈ノ花が名前と勘違いした)
・「小さな友達」黒猫
だった。

奈ノ花は同級生と遊ぶことはなく、こうした友人と遊ぶため、南さんの待つ廃墟の屋上、アバズレさんの家、おばあちゃんの家を猫とともに毎日のように渡り歩いていた。

そんな中、奈ノ花は両親が「授業参観に行く」という約束を破り、仕事で家を留守にすると明かされ、怒ってケンカをしてしまう。家で食事もとらず、口もきかない状態になり、そのことを南さんに話す。

すると南さんは、今までにない必死の様相で「今すぐ仲直りをしろ」と言う。彼女はケンカしたまま両親を飛行機事故で亡くしており、そのことをずっと後悔し、辛い日々を過ごし続け、「ずっと同じ夢を見続けていた」のだった。

奈ノ花はそのアドバイスに従い、両親と仲直りする。すると、両親は無理をして仕事を休み、授業参観に来てくれたのだった。「幸せとは」という内容の作文を読んでおり、奈ノ花は「両親が授業参観にきてくれたことです」と発表するのだった。後に、両親が乗ろうとしていた飛行機が事故で墜落すると判明する。

そのことを南さんに話をしようとしに行くのだが、いつもの廃墟が取り壊されることになっていたのだった。それ以来、奈ノ花は南さんと会うことができなかった。

その後、桐生の父親がスーパーで万引きをしたと警備員に取り押さえられてしまう。その噂はすぐに広まり、桐生は学校を休んでしまう。ようやく桐生が学校にやってきても、同級生が父親の万引きのことで桐生をいじめ、奈ノ花は言い返して口論になる。

結果、桐生は再び教室を出て学校を休むようになってしまう。奈ノ花は、桐生の家に行き、学校にくるように説得する。だが、次第にヒートアップした奈ノ花は「いくじなし!」などと桐生をなじってしまい、桐生くんは「小柳さんが一番嫌いだ」などと言われてしまう。

クラスで、ついに荻原くんにも無視をされるようになった奈ノ花は、アバズレさんのところに向かう。そこで、アバズレさんに学校でのことを相談すると、桐生くんと仲直りするように言う。同級生とのケンカ別れは、アバズレさんが「ずっと同じ夢を見続け」て、後悔していたことだった。

そして、アバズレさんは、自らの生い立ちを語りだす。自分のことを賢いと思い込み、友達もおらず、自暴自棄になって体を売るようになった。そんな中、ついに自らの命を絶とうとした時、奈ノ花が猫を救って欲しいと部屋に飛び込んできたのだと明かす。そして、奈ノ花と交流することで再び幸せを感じられるようになったのだという。

アバズレさんは、桐生くんとどう仲直りをすればいいのかをアドバイスする。桐生くんは目の前の問題と戦っていないのではなく、奈ノ花の思っている方法ではない形で自分で戦っているのだ、と言われ、奈ノ花は再び桐生くんに会いに行く。

桐生くんの部屋の前に現れた奈ノ花は、学校の国語の課題である「幸せとは」ということを桐生くんと話をする。そこで彼女は、自らもクラスメイトに無視されていることを明かすのだった。

桐生くんは奈ノ花に謝罪し、一緒に学校に行くことにする。クラスの中に居づらい2人は、互いに仲間となって居場所を見つけたのだった。

桐生くんと仲直りでき、そのことを奈ノ花はアバズレさんに伝えに行こうとする。いつものアパートの部屋に行くと、そこには見知らぬ男性が住んでおり、「もう4年住んでいる」と言われ、奈ノ花は驚く。そこに住んでいたはずのアバズレさんは、消えてしまったのだった。

そして、おばあちゃんの家に行き、そこで話をする。そこでおばあちゃんは、「幸せな人生を歩んできた」と言い、そして「なっちゃんに会わせてもらえて幸せだった」と言う。「これで会えるのは最後」とおばあちゃんは言い、奈ノ花が家を出て、振り返るとそこにはおばあちゃんの家はなかった。

その後、奈ノ花はひとみ先生にもその話をし、そして図書館にいた桐生くんにも話をしようとする。だがそこで、奈ノ花は異変を感じて「ああ、ここで(夢は)終わりなんだ」と気づくのだった。

…奈ノ花は、いつもの夢を見て、起床する。南さんに似ていた彼女は、次第にアバズレさんに近づいていた。南さんの辛い両親との別れ、アバズレさんが抱き続けていた、孤独に苛まれて自暴自棄になった日々は経験せずに済んでいた。

そんな彼女は、画家となった桐生くんのアトリエに行く。そこで桐生くんは奈ノ花に描いた絵を贈ってプロポーズをするのだった。

解説

南さん、アバズレさん、おばあちゃんは、それぞれ奈ノ花が成長した姿である。だが、彼女たちは現在の奈ノ花とは別の選択をした、パラレルワールドの人生を歩んでいる。奈ノ花は彼女たちと交流することで、彼女たちが「後悔していた過去」を変えることができ、別の人生を奈ノ花は選ぶことができたのだった。

南さんは、ケンカしたまま飛行機事故で両親を亡くしてしまい、後悔し続けていた。そして、アバズレさんは桐生くんと仲直りせず、友達もなく孤独な日々を過ごし、自暴自棄になってついには死を選ぼうとさえしていた。

おばあちゃんもまた、桐生とは結婚しておらず、奈ノ花に「幸せとは」という問いにヒントを出して姿を消す。おばあちゃんは奈ノ花が最初から過去の自分の姿であることに気づいており、彼女との「別れの瞬間」も知っていた。そして最後の「小さな友達」黒猫もまた、おばあちゃんとともに姿を消す。

誤った選択をしてしまいそうな奈ノ花を、南さん、アバズレさんは自らの後悔をもとに教え諭し、軌道修正する。そして、黒猫・おばあちゃんが優しく寄り添っていたのだった。

南さん、アバズレさん、おばあちゃんの3人とは違う選択をした人生を選び、奈ノ花は桐生くんと結ばれるのだった。



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