石川寅男(布施明)は、町工場を経営していたが、経営難で資金繰りに苦しんでいた。支払いを待ってもらうように頼み込んでも、聞き入れてはもらえなかった。そこで彼は、最終手段として「猿の手様」に頼ろうとする。
「猿の手様」は、父親から譲り受けたものであり、「3つだけ願いを叶えてくれる」というものだった。志津(清水ミチコ)はその話を疑っていたが、寅男は「すでに2つ使ったんだ。大学進学と、工場を開くために」と言う。
寅男は三流大学を出て、経営難の小さな町工場を開いており、志津は「どうせなら、もっと良い大学を出て、儲かる会社を作ればよかったのに」と指摘する。寅男は「猿の手様に願い事を叶えてもらった後、災いが起きるんだ。だから、大それた願い事をしなかったんだ」と言うのだった。
だが、追い詰められた寅男は、仕方なく猿の手様に頼る。翌朝、寅男が考案した「全自動孫の手」がアイデア商品の大賞を受賞し、一気に注文が舞い込む。その大ヒットぶりに、寅男は「どんな災いが起きるのか」と戦々恐々とする。
寅男は、なかなか自分に災いが降りかかってこないことで、「家族に災いが降りかかるのでは」と思い、志津と息子を実家に帰らせる。さらには、「寅男のおかげで、腰が治った」「寅男のおかげで、恋人ができた」などと親戚から感謝されてしまい、どんな災いが降りかかってくるのか、と寅男は恐ろしくなる。
クルマに轢かれそうになるも、寅男は無事であり、「どうして死なない程度に轢いてくれなかったんだ!」などと運転手に詰め寄る。そんなことがあるも、何事もなく1ヶ月が過ぎた。そこで、寅男は「こうして精神的に苦しみ続けるのも災いなのでは?」と思い、「俺は十分に苦しんだ。これで災いは終わりなんだ」と思う。
ところが、三輪車に乗った子供を避けようとして、寅男は土手を転がり落ちる。結果、両手両足を骨折して入院することになったのだった。寅男は、そんな不幸に見舞われながらも、「これだけで済んでよかった」などと笑い、そんな夫を見て志津は呆れる。
そんな中、志津は寅男の主治医に呼ばれる。胸部レントゲンを見せて主治医は「旦那さんは、もってあと3ヶ月」と宣告する。寅男は、本人の知らぬ間に重病に侵されていたのだった。それを知らない寅男は、息子に「お父さん、治ったらバリバリ働くぞ!」などと言うのだった。
1990年6月28日放送 脚本:土屋斗紀雄