簡単なあらすじ
1) 「遺体を捨てると消える」という言い伝えのある「鬼隠しの井戸」のある屋敷で、笹部恭介という男が撲殺される。遺体は井戸の横で発見され、周囲にはおびただしい数の足跡が存在していた。凶器は井戸の蓋のかんぬきであり、頭蓋骨が陥没するほど5回も殴られていた。
2) 現場の第一発見者となった女探偵・高徳愛香(武井咲)は、突然現れた貴族探偵(相葉雅紀)と推理合戦を行うことになる。容疑者は多田朱美、横井太志、畦野智一郎、妙見千明、玉村依子の5人であり、証言を聞く内に、「朝の4時8分に10分ほど停電があった」ことが明らかになり、さらに現場では、天井のはりに、犯人がつけたと思しき、かんぬきが当たってできた傷が発見される。
3) 愛香は、天井のはりまでの距離、そしてかんぬきの全長(90 cm)から、女性たちには犯行は不可能と考える。さらに、井戸の内部には、依子のコートのボタンが故意に入れられていたことから、「コートのボタンを奪うことができた、貴族探偵。そして使用人たちによる犯行」と推理する。
4) だが、貴族探偵の使用人・山本(松重豊)は、「コートのボタンは、被害者である笹部本人も奪うことができた」と指摘する。そして、笹部は恋人を奪われたことを逆恨みし、畦野を井戸に落として殺害しようとして、逆に返り討ちにあったと推理するのだった。そして、依子に疑いの目を向けようとボタンを井戸に落としておいたのだった。
5) 畦野は、もみ合っている内に井戸の内部にメガネを落としてしまった。それを拾い上げたかったのだが、その時に停電が起きてしまう。壁に沿って歩き、出口まで辿りついたが、その際に足跡がついてしまった。その足跡をカモフラージュするため、現場に大量の足跡を残したのだった。
6) さらに、メガネを拾い上げるため、フライフィッシングの釣り竿を使用した。リールを巻く音を、依子は聞いていた。メガネにはレンズにヒビが入っており、畦野はコンタクトレンズを入れていたのだった。畦野は逃亡を図るが、鼻形雷雨(生瀬勝久)警部補に逮捕されるのだった。
詳細なあらすじ
高徳愛香(武井咲)は、喜多見切子(井川遥)の探偵事務所に勤めていた。愛香は、重要なクライエントである玉村家のため、令嬢・依子(木南晴夏)の別荘、通称「ガスコン荘」で開催されているパーティーに出席する。
だが、ポルチーニの空輸スケジュールが1日早まったとのことで、前日に依子たちはパーティーを開いていたのだという。依子は、地下にある「鬼隠しの井戸」を見せる。その井戸に遺体を捨てると、消えるのだという。
井戸に至る廊下には、足跡と血痕がついていた。井戸の周囲には多くの足跡が残されており、井戸の横には、頭部から血を流して横たわる遺体があった。依子はその人物が「笹部恭介」であると言う。
警察が呼ばれ、警部補の鼻形雷雨(生瀬勝久)が部下・常見(岡山天音)とともに現れる。笹部は、井戸の蓋のかんぬきで頭部を5回も殴られていた。
別荘の出入り口は、全て内側から鍵が掛けられており、千明が確認したという。そのため、鼻形は「内部の人間の犯行」であると指摘する。容疑者として、多田朱美、横井太志、畦野智一郎、妙見千明、依子がいた。
愛香は、「笹部さんが亡くなった死亡推定時刻は、朝4時から6時。私はその時刻、ここから100 km離れた有楽町にいました」とアリバイを主張する。だが、鼻形は死後硬直から死亡推定時刻を言い当てた愛香のことを怪しく思う。
そんな中、執事の山本(松重豊)が「我が主が、皆様にお会いしたいとおっしゃっています」と言い、貴族探偵・御前様(相葉雅紀)に紹介する。貴族探偵は、「私が事件を解決する」と言う。
鼻形は反発するが、貴族探偵が本部長を動かし、鼻形は捜査協力を仰ぐことになる。愛香は、「あなたは何者ですか?」と訊ね、「貴族探偵です」と言われる。探偵と聞いて、愛香は「私も探偵です。この事件の捜査を行っています」と言う。貴族探偵は、「面白いことになった」と、事件解決の競争を楽しむ。
愛香は、現場検証を行い、犯人が凶器を振り上げた際の傷を発見する。また、井戸の中に犯人の遺留品と思しき物を発見する。
貴族探偵は、ガレージ内を見て、そこに釣具の数々を発見する。依子は、「お父様のもの」と明かす。貴族探偵が、そのロッドを持って「フライフィッシングをしに行く」と言い出し、愛香は呆れる。
昨晩、笹部は「一人だけテンションが低かった」のだという。12時には自分に割当られた部屋に寝に帰ったのだという。男子3人は横並びの2階客室、依子は自室、千明と朱美は1階の客室で寝ていたのだという。アリバイを調べると、誰もその時刻にアリバイがなかった。
さらに、千明は笹井と付き合っていた。だが、千明は現在、畦野と交際していた。横井・朱美・笹井は一緒に会社を経営していたが、経営方針を巡って対立していたのだという。結果、横井は笹井と揉めて右腕を骨折していた。
屋敷周辺では、4時8分に10分ほどの停電が起きていたという。また、依子は「井戸の方から朝7時にジリジリジリという音が聞こえた」と証言する。
愛香は、貴族探偵に「あなたは使用人たちに証拠を集めさせ、推理だけする安楽椅子探偵なんですね」と言う。貴族探偵は「ご想像におまかせします」と言う。さらに、愛香は貴族探偵が前日にも愛香の家を訪れていたことから、「今朝の4時から6時、どこにいましたか?」と訊ねる。
井戸の中には、依子のコートのボタンが落ちていた。鼻形は、「いつとれていたか、覚えてますか?」と訊ねる。犯人は、夜の7時から8時の間にコートのボタンを盗んだ可能性があった。
愛香は、こっそりと依子の部屋に入る。そこで、愛香は山本に声をかけられ、「犯人が分かりました」と言うのだった。
愛香は、貴族探偵に促され、全員の前で推理を披露する。事件現場のはりには、かんぬきを振り上げた際に傷がついていたことから、身長 165 cmである、とまず愛香は指摘する。さらに、犯人はボタンを奪った人物であり、愛香の部屋に夜7時から8時の間にボタンを奪う必要があった。誰も部屋に入っていなかったため、愛香は貴族探偵に「依子さんの部屋にあなたは訪れた」と言う。
愛香の部屋に、貴族探偵の紋章入りのタバコが落ちていたのだった。だが、依子は「貴族探偵さんたちのアリバイは保証するわ」と言う。
愛香は、「貴族探偵は、勝手口の鍵を開けただけ。直接手を下したのは使用人たちです。大量の足跡は、3人の足跡をカモフラージュするため」と推理する。さらに、愛香は「貴族探偵と名乗りながら、自作自演の事件を解決してきた。その秘境な手で、あなたは私の師匠を倒したんですね」と言う。
貴族探偵は、愛香の推理を否定する。貴族探偵に言われ、山本は推理を披露する。愛香は「あなたが推理しないの?」と呆れる。
山本は、「依子様のボタンを盗むことができるのは、もう一人いました。殺された笹部恭介様です」と言う。そして、事件の発端は笹部自身であると指摘する。
笹部は、殺害計画を立てていた。殺そうとしていた相手を、井戸の内部へと落として殺害しようとしたのだった。だが、反撃に遭って返り討ちにあった。
犯人は、井戸の内部に自分を特定されてしまう物を落としてしまった。それを拾おうとしたのだが、地下室で停電が起こってしまう。犯人は、壁伝いに一度、部屋へと戻る。停電から復旧した後、自分の足跡から、犯行時刻が推定されてしまうことを恐れた犯人は、あちらこちらに足跡を残して、カモフラージュしたのだった。
犯人は、フライフィッシング用の釣り竿で井戸に落とした物を拾った。「ジリジリジリ」という音は、リールを巻く音だったのだ。井戸に落ちたものは、メガネだった。畦野は、前日にメガネをしていたが、現在はメガネをしていなかった。井戸に落ちた際に、レンズが傷ついてしまっていたのだった。釣り竿を取り出すためには、ガレージの扉を上げる必要があるため、右腕を骨折している横井には不可能だった。
畦野は逃げようとするが、佐藤が捕らえる。鼻形は畦野に手錠をかける。正当防衛を主張する畦野だったが、貴族探偵は、「頭蓋骨が陥没するほど5回も殴打している。明確な殺意があった」と指摘する。
愛香は、貴族探偵に「私は許せないんです。あなたが推理しないのに、探偵と名乗って…私は、あなたを探偵と認めない」と言う。だが、貴族探偵は「探偵とはなんでしょう…ただ、事件を解決できない者は、探偵とは呼ばないですよね?”女探偵さん”」と言って去る。