簡単なあらすじ
1) 五百旗頭敬(オダギリジョー)は、街中やオフィスで何者かに見られているという視線を感じていた。それは、黒沢心(黒木華)が観察を行っていたためだった。五百旗頭は、人が見ていないところでも善行をしようと心がけていた。
2) その理由を問われ、五百旗頭は「俺も人の真似をしているだけだ」と言う。その真似をしている相手は、久慈勝(高田純次)社長だった。久慈は貧しい家庭で育ち、素行不良な時期もあった。そんな中で出会った老人に「運は貯められる。運を使いこなせ」と言われ、善行を行うようになったのだった。
3) さらに、一冊の『宮沢賢治詩集』がもとで、久慈は出版社に勤務するようになり、社長にまで登りつめた。そんな久慈は、1年に一度、訪れる場所がある。それは、本が廃棄される場所であり、その様子を見て、「この無念を晴らすためにも、本を売らねば」と再起するのだった。
4) 久慈社長に同行した心は、「この光景、忘れません」と言う。一方、心は中田伯(永山絢斗)の原稿を完成させ、ついに新人賞を受賞させ、雑誌に掲載させることができた。
起:心の再始動
五百旗頭敬(オダギリジョー)は、街中やオフィスで何者かに見られているという視線を感じていた。その”何者”というのは、黒沢心(黒木華)だった。心は、隙あらば五百旗頭の観察を行っていた。
五百旗頭は、お釣りは必ず募金し、お年寄りにも優しく、信号はいつでもしっかりと待つ。仕事ができる上にいい人であると、心は五百旗頭のことを絶賛する。
心は、東江の担当を外れることになり、”失恋”を味わっていた。一方、東江絹(高月彩良)は、担当編集者・安井昇(安田顕)の提案に乗り、ベストセラー原作本のコミカライズを行うが、打ち合わせも10分、ネームも直しを行わず、東江は戸惑う。
心は、中田伯(永山絢斗)をデビューさせるべく、新人賞に応募する原稿を完成させるべく奮闘していた。だが、壬生平太(荒川良々)が「ド下手伯」などと言うほど、画力はなかなか向上しなかった。
そんな中、心は五百旗頭に誘われ、大塚シュート(中川大志)のサッカーマンガ『KICKS』単行本発売の手伝いをすることになる。新人作家ということもあり、確実に売らなければならない。装丁は人気デザイナーである野呂(ヒャダイン)が担当することになる。
承:五百旗頭の師匠・久慈
五百旗頭は、視線を感じていた”犯人”が心であると分かる。心に「どれだけいい人なんですか」と言われると、五百旗頭は「俺も人の真似だけどな」と言う。その真似をしている相手とは、久慈勝(高田純次)社長であった。
久慈社長は「常に良い行いをする」がポリシーだった。五百旗頭が文芸部にいた時、久慈社長肝入りの「宮沢賢治詩集」を担当した。その際、久慈社長に学んだのだったのだ。
久慈は、炭鉱の町で貧しい家庭に生まれた。父は幼い頃に亡くなり、母子家庭で中学まで育った。だが、高校には行けず、中学卒業時に母親は男と逃げた。不良グループと関わるようになり、金欲しさに一人の老人(火野正平)を脅そうとする。だが、老人は「運は貯められる。儂を殺したら、お前の運は尽きるぞ」と言われ、久慈は逃げ出す。
街を出た久慈は、町工場で働くようになる。そこで、同僚に『宮沢賢治詩集』を渡され、涙を流して読んだ。そこから久慈は読書や勉強をするようになる。『雨ニモ負ケズ』を地で行く生活を行い、善行に目覚める。
そんな久慈は、詩集の出版元である興都館に入社する。そこでも、「問題は、どこで勝ちたいか。運を使いこなせ」という老人の言葉を思い出す。麻雀で大勝ちしたところ、火事で自宅が全焼してしまう。妻や娘のことを案じ、そこから賭け事を止め、運を貯めることにしたのだった。「全ての運を仕事で使いたい。ヒット作を出版したい」と久慈は願う。
転:中田の作品掲載
『KICKS』のカバーラフを社内で見せ、3パターンから選ぼうとするも、意見が割れる。心は、2種類のラフを実際に書店で並べてもらい、デザインを決めようとする。
さらに、そのラフを野呂に見せる。野呂は、「師匠に言われた言葉がある。絶対に買ってもらえるデザインなどない。常に自分に問え。自分の中で最高な仕事ができているのか」と、どのような姿勢で仕事を行っているのか語る。
野呂は自宅で思案し、ついにイメージを掴む。躍動感のあるデザインが完成しようとしていた。1ヶ月後、中田の原稿『ピーヴ遷移』がついに完成する。社内の新人賞会議にかけ、OKが出れば掲載されることになる。
結:久慈の決意
五百旗頭は、心と小泉(坂口健太郎)に、「明日、社長のお供をしてこい」と指示する。久慈が毎年訪れるのは、本を断裁・廃棄する場所だった。同行した心は、そこで久慈の「一冊の本が、人を救うかもしれない。だから、多くの人に本を届けたい。本が私を人間にしてくれた。これからも本を売るんです。…この痛みを忘れないために」と言う。
大塚の単行本が、ついに書店に並ぶ。「僕は、この光景を決して忘れません」と言う。一方、本が廃棄する光景を見て、心も「決して忘れません、この光景」とつぶやいていた。
中田の『ピーヴ遷移』は、真っ二つに評価が割れる。ストーリーの面白さは認めるものの、画力がやはり問題視された。「この作品を載せたら前代未聞」という言葉に、和田靖樹(松重豊)は「前代未聞?面白いじゃねぇか。見たことないものが載ってるのが雑誌だ」と言い、掲載が決定する。
東江が原稿を進める中、安井は「それ全部、ボツ」と言い放つ。
久慈は、書店でもらった宝くじが1等当選して驚く。だが、「こんなところで運を使うわけにはいかない」と、子供に折り紙の代わりに渡し、切らせてしまう。「これでまた重版出来だ」と久慈は笑う。