「もれパス係長」前半部分(ネタバレなし)
木谷(小野寺昭)係長は、宣伝部部長からの無茶振りにも抵抗できず、部下からもバカにされてしまっていた。宣伝部として、会社のCMでPRを行うことになり、キャンペーンガールを選出することになるが、部長は木谷に暗に「彼女を抱かせるようセッティングしろ」と迫る。
木谷は、部長からの要求に答えることに疑問を覚えながら横断歩道を歩いていると、その途中でトラックに轢かれてしまって入院することになる。
事故で脳震盪を起こした後、見舞いに来た部長に「よくこの部長が見舞いに来たな…」と内心で思っていたことが伝わってしまい、木谷は慌てる。
部長は、候補のタレントに手を出し、キャンペーンガールに選ぶ。そのことを心の中で毒づくと、部下にそのことが伝わってしまい、「それを言うのはまずいですよ。いくら公然の秘密だとしても」と注意されてしまう。
会社だけでなく、通りすがりの街行く人にも全て自分の思っていることが伝わってしまうことに驚く。テレパシーについての本を読みながら、木谷は「これではテレパシーではなく、もれパシーだ」と思う。
まるで『サトラレ』のように、自分の思ったことが周囲の人々へ伝わってしまうようになった木谷係長。タイトルの「もれパス」とは、テレパスならぬ「もれ(漏れ)パス」であると自嘲するように木谷係長が思ったことからつけられたということですね。
「もれパス係長」後半部分(ネタバレあり、結末まで)
会社のCM撮影の段取りが済み、あとは役員以上の会議でゴーサインが出ればいいという段階になる。木谷係長は部長に「会議でのプレゼンが成功すれば、課長への昇進も間違いないよ。私が保証する」と言われ、やる気になる。
会社の社長や役員たちにプレゼンを行う当日、木谷は寝坊して遅刻ギリギリで会社に到着する。本音がダダ漏れになってしまうことを恐れながら、木谷は会議に出席する。
木谷は社長たちの前で緊張し、しどろもどろになりながら説明を行う。その中で、部長が抱いたタレントをキャンペーンガールに選出したことを心の中で思うと、そのことが社長や役員に伝わってしまう。
さらには、役員に心の中で毒づいたことも伝わって絶望するが、社長は笑って済ませてくれる。ところが、その社長にすら「実力もないのに、会長の婿養子というだけで社長になったくせに」と思うのだが、そのことが伝わり、実際に口に出してしまっていた。結果、会議室は静まり返ってしまう。
この特殊能力で、上手く事態が好転すると思いきや…という感じでしたね。
結局、事故の後遺症で「思っただけ」と思っているのは本人だけで、自制が効かずに言ってしまっているだけ、とも考えられるかな、と私としては思いました。
「もれパス係長」制作情報
・原作:清水義範( 『グローイング・ダウン』収録)
・脚本:小杉山龍二郎
・演出:河崎実