簡単なあらすじ
1) 早乙女真紀(松たか子)の本当の名前は、「彰子」であった。14年前、借金を抱える女性・早乙女真紀から戸籍を300万円で購入し、なりすましていたのだった。
2) 真紀は、母を亡くした後、養父に日常的に暴力を振るわれていた。何度となく家出したが、養父は真紀の母親の事故死に対する賠償金を手に入れるため、連れ戻した。その末、真紀は戸籍を買って失踪し、それと同時期、養父は心不全で死亡していた。
3) 富山県警の大菅(大倉孝二)刑事は、養父の死に、真紀が関わっているのではないか、と睨んでいた。そのため、真紀に任意同行を求める。そのため、カルテットの3人は真紀の過去を知ることになったのだった。
4) 真紀は、レストラン「ノクターン」でいつものように演奏を行う。その後、真紀は3人に別れを告げ、すずめにヴァイオリンを託す。大菅刑事たちとともに、クルマに乗った真紀は、「ラジオを消してください…思い出したい音楽がいっぱいあるんです」と言う。
詳細なあらすじ
世吹すずめ(満島ひかり)は、「ニモを飼いたい」と言い出す。そこで家森諭高(高橋一生)は、「ホッチキスは商品名、一般名はステープラー。バンドエイドは商品名、一般名は絆創膏。ニモは商品名で、カクレクマノミが正解」と、いつもの家森節をぶつ。
一方、富山県警の大菅(大倉孝二)刑事から、早乙女真紀(松たか子)は全くの別人で、真紀は本当の名前を「彰子」というのだと鏡子(もたいまさこ)に告げる。真紀は14年前、借金を抱える女性から戸籍を300万円で購入し、なりすましていたのだった。
真紀は、演歌歌手の母親がいた。その母親は、真紀が鼻歌でよく歌う「上り坂、下り坂、人生はまさか」という曲でデビューしていた。そして、すでに母親は事故で他界しており、その後、真紀は母親の元再婚相手に引き取られた。そこで真紀は、日常的に暴力を受けていたのだという。
真紀はたびたび家出をしていたが、そのたびに連れ戻された。真紀の母親が亡くなった際、賠償金の受け取り人は真紀になっていた。そのため、その賠償金を手にするため、養父は真紀を引き取ったのだった。戸籍を手に入れて上京した際、養父は心不全で亡くなっていた。
その死に真紀が関与しているのではないか、と大菅刑事たちは睨んでいた。そのことを知り、幹生(宮藤官九郎)はショックを受ける。
大菅刑事は、幹生に真紀の生い立ちについて話す。真紀の母親を事故死させてしまった中学生の家は、賠償金を払うために家を失い、家族も離散した。それにも関わらず真紀の養父は賠償金を請求し続けた。幹生は、「真紀ちゃんは、賠償金をもう請求させないため、戸籍を買って失踪したんじゃないか。真紀ちゃんは、そういう女性だ」と言う。
すずめは、真紀に「ずっと東京ですよね?私達、子供の頃地下鉄とかで会ってたかもしれないですね」と言う。だが、真紀は富山出身であり、子供の頃に会っていたはずはなかった。だが、真紀は「そんなこともあったかもね」と話を合わせる。
来杉有朱(吉岡里帆)は、投資の失敗の穴埋めのため、谷村大二郎(富澤たけし)に色仕掛けで迫る。だが、大二郎は「そういうのやめてくれない?俺、奥さんのこと愛してるし」と言って断る。その様子を見ていた多可美(八木亜希子)は、有朱を即刻解雇する。
一方、別府の別荘が売り出されるということが、カルテットの3人に伝わる。そこで、別府は実家に戻り、弟たちを説得しに行くと宣言する。ところが、別府は別荘売却を覆すことはできなかった。
大菅刑事は、別府の別荘を訪れる。そこで、真紀に「あなた、早乙女真紀さんじゃないですよね?」と言う。そして、真紀に任意同行を求めるのだった。翌日、真紀は出頭することを約束する。その晩、すずめたち3人に、「私、ウソをついていたの」と言う。
そこで、真紀は戸籍を買い、なりすましていたことを明かす。辛い告白を続けようとする真紀を、すずめは止める。そして、「私たちが好きになった真紀さんは、真紀さんだから…私たちに信じて欲しいの?信じてほしくないの?」と訊ねる。真紀は、「信じて欲しい!」と即答し、すずめは真紀を抱きしめる。
その晩、4人は最後の楽しい夜を過ごす。そこで家森は、「人生をやり直せるスイッチがあっても、押さない。みんなに会えたから」と言う。
翌日、カルテットの4人は、レストラン「ノクターン」で演奏を行う。いつもの通り演奏を行っていると、そこに大菅刑事たちが店にやってきた。演奏後、真紀は3人に「私も、人生をやり直せるスイッチがあっても、押さない。みんなに会えたから」と言う。そして、自身のヴァイオリンをすずめに預けるのだった。
大菅刑事たちとともに、クルマに乗った真紀は、「ラジオを消してください…思い出したい音楽がいっぱいあるんです」と言う。目を閉じた真紀の脳裏には、チェロを背負った小さな女の子が改札を通る姿が浮かんでいた。