ドラマ「氷の轍」(桜木紫乃 原作)あらすじ・ネタバレ

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簡単なあらすじ

1) 滝川信夫(品川徹)は、加藤千吉(金子達)に酒と睡眠薬を飲ませ、猛吹雪の中に放置して死亡させる。さらにそれから間もなくして、滝川は刺殺された遺体となって海で発見されるのだった。

2) これらの事件に関連性があると考え、北海道警釧路中央本部の新人刑事・大門真由(柴咲コウ)と先輩刑事の片桐周平(沢村一樹)は捜査を始める。そんな中、清掃員の兵藤千恵子(宮本信子)という女性が警察に「私が滝川さんを殺害しました」と、凶器となった包丁を持参し、出頭してきた。

3) だが、滝川を実際に殺害したのは、米澤水産の社長・米澤小百合(余貴美子)だった。千恵子は、小百合の姉であった。妹を守るため、千恵子は小百合の身代わりとなって出頭したのだった。彼女たち姉妹の母親は、キャサリンという名前のストリッパーであった。母親は、彼女たちが自分たちといては幸せになれないと考え、人買いである加藤に娘を売ったのだった。その後、加藤は、姉妹を別々の人物に売った。

4) 加藤は、小百合が釧路で有名な会社社長になったと知り、彼女の過去をもとに脅迫していた。キャサリンに恋心を抱いており、娘たちの面倒を見ていた滝川は、小百合のために加藤を殺害した。その後、滝川は小百合の前に姿を現すようになり、しつこくつきまととわれていると思った小百合は、滝川をとっさに包丁で刺してしまったのだった。

5) その現場に偶然居合わせた千恵子は、小百合を落ち着かせ、励ましながら滝川の遺体を海に捨てた。その後、妹のために罪をかぶり、自らを逮捕させようとしたのだったが、真由は捜査した結果を千恵子、小百合にそれぞれぶつけ、彼女たちに自供させるのだった。小百合は、娘の結婚式の後、逮捕される。移送される小百合の乗ったクルマを、千恵子は離れ離れとなった幼き日のように、遠ざかるクルマを追いかけるのだった。

詳細なあらすじ

滝川信夫(品川徹)は、猛吹雪の中、車内に加藤千吉(金子達)といた。滝川は、「もう、十分生きたろう」と言うと、眠ったままの千吉を車外へと放置して、立ち去る。

米澤小百合(余貴美子)は、米澤水産の社長として経営を行っていた。そんなある日、自分宛てに「あなたは、私の生きがい。私の人生を全て賭けてもいい」と書かれた滝川からの手紙を受け取る。そんな彼女に、清掃員の兵藤千恵子(宮本信子)は「何か困ったことがあったら、おっしゃってください」と言う。

千恵子は、スケート場にいた。そこで、過去を思い出し、思わず声を上げる。そんな彼女に、北海道警釧路中央本部の新人刑事・大門真由(柴咲コウ)は、「たまには叫ばなきゃやってられませんよ」と声をかける。真由は、千恵子に面識があった。

真由は、事情聴取の模擬試験を行うが、つい声を荒げてしまい、注意を受ける。警部補の片桐周平(沢村一樹)は、真由の教育係を行っていた。真由の父親は、大門史朗(塩見三省)という元刑事であり、愛人との間に真由をもうけ、母親は真由のことを置いて姿を消したのだった。そして、史朗は末期癌で余命いくばくもないのだという。

釧路の雪原で、除雪車を運転していた男性が、冷凍状態で発見された身元不明の男の遺体を発見・通報する。真由と片桐は、この事件を担当することになる。真由は、遺体の男性がよそ行きの格好をしていたため、「出て行ったきり、帰ってこない男性」を探すことにし、ホテルなどの宿泊施設を当たる。

「タナカヨシヒコ」という該当人物がいたが、住所・指名もデタラメだった。だが、指紋により、前科のある加藤千吉であると判明する。

検死結果により、体内からはアルコールと睡眠薬が検出された。真由は、「事件性があると思います」と言う。身元を隠したり、死亡した状況により彼女は考えるのだが、上司・秋野豊(嶋田久作)は「自殺の可能性もある」と言い、あまり真剣に捜査を行うつもりはないようだった。千吉の妻・朱美(根岸季衣)を呼び、確認させることとなった。

小百合は、娘が結婚することになり、さらには妊娠していると知り、驚きながらも喜ぶ。そんな彼女に、滝川からの電話がかかってくるが、小百合はすぐに切る。

真由は、千恵子とスケート場で再び話す。千恵子は、真由に「冬のお友達ですね」と言われ、微笑む。そして、千恵子は「ウマが合うのかしら」と言う。

朱美が、千吉の遺体を確認し、泣き叫ぶ。一方、秋野は、加藤の前科について片桐に話す。千吉の罪は、30年前の管理売春だった。さらに、当時の捜査資料には、史郎の署名があった。秋野は、「大門さんが、好きになってはいけない人を、好きになってヘタを打った頃だ」と言う。

千吉が釧路にいた時、朱美は「店(スナック)に出ていた」と言い、犯行を否定する。さらに、「カネの当てでもあったのか、『温泉にでも行こう』と言っていた」と話す。

史朗は、千吉が人身売買の仲介をしていたのだと真由に明かす。さらに、「本当の貧しさは、恐怖だ。その恐怖を味わった者は、刻印のようにいつもその恐怖が付きまとう」と言う。

滝川が小百合の前に現れる。「あなたが、こんなに立派になって嬉しい」と声をかける滝川に、小百合は「もう、来ないで」と言って立ち去る。

寒々とした海で、遺体が発見される。殺人事件と判断され、真由と片桐はこの事件もまた、捜査を担当することになる。レンタカーの書類により、被害者は元タクシー運転手の滝川と判明する。

遺留品として、座席の下に、作用の強い鎮痛剤のシートが発見される。米澤水産のビルから、事件現場を見ていた人物がおり、真由たちは小百合に話を聞きに行く。真由は、千吉の写真を見せるが、小百合は「知りません」と言う。真由は、米澤水産で千恵子が働いていることを知り、驚く。

真由と片桐は、滝川の住んでいた部屋を訪れる。部屋には大量の蔵書があり、机の上にあった北原白秋の詩集『白金之独楽』に目をとめる。そこには、栞代わりの領収書が挟まれており、「二人デ居タレドマダ淋シ 一人ニナッタラホ淋シ、シンジツ二人ハ遣瀬無シ シンジツ一人ハ堪ヘガタシ」という詩がそのページには書かれていた。また、「キャサリン様へ」と書かれていた。

滝川は、睡眠薬と鎮痛剤が処方されており、真由は「父と同じ病気かもしれません」と片桐に言う。さらに、本に挟まった領収書を出した古書店を真由は訪れる。そこで、詩集は若いころ滝川が購入したもので、「好きな相手に贈ったものが、巡り巡って滝川さんの手に戻ったもの」だという。

「キャサリン」という人物に贈ったと考えられたが、店主は「それが誰とまでは分かりません」と言う。さらに、店主は「家の本を引き取って欲しいと言われた」と言う。

滝川は、末期の肝臓癌であった。「無治療ならば余命半年」と主治医に言われていた。だが、治療はせず、「年寄りには屈託というものがあるんですよ」と言っていたのだという。

真由は、滝川の勤務していたタクシー会社を訪れ、履歴書を手に入れる。弘前大学理工学部中退、八戸興行に入社していたことが明らかになる。

史朗は、捜査対象者の女性を更生させようとしてのめり込み、その女性と関係を持って真由が生まれたのだった。

真由は、朱美の営むスナックを訪れる。そこで、滝川と千吉が知り合いであり、スナックにも2人でやってきていたことが明らかになる。そして、そこで口論にもなっていたのだという。

小百合は、千恵子の家を訪れる。そこで、小百合は「お願いがあって参りました。黙っていて欲しいんです」と頼む。千恵子は、「あの夜のことですか」と言う。

千恵子は、会社の電気を消し忘れて戻ったのだった。そこで、小百合が千吉を刺殺したのを目撃したのだった。千恵子は、「しっかりして。娘が結婚するんでしょ。会社、守るんでしょ!」と言う。小百合は、動揺する千恵子を叱咤しながら、遺体を海に捨てたのだった。

千恵子は、「どうしてあんなことに…」と言う。小百合は、別の男にゆすられており、滝川に相談した。結果、滝川はゆすっていた男を殺害した後、つきまとうようになったのだという。

千恵子は、「私、もう長いこと一人暮らしなんで、おしゃべりする相手もいないんですよ」と言う。「若いころ、ずっと水商売してたんです。人にも言えないような仕事をしていました」と言う千恵子に、小百合は「私もです」と打ち明ける。

さらに小百合は、「私は、社長の息子と結婚したんですけど、博打好きで大変でした」と言い、「お互い、苦労したんですね」と言う千恵子は、「お金を融通してもらえませんか?1千万」と言う。

真由は、史朗に北原白秋の詩集を見せる。史朗は、「悔やんでいる。長くて、深い後悔…二人デ居タレドマダ淋シ 一人ニナッタラホ淋シ、シンジツ二人ハ遣瀬無シ シンジツ一人ハ堪ヘガタシ…悲しい詩だが、本当の詩だな」と言う。

片桐は、滝川の録画していたビデオテープを見続けていた。旅番組ばかりが録画されていたのだという。そのテープの中に、米澤水産が特集されていた番組が録画されているのを発見する。そこに、社長として小百合が登場していた。

小百合は、1千万円を持って千恵子の家を訪れる。呼びかけるが、部屋に千恵子はいなかった。一方、真由は課長に「米澤小百合に任意同行をかけたい」と言う。

そんな中、千恵子が凶器となる包丁を持参して出頭してくる。彼女は、「滝川信夫を殺しました。逮捕してください」と言う。

片桐は、千恵子を事情聴取する。千恵子は、「札幌にいた時、お付き合いしていました」と言う。そして、彼女は「復縁を迫ってきたんです。怖くなって、その場にあった包丁で刺しました。遺体は、シートに包んで岸壁から捨てました」と話す。

さらに、「滝川さんが送ってきた手紙です」と言い、小百合に送った手紙を渡す。そこには、滝川が千吉殺害を仄めかす内容が書かれていた。

千恵子は、「早く逮捕して、裁判を受けさせてください」と言う。だが、そんな彼女に真由は「ウソ。あなたは殺害していない」と否定する。その指摘に、千恵子は「黙秘します」と言う。そのことに秋野課長は激怒し、「ああいう女は、一度黙秘すると口をこじ開けるのは大変なんだ!」と叱責する。

真由は帰宅すると、北原白秋の詩集を読み、「二人デ居タレドマダ淋シ 一人ニナッタラホ淋シ、シンジツ二人ハ遣瀬無シ シンジツ一人ハ堪ヘガタシ」という一節を再び読む。
真由は、「兵頭千恵子は米澤小百合の身代わりです。手紙の文面には、千恵子の名前は一切ありません。宛先の書かれた封筒もないんです。…このまま送検したら、一生後悔します」と言い、捜査続行を申し出る。

真由は、片桐とともに滝川の故郷である八戸へと向かう。本八戸警察で、「滝川さんの記録、何もありませんでした」と言われる。滝川の勤務していたのは、ストリップ小屋であると判明する。

当時の関係者に話を聞きに行くと、滝川はキップ切りをしていたのだという。そこで真由は、本に書かれた「キャサリン」という名前を思い出し、「キャサリンという踊り子、いませんでしたか?」と言う。

キャサリンの元同僚は、スナック「愛」のママをしているのだという。真由たちは、愛(緑魔子)のもとを訪れ、キャサリン(内田慈)や滝川のことを訊く。愛は、「滝ちゃん、キャサリン姉さんのことを好きで。よく姉さんの2人の子供の世話をしていた」と話す。

娘たちは、それぞれ他の家に引き取られていったのだという。その姉妹こそが、千恵子と小百合だった。

キャサリンの本名は、行方(なめかた)佐知子という。既に老人ホームで死去しているのだという。戸籍謄本で、真由たちはキャサリンの子供たちが千恵子、小百合であると知る。
真由は、「片桐さん、お願いがあります。兵頭千恵子の取り調べ、やらせてください」と願い出る。

小百合は、結婚式で娘の晴れ姿を見ていた。一方、千恵子は真由の取り調べを行う。「滝川は、キャサリンという踊り子を好きになりました。そして、彼女たちの娘の面倒を見ていました。ですが、キャサリンは娘をある男に預けました。加藤千吉です。加藤は、人買いです」と言う。

滝川は、好きな人と一緒になれず、娘を守ることができなかった後悔から、生涯独身で過ごしていた。そんな中、タクシーで乗せた客が加藤千吉であることに気づく。加藤は、預かった娘の1人が、有名な会社の社長になっていたことを気づき、釧路を訪れたのだった。

千恵子もまた、ずっと探していた妹が釧路にいることに気づき、近くにいるため、米澤水産で働くことを望んだのだった。

千吉は、小百合と千恵子をそれぞれ別の人物に売った。小百合は、千恵子に「あの子は、必死になって働き続けてきたんです。薄い氷の上を、必死になって渡ってきたんです。最後は、幸せになってもいいでしょ。私が罪を償うって言ってるんだからいいでしょ!」と泣く千恵子を見て、秋野課長は小百合を逮捕するよう片桐に命じる。

結婚披露宴が終わり、そこに片桐たちがやってくる。「米澤小百合さんですね。署までご同行願えますか」と言う。

真由は、小百合もまた取り調べを行う。真由は、「千恵子さん、自分が罪を償うと言っています」と言う。だが、まだ小百合は、千恵子が姉であると気づいていなかった。真由は「兵頭千恵子さんは、小百合さんのお姉さんです」と明かす。

小百合は逮捕される。移送される中、小百合と千恵子は遠くで顔を合わせ、小百合は「ちーねぇちゃん!」と子供のように叫ぶ。千恵子は、離れ離れとなった幼き日のように、遠ざかるクルマを追いかけるのだった。

「また、守れなかった…」と千恵子はつぶやく。「どうして、姉だと名乗らなかったんですか?」と訊ねる真由に、千恵子は「昔のことなんか、全部忘れてもらいたかったの」と言う。

千恵子は、真由に「楽しかったわね、スケート」と話しかける。すると真由は、「待ってますから、ずっと」と言う。

真由は、史朗の入院している病院を訪れると、そこに片桐がいた。「ラーメンでもすすって帰るか?」と言う片桐に、「今度、お願いします」と、真由はいつものようには断らなかった。

史朗は、片桐が「彼女、良い刑事になる」と言っていたと明かす。「苦労かけたな。すまなかった」と謝る史朗に、真由は「謝らないで。…心配しないで」と言う。その1ヶ月後、史朗は亡くなるのだった。

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