山下澄人「率直に言って覚えていないのだ、あの晩、実際に自殺をしたのかどうか」あらすじ・ネタバレ

背景

著者の山下澄人は、劇団FICTIONを主宰する劇作家・俳優でもある。倉本聰の「富良野塾」第二期生として入塾している。

小説『しんせかい』の主人公・山下スミト同様、誤って配達された新聞の募集記事を見て「富良野塾」に入塾することとなる。

本作では、入塾試験を受けに、地元から上京して新宿へとやってきた、主人公の試験日前夜のことが書かれている。

簡単なあらすじ

1) 主人公は、演劇を学ぶために地元から離れて新宿へと入塾試験を受けにやってくる。夕方には着いたのだが、方向音痴な上に土地勘もないため、宿に着いたのは夜だった。

2) 部屋にいたところ、歌舞伎町に行ってみたいと思う。フロントで地図を描いてもらい、主人公はホテルを出る。だが、迷ってしまい、不意に「死にたい」と思う。そんな彼に、ホームレスの男が声をかけ、「俺は今から、死のうと思うんだ」と、練炭自殺をしようとしていると明かす。

3) ダンボールとブルーシートでできている小屋で、ホームレスの男はアライグマの仔を飼っていた。一度はアライグマを隣のホームレスに預けたが、やはり返してもらい、小屋に連れ帰る。そこで記憶は混濁し、主人公は気づくとホテルのフロントにいた。

4) 主人公は翌朝、フロントで入塾試験会場である新橋までの地図を描いてもらう。昨晩訪れた、ホームレスのいた公園にしばらくいたが、ホームレスの男は現れなかった。主人公は試験を受けに行き、受かったので、今までしていた倉庫の仕事を辞めるのだった。

詳細なあらすじ

主人公は、演劇を学ぶために地元から離れて新宿へと降り立った。土地勘もなく、方向音痴な彼は、近くの宿に泊まった後、新橋にある試験会場に翌朝、向かうことになっていた。

新宿のホテルに泊まっていたところ、窓から見える歌舞伎町に惹かれ、彼は繁華街へと足を踏み入れようと考える。

だが、ホテルのフロントで地図を描いてもらっても迷って街へと行くことができなかった彼は突然、「ああ、死にたい」と思う。

座り込んでタバコを吸っていると、「俺にも一本くんねぇか?」と、見るからにホームレス風の男が声をかけてきた。タバコを一本渡すと、男は「俺、これから死のうと思うんだよね」と言う。練炭自殺を行うと言うのだった。

男は、公園にある、ダンボールとブルーシートでできた小屋に住んでおり、そこで練炭を焚くのだという。主人公は、一緒にその中にいた。それは、一緒に死ぬということを意味していた。

ホームレスの男は、アライグマの仔と一緒に住んでいた。そのアライグマは、隣の男に預けたのだという。主人公は、「預ける、という言葉はおかしい。預ける、は返してもらう、とセットだ」と言う。

主人公は、アライグマを返してもらいに行き、再び練炭を焚くダンボールの小屋に戻る。そこで、ホームレスの男から詳細に描かれた地図を受け取る。それさえあれば、迷うことはなさそうだった。

そこから記憶は飛んでホテルのフロントに主人公はいた。そこで、詳しい地図を描いてもらい、それがあれば迷うことはなさそうであった。

数時間前、主人公は公園でアライグマを飼う男と練炭自殺をしたのだと思っていた。だが、記憶は混濁してよく覚えていなかった。

翌日、早朝になって主人公はホームレスの男が住んでいたはずの公園に向かう。ベンチに腰を下ろし、ホームレスの男を待ったが、現れなかった。そして、ホームレスの男が描いてくれたはずの地図を持っていないことに気づく。

その後、主人公は喫茶店に寄った後、新橋に入塾試験を受けに行く。彼は倉庫で仕事をしていたが、入塾試験に受かったため、その仕事を辞めるのだった。



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