「トイレの落書」前半部分(ネタバレなし)
地下鉄の駅で、押本(木村拓哉)はトイレを探し求めてさまよっていた。ギリギリの状態の中、押本は飛び込んでなんとか事なきを得る。
ふと壁を見ると、さまざまな落書きがされており、その一つに「午前0時、扉は閉ざされる」と書かれていた。大きな音がして驚くと、ちょうど0時になろうとしていた。
終電が0時6分だと気づき、押本はトイレから出ようとするのだが、開かない。下りの最終列車がホームから出るアナウンスが鳴り響く中、押本はトイレから出ることができなかった。
押本は、中に人が入っているであろう個室をノックし、「入口の扉が開かないんですけど…」と声をかけるが、返答はない。上から覗いてみるが、中には誰もいなかった。
押本はトイレで夜を明かすことになるのではと怒りを覚えるが、ふと壁に「財布落としてますよ」と書かれており、本当に床に落としてしまっていたことに気づく。押本は再び「午前0時、扉は閉ざされる」の文字を目にする。
トイレがいかにも古めかしいものでリアルです。だからこそ、落書きが不気味で恐怖心を煽られます。トイレから出られなくなった押本の運命は…
「トイレの落書」後半部分(ネタバレあり、結末まで)
押本は、「水玉のネクタイをした男は、四角い部屋で首を吊る」という不気味な落書きを見かける。彼はちょうど水玉のネクタイをしていて不気味さを感じる。
また、「溺れて苦しめ」「死ぬ」「夜明け前、決まってジャックは殺りにくる」などの物騒な落書きがトイレ内には書かれていた。また、壁に書かれていた文字を鏡で見ると、「259」と書かれており、「259…じごく、地獄か…」と、落書きはさらに恐怖心を煽ってくる。
携帯電話も「圏外」で通話はできず、さらに壁には「お前の声は誰にも聞こえない」と書かれていた。
押本は、火災報知器を見かけ、火のついたタバコを近づけてみる。だが、「トイレに閉じ込められていた」と証言するのが恥ずかしくなってしまってやめる。
不意に排水溝が詰まり、汚水が溢れ出す。「溺れて苦しめ」という文字通りになってしまうことを恐れ、押本は排水溝にモップの柄を突っ込む。
押本は苛立ち、「俺は建築デザイナーになるんだ。一人前になったら、すぐにお前みたいなトイレ、改築してやるからな!」と毒づく。すると、急にトイレは薄暗くなり、「この壁に殺された女の死体が埋められている」と書かれた壁のポスターが剥がれ始める。
恐怖心が高まり、押本は扉を必死に叩く。その後、押本は再び火災報知器を作動させ、トイレ内でスプリンクラーが回り始める。逃げ場を求めた押本は、トイレの個室の上の天板を外すのだが、ネクタイが絡まってしまい、首が絞まってしまう。壁の「水玉のネクタイをした男は、四角い部屋で首を吊る」という文字が再び目に入る。
トイレの外から足音が聞こえ、「夜明け前、決まってジャックは殺りにくる」という壁の落書きが再び目に入る。押本は、その落書きを必死になって消すと、足音は消えた。「そうか…」と押本は思い立ち、落書きを消していく。
そんな中、押本はモップにつまずいて倒れてしまい、そのまま意識を失う。朝になり、清掃員に起こされる。次に現れた駅員に押本は文句を言うが、扉を見て愕然とする。その扉は押し戸ではなく、引き戸であり、鍵などかけられてはいなかったのだった。思わず押本は笑いだしてしまう。
外に出ると、すでに明るくなっていた。タクシー乗り場で待っていると、割り込みをしてくる男性がいて、押本は注意をする。だが、そこにきていたタクシーのランプに書かれた文字が「259」であり、押本は一瞬、躊躇するが乗り込む。
だが、押本は気になってすぐにタクシーを降りる。その直後、別の客が急ぎながら乗り込む。押本はバカバカしいとは思いながらも、大きな音がして振り返る。駆け寄ると、工事現場で降りたタクシーに鉄柱が突き刺さり、乗っていた客は即死していた。
地面には、「259」のタクシーのランプが落ちていた。
ストーリーに緩急があって、グイグイ引っ張られるようにして見てしまう作品になっています。オチや伏線回収もとても綺麗に決まっており、人気作品である理由が分かりますね。
「トイレの落書」制作情報
・脚本:鈴木勝秀
・演出:落合正幸